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【感想】日テレ土曜ドラマ『初恋の悪魔』第1話

2021年の『大豆田とわ子と三人の元夫』以来となる脚本家・坂元裕二の連ドラ。
ジャンル的には坂元作品にはあまりイメージの無い刑事ドラマ。

オープニングは鹿浜(林遣都)が自宅から向かいの家の部屋を監視している描写で幕開け。
TBSの名作ドラマ『ケイゾク』風の始まり方。

『ケイゾク』では真山(渡部篤郎)が妹を自殺に追い込んだ朝倉を監視していた。
コメディタッチで進みながら不穏な伏線が張られているドラマ全体の構成もどことなく似ているような?

(C) 日テレ

終盤には「継続捜査事件」の紙が貼られたダンボールも!というのは勝手に深読みしすぎかw

まぁ『ケイゾク』と似てるかどうかはさておき、本作のジャンルはミステリー。
これもまた坂元作品では珍しい。
だが、もちろん一筋縄ではいかない。
警察組織に所属はしているものの刑事課ではないため捜査権を持たない4人が鹿浜(林遣都)の自宅で勝手に捜査会議をする。
つまり刑事ドラマより探偵ドラマに近いテイスト。

ちなみに坂元裕二が交通課の刑事を主人公に据えるのは本作が初ではなく、2002年に日テレ土曜ドラマ(当時は21時台の枠)で放送された『リモート』が過去にある(ただしこちらはオリジナル脚本ではなく漫画原作)

そういえばこの作品の氷室(堂本光一)も引きこもりという設定だった。
同じクールにテレ朝で放送されていた実写版『逮捕しちゃうぞ』とお互いにパロディしていたのも懐かしいw

クライマックスでは4人が各々の推理を披露し、その論理的欠陥や不足を指摘し合って可能性を一つひとつ潰しながら真相に迫っていく。
ロジックの積み重ね。
まるでエラリー・クイーンの小説。
近年の国内ミステリー作家なら青崎有吾。

もちろん台詞量が膨大になる(しかもそれを演じるのが芸達者な4人なのでテンポも速い)対策で事件当時の現場にタイムスリップ的に飛んでいく演出も用意されていて面白かった。

ところで、本作では自分が上の文章で使った「推理」という言葉ではなく「考察」という表現が使われている。
ミステリー作品なら「推理」という表現が普通だ。
僕はここに坂元裕二が本作に込めたメッセージやテーマがあると見る。
それは近年の考察ブームへの挑戦状ではないだろうか?
『花束みたいな恋をした』も考察動画めちゃくちゃ多かった。

劇中ではネット上に残された画像や動画、関係者のわずかな証言を極端に解釈して頓珍漢な推理をしてしまう様子が描かれる。
あれはSNSを中心に過熱する考察ブームのメタファー?
それとも坂元脚本を散々考察して読み解こうとしてきた我々ファン?

先日ジャンプ+で発表された藤本タツキ先生の『フツーに聞いてくれ』にも通じるものが。

考察ブームに火をつけた『あなたの番です』『真犯人フラグ』と同じ日テレでそれをやる大胆不敵さ。
(もちろんこの僕の読み解きもまた本作によって無と化す代物である)

さらには自身も社会的イシューを取り込んだ(と少なくとも受け手は読み解いてきた)傑作を数多く書いておきながら小鳥(柄本佑)のことを鹿浜(林遣都)に「社会派くん」と揶揄させる始末w

とんだご乱心である。

しかも、それでいて今後ドラマ全話を通して描かれていくであろう謎や伏線を散りばめてあるのだから底意地が悪いw
考察できるもんならやってみろ的な?
事前に描いた絵に当てはめる方針で捜査する警察組織の描き方も問題提起しているように見えるしw(多少デフォルメしてるとはいえ)

何にせよドラマはまだ始まったばかりである。

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