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【感想】カンテレドラマ『アバランチ』第1話

今期より火9から月10に枠移動となったカンテレ制作ドラマ。
その第1弾となる作品が『アバランチ』
(個人的には「ドラマの月曜・バラエティの火曜」という編成方針については「ドラマは1日1本ぐらいの方が助かるんだけどなー」と思わないでもないのだが、まぁ本題ではないので置いておこう)

本作は監督・藤井道人&主演・綾野剛という映画『ヤクザと家族 The Family』のタッグ。

藤井監督といえば代表作はやはり日本アカデミー賞で最優秀作品賞に輝いた『新聞記者』になるだろうか?

個人的にはこの作品に関しては「訴えたい問題意識は分かるものの、これはこれで政治思想が極端に偏りすぎでは…?」という印象でちょっと全面支持とはいかないのだが(この辺りの微妙なニュアンスを140文字で表現するのが難しくて感想ツイートはしなかった)近年の藤井監督は社会派作品が続いている。

来月公開される『攻殻機動隊 SAC_2045』の新作映画も監督している。
発表された時は驚いたが、ポリティカルSFサスペンスなので意外に適任の人選なのかもしれない。

かと思えば意外にヒューマンドラマ路線というか温かみのある作品も撮っていたりする。

これらの作品を見てきた自分が思う藤井監督の特徴(作家性)は

1. 社会の暗部に光を当てるストーリー
2. 美しい映像(特に光と影の演出)

の2つ。
第1話を見た限り光と影の演出はまだ控えめのようだが、ストーリーも映像も藤井道人イズムがビシビシ漂っていた。

とはいえストーリー的にはともするとやや類型的なジャンル作品。
ビジランテ系とでも言おうか、何かしらの事情(多くの場合は権力者との癒着)によって法の裁きを逃れた犯罪者に対して司法とは別の形で主人公(たち)が鉄槌を下すというフォーマットである。
必殺シリーズや堺雅人が連ドラ初主演を務めた『ジョーカー 許されざる捜査官』など時代劇から現代劇までこの手の作品はとても多い。

「上級国民」という言葉が生まれるような時代だからこそ、こういった物語を求める声はますます大きいのかもしれない。
本作も漏れなくこの形式になっている。
政府を悪として描く形になるので『新聞記者』を連想した人も多いのではないだろうか?
さらに終盤の六車(板尾創路)の“演説”は『デイアンドナイト』の三宅(田中哲司)とも重なる。
ただ、それらも結局は権力側への批判的視点の範疇なわけで、ストーリーにおける斬新さは正直乏しいと思う。

しかし、本作の見どころはストーリーよりもルック。
事前に公開されていた予告編からも「映画のようなクオリティ」という声が多く上がっていた。
オープニングは空撮ショットからの敵のアジトへの突入アクション。
カットを細かく割ったスピード感のある編集と冷たい質感の撮影がたまらない。
もしかして…?と思って最後のスタッフロールを凝視したら撮影監督は藤井監督と何度もタッグを組んできた盟友・今村圭佑!
「今村圭佑が撮影監督やってる作品にハズレなし」とは誰が言ったか知らないが映画ファンの間で通説になっているとかいないとか。
とにかく映像が全方位的にキマっている。
夜の都市の撮り方が良いんだよね。
タバコの煙の撮り方は『ヤクザと家族』でも印象的だったなー

主要登場人物と事件概要をテンポよく紹介していく開始早々の編集も惚れ惚れするほど素晴らしい。
アクションの見せ方も上手かった。
第1話のハイライトは中盤の暴力団事務所突入シークエンス。
日本刀を振り回すヤクザに対してボールペンで戦う羽生(綾野剛)
実写映画版『るろうに剣心』の第1作の外印役で見せた短剣での接近戦を彷彿させる見事な身のこなし。

そしてこのボールペンvs.日本刀のバトルは「ペンは剣よりも強し」という主人公たちのスタンスに繋がってくる。
主人公たちは自ら制裁を下すのではなく、ネットでの生配信を通じて大衆にターゲットの行く末を委ねる。
ここは今までの同系統ジャンル作品とは異なる独自色かも。
まぁ個人的にあの色んな人が一斉に生配信を見ている描写は『箱庭のレミング』でのネット描写の経験が反映されているんかな?と思いつつ、あそこまで上手くいくのはやや牧歌的に見えてしまったのだけど。

ストーリーに多少の既視感があってもルックで魅せてくれるドラマ。
第1話は期待通りの満足感。
あとは藤井監督の特徴(だと自分は思っている)照明演出がもっと効いてくれれば言うことなし。

来週以降も楽しみ。

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