ピストル強盗
アメリカ同時多発テロの起きた翌年、私の家にも三人組の強盗がやって来ました。
夕方、蜂の箱作りを止めて仕事場から出たときに、小走りに三人の青年が固い表情をして私のそばに来ました。
私の家は蜂蜜を売るために道路沿いにあるので、その時は道順でも聞きにきたのかと思いましたが、強盗はすぐに左右から私の腰のバンドを掴んで逃げられないようにし「強盗だ、静かにしないと殺す…」と小さい声で言うと、私を母屋に連れ込みました。
つい数日前に「蜂蜜」と書いた大きな看板を家の前に立てたばかりだったので、強盗は売上金をねらって来たようでした。
三人とも覆面はしていなくて、二人がそれぞれ38口径の回転式拳銃を持っていました。
家には家内しかいなかったので、私たち夫婦を応接間に座らせて一人が見張り役をして、他の二人は家の中を探し始めました。
まず寝室の枕元の引き出しやタンスの中味をぶちまけて、金やドルや時計や装飾品を見つけだし、書斎からはカメラや双眼鏡、野鳥観察用のニコンの望遠鏡を見つけ出しました。
一人が引き出しから狩猟用の散弾の弾を見つけて、それを持って私のところまで来ると「猟銃はどこだ」と、私に向けたピストルの撃鉄を起こしました。
撃鉄というのは親指で起こしますが、強盗も慌てているので、指が滑ったら暴発することがあります。
それで私も青くなり、猟銃とライフルの隠し場所を教えました。
ベテランは落ち着いていますが、新米は麻薬を吸って気が立っているので、こちらも大人しくしていないと殴られます。
強盗は顔を見つめたり、私が家内と日本語で話したりすると怒るので、昔上級生に殴られた時を思い出しながら下を向いていました。
〜つづく〜
【今日の名言】
奪い合うときは足らず、譲り合うときは余る。
【もう一つ名言】
「母を愛する人で意地悪な人はいない」
ミュッセ
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