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「バルバッティン」シリーズ【完結済み】

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バルバッティンとレイのもたらす、5編のシナリオと、バルバッティンとタトエの心温まる完結編を修めた、「バルバッティン」シリーズ
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#フリー台本

バルバッティン『靴下を買いに』編

1:1台本 レイ♀: バルバッティン♂: レイM: ちょっと留守をするつもりだった。 忘れ物したら取りに帰ればいい。 書き置きひとつ残して行かなかった。 だって、そんな義理もない。 死にはしないでしょ。 子供じゃあるまいし。 休みが重なったら見ようねって言ってた、エヴァのDVD。 4巻まで読んだデュマの長編小説。 お気に入りのジェラート・ピケのガウン。 大事にしていたもの全部、あの部屋に置いてきた。 だって、帰る場所はそこしかなかったんだもの。 帰れなくなるなんて、思

バルバッティン『転校生』編

1:1台本 役表 レイ♂: バルバッティン♀: レイM: ひどく疲れていた。 まばたきをすると、一瞬意識が遠のくほど、疲れていた。 まぶたの裏に、星が飛ぶ。 それでも働いているのは、結婚するため。 おれには、父母がいない。 かわいい、かわいいと手塩にかけて育ててくれたのは、 祖父母だった。 そんな恩人も、もうこの世にはいない。 「お嫁さん、もらうんだよ? この世につないでもらえるのは、家族だけだからね。」 そう言われて育ってきた。 それが正しいと信じて、生きてきた

バルバッティン『墓参り』編

0:2台本 レイ♀: バルバッティン♀: レイM: だれかのお手本になるような人間になりたい。 そう言ったのは、お兄ちゃんだった。 優等生だった、わたしのお兄ちゃん。 学校の成績は、いつも一番。 運動会では一等賞。 いつも目立っていて、光って見えた。 いつからだろう。 兄のまねをするようになったのは。 わたしは、宿題を黙々とこなし、 たくさんのお教室をかけもちして、 友達をどんどん蹴落とした。 ねえ、なにが違ったんだろう。 わたしとお兄ちゃん。 お兄ちゃんの周りに

バルバッティン『脱走』編

1:0:1台本 役表 レイ♂: バルバッティン不問: レイM: 犬が苦手だった。 犬も、おれが苦手だった。 動物に嫌われるたちだった。 幼少の頃、飼っていた愛犬ペケに噛まれて以来、 あらゆる動物に近づくのが、怖くなった。 そんなことか、くらいに思うかもしれないが、 最近、妻が犬の写真ばかり見せてくる。 飼いたいのだろうか。 たぶん、そうだ。 おれとの生活に、飽きてきているんだろう。 目新しい、同居人がほしいのだ。 それは、それで、仕方ないか。 だっておれはずっと

バルバッティン『破壊』編

0:1:1台本 レイ♀: バルバッティン不問: 春がくるのが、憂鬱だった。 矢継ぎ早に行事をこなしていく1月2月3月が、 たまらなく億劫だった。 4月になるのが、怖かった。 新しい年度、新しい季節、新しい人間関係。 そのすべてが我慢できないのだった。 変化していくもの。移ろいゆくもの。消えていくもの。 全部に、「置いてかないで」って言いたかった。 わたしを置いていかないで。 明け方、目が覚めると白々と空が明るいのも、 近所の公園が花々で色づき始めるのも、 コンビニの棚

タトエ、魂になっても【バルバッティン完結編】

タトエ:「お母さん、お母さん…?」 母:「うーん…。だあれ?」 タトエ:「例(レイ)だよ。レイ。…タトエだよ。」 母:「レイ…?…ああ、タトエ。おはよう。」 タトエ:「お母さん、起きてたの?まだ寝てるかと思ったよ。」 母:「…今日は、何月何日?何曜日?」 タトエ:「えっとね、今日は4月27日、火曜日だよ。」 母:「…昨日は、よく眠れた?」 タトエ:「うん。よく眠れた。お母さんは?」 母:「よく眠れた、よく眠れたよ。 …ねえ、タトエ、もう少し、ゆっくりしてもい