見出し画像

【感想】Amazonドラマ『アップロード 〜デジタルなあの世へようこそ〜』シーズン2

2021年下半期から一気に流行語もといバズワードと化した感のある「メタバース」
何せ天下のFacebookが社名をMetaに変更してしまったぐらいだ。

では、もし死後もメタバースで生き続けられる未来が到来したら?

『アップロード 〜デジタルなあの世へようこそ〜』は2020年5月にAmazonオリジナルでシーズン1が配信されたドラマ。
配信開始から1週間でシーズン継続が決定。
2022/3/11(金)にシーズン2が配信された。

シーズン1は本当に素晴らしかった。
てか2020年のドラマの個人的ランキングのラインナップが随分と昔に感じるな…

本作の設定はとてもシンプル。
舞台は2033年の近未来。
死ぬ直前に「アップロード」と呼ばれる処置を施すと、記憶というか精神そのものがデジタル仮想空間(メタバース)に転送される。
そしてアバターを与えられ、死後もそのメタバースで生き続けられるのだ。
劇中のメタバースにはもちろん運営企業がいて、その社員がコンシェルジュ的に色々サポートしてくれる。
嗜好品の買い物も出来る。
現実世界ともコミュニケーションできる。
その他にも食事や排泄はどうなっているのか等の細かい設定があり、その辺りはシーズン1序盤で主人公へのオリエンテーションを通して視聴者にも説明される。

わーい!死後も快適なメタバースで生きられるなんて最高の未来だ!
だが、ここで1つの疑問が生じる。

このシステムはどうやって維持してるんだ?
即ち、この企業はどうやって儲けてるんだ?

何せ世界屈指の大企業であるMetaが本気で取り組むぐらい資金を要する事業なのだから。
本作はそこを「2033年にはその辺の課題はイノベーションが解決してくれました」とお茶を濁しはしない。
アップロードされた人に対して家族や知人などが保証人のような立ち位置で課金することで、メタバースの中で生活できるという仕組み。
そもそも「アップロード」を指示するのは死の直前なわけだから本人ではない。
本作の主人公の場合は恋人。
交通事故で亡くなった主人公を病院に駆けつけた恋人がアップロードさせている。
主人公も恋人もいわゆる富裕層なのでお金には困っておらず、最高クラスの快適なメタバースで暮らせるというのが物語の始まり。

めでたしめでたし…?
いやいや、これはとんでもなく風刺の効いたブラックユーモア。
このビジネスモデル(死後も誰かが自分のために課金してくれるからメタバースで生活できる)の意味するところは何か?
それは

死後も格差社会は続く

ディストピアすぎる\(^o^)/
(思わず懐かしい顔文字を使ってしまった)
そう、本作は一見すると近未来を舞台にしたコメディタッチの明るいSFなのだが、実は非常に鋭い社会批評性を帯びている。

たくさん課金してもらえる人はメタバースでも贅沢をして生きられるが、課金の少ない層は携帯電話のギガ容量よろしく毎月動ける量が決まっているという地獄。
(劇中では今月のギガを使い果たしてしまい来月まで固まったままの死後メタバース住人も登場しますw)
そもそも暮らせるエリアも課金次第。
ちなみに主人公はレイクビューと呼ばれる湖畔の優雅なホテルで暮らしている。
レイクビューを先に見せることで「このメタバースはまさに天国だなぁ」と視聴者に一旦思わせてから実情を明かしていく脚本がニクい。

無料でメタバースにアップロードしてもらえるサービスに朝から行列が出来ている描写には頭を抱えるしかない。
(貧困層が何とか死ぬ前にアップロードしてもらう権利を得ようとして早朝から並ばされているという痛烈すぎる描写…)

スタッフは被ってないけどNetflixの『ブラック・ミラー』はテイスト近いかなと思う。

シーズン3の第1話『ランク社会』は本作にも似た描写が出てくる。
それはメタバース内ではなく、運営企業のコンシェルジュスタッフ。
このコンシェルジュもモブキャラではなくてしっかり描かれるんだけど、結局死んだ富裕層の世話をすることで中間層や貧困層は生活できているというダークユーモア。

ただ、それだけなら「面白そうだけどずっとそんな風刺コメディを見続けるのも何かなぁ…」という人もいるだろう。
そこに本作は主人公の死の真相をめぐるミステリー要素を加えている。
前述の通り主人公の死の原因は交通事故。
だが、アップロードされた記憶は一部分が不自然に欠損していた。
さらにコンシェルジュのノラと協力して調べる内に交通事故にも不自然な点が…
この縦軸は真相に至るまでちょっとずつ小出しにされるためシーズン1全10話を見る持続力になっている。
各話30分なのでイッキ見必至。

シーズン2は新たに

  • 三角関係ラブストーリー

  • アップロードを含むテクノロジーに反対する“保守派”

といった点が主軸になっている。
個人的には前者は本作に恋愛要素を求めていたわけではなかったのでそこまで乗れなかったが、後者は興味深かった。
ここまで書いてきたように風刺コメディとしてアップロードはグロテスクな技術として描かれており、それに反対する保守派は最初は視聴者が肩入れしやすい存在。
しかし、徐々に保守派の中にある男尊女卑的な古い価値観やテロ思想が判明してくると「あれ?保守派も万々歳ってわけじゃないぞ…?」と振り幅を効かせてくる脚本が見事。
決してテクノロジー信仰にもテクノロジー拒絶にも振れない。
実にフェア。

さらに(シーズン1でも既に描かれていたけど)アップロードが可能ということは…その逆も…?なんて展開も。
まぁワクワクするSFではなく完全にディストピア地獄絵図として描かれてますがw

シーズン1は30分×全10話、シーズン2は30分×全7話なので見やすいです。
シーズン3も楽しみ。

この記事が参加している募集

#テレビドラマ感想文

21,558件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?