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【感想】カンテレ月10ドラマ『春になったら』第1話

脚本・福田靖

「映画は監督・テレビドラマは脚本家で観るかどうかを決める」というのは多くの人がそうかと思うが、本作のオリジナル脚本を手がけた福田靖といえば日本のドラマ史上最大のヒットメーカーの1人である。
『HERO』をはじめ木村拓哉の主演作を数多く書いてきたし、同じくフジテレビを代表するドラマ『ガリレオ』も書いている。

フジ月9のポップなエンタメ路線の一方でNHKでは『龍馬伝』や『まんぷく』

個人的な印象としては「手堅く面白い作品を書いてくる職人気質」の脚本家だと思っていて、坂元裕二や宮藤官九郎と違いクセは薄い作風だと思う。
三振や凡退は少なくて確実にヒットは打つ。
たまにホームランも打つ。
でも場外への特大ホームランは打てない。
そんな感じ。
(念のため書くが「確実にヒットは打つ」の時点で凄まじいことを成し遂げている)

なので本作の情報が出たタイミングでは「この手の題材ならそれこそ岡田惠和とかの方が向いてそうな気がするけどな🤔」というテンションだった。

助産院という生のモチーフと癌や余命という死のモチーフを対比的に使って物語を組み立てていくのは手堅い。
ただ、そうやって手堅く作るからには痛快エンタメとしては難しそうだなとも感じた。

ただ、演出スタッフと俳優を見た途端に興味津々モードへと心変わりw

監督・松本佳奈

第1話の監督は松本佳奈(発表されている情報を見ると全話やるわけではないようだ)

やはり記憶に新しいのは『きのう何食べた? season2』

ちなみに音楽プロデューサーの福島節と音楽の澤田かおりが『春になったら』にしれっと“続投”
監督と音楽が共通ということで作品の纏う空気もどこか似ている。
(そもそも脚本が扱っているテーマが老いや死といった似通ったものというのもあるけど)
ピアノの劇伴はもちろん、初詣〜自転車出勤シーンのBGM的挿入歌も良かったなぁ。

そしてやはり松本監督の演出が炸裂しているのは何といっても会話シーン。
俳優陣の呼吸や編集の工夫もあるのだろうけど、とにかく自然でテンポの良い会話。
日常を撮らせたら天下一品だ。
ドラマ全体の会話テンポが統制されているからこそ、カズマルくん(濱田岳)のスベり具合も際立つw

ただ、日常系ほのぼの会話だけでなく口論に近いシリアスな会話も撮れるのが松本監督の強み。
野木亜紀子の脚本を演出したWOWOWドラマ『フェンス』がその代表例。

てか、たった1年の間に野木亜紀子・安達奈緒子・福田靖の脚本を演出してるって凄いなw
第1話のクライマックスに当たる瞳(奈緒)と雅彦(木梨憲武)の治療についての衝突シーンも素晴らしかった。

映像面でいえば、やはりキッチンを挟んでの空間の使い方は『きのう何食べた?』に続き上手い。
これ以外にも写真を撮るシーンとか居間での会話シーンとか登場人物を前後に配置して画面に奥行きを生んでくれるのが嬉しい。

奥行きのある画面設計といえば、松本佳奈監督は道を使った構図(≒道を歩くシーン)が好きなのかな?と勝手に思っている。
今回も

  • 冒頭いきなりスカイツリーが向こうに見える川沿いの道

  • 瞳(奈緒)が助産院に出勤するシーンの鳥居に繋がる道

  • 雅彦(木梨憲武)が自転車出勤するシーンの川沿いの道

  • 草野夫婦(菊池亜希子&近藤公園)が食材を手に歩いて帰る商店街

  • 岸(深澤辰哉)と美奈子(見上愛)が2人で歩く道

  • 瞳(奈緒)と一馬(濱田岳)が歩く川沿いの道

『きのう何食べた?』でも商店街をはじめシロさん(西島秀俊)とケンジ(内野聖陽)が2人で歩くシーンが印象に残っていて、本作でもそういう構図が見れて嬉しかった。

俳優・木梨憲武

楽しみな一方で、失礼ながら若干の不安要素だったのが木梨憲武の演技。
僕は木梨憲武a.k.a.ノリさんというタレントは好きだが、何せ本人も言うようにドラマ主演は24年ぶりなのである。
しかもコメディ一辺倒ではなさそうなストーリーと来ればさすがに「演技は大丈夫なのか…?」と思ってしまっていた。

そこを見事に突破したのが

  1. 当て書き?と思えるほどしっくり来るキャラクター設計

  2. 敢えてノリさん感を活かした演出

自分の不安は冒頭の正月シーンで杞憂に終わった。
奈緒の芝居との相乗効果もあって違和感どころかむしろ良い味!

一部で話題の

瞳「そもそもお父さんにお笑いが分かるの?」

という台詞も「確かにとんねるずは25〜26歳の時点で既に黄金期の入り口にいたけど、木梨憲武ってそれこそ令和ロマンなんかと正反対で一切左脳でお笑いやってなさそうだよな」という妙な批評性と一抹の納得感w

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