【感想】TBS日曜劇場『ラストマン ー全盲の捜査官ー』第1話
本作の製作が発表されたのは2月頃。
脚本はTBS日曜劇場の常連と呼んで差し支えないであろう黒岩勉。
演出は『カルテット』『罪の声』『花束みたいな恋をした』の土井裕泰。
直近では坂元裕二脚本で広瀬すず・杉咲花・清原果耶トリプル主演という凄まじい座組みの映画『片想い世界』も発表されたばかり。
今のTBSで塚原あゆ子監督とツートップを張る演出家だと個人的には思っている。
(金子文紀監督にも映画撮ってほしいなと思ってたり)
ただ、何となく日曜劇場ってことで黒岩勉の色が強くて土井監督は職人に徹するんじゃないかなという気がしていた。
そんなわけで期待値はそこまで高くない発表直後。
ところが、ふとTBS公式サイトを見たら地上波ドラマには珍しい表記と名前が。
ん?
山本英夫ってのは数々の邦画で撮影監督を務めてきたあの山本英夫ですかい?
ベネチア国際映画祭で金獅子賞を撮った北野武監督の『HANA-BI』とか、近年だと西谷弘監督の作品とか、深田晃司監督の『LOVE LIFE』とか、Netflixの『全裸監督』を撮ったあの山本英夫!?
地上波ドラマを撮ってるイメージは全く無い。
よく口説き落とせたな。
放送中の作品をDisney+やNetflixに積極的に配信しているTBSだからこそ「映像の質に力を入れないと海外の視聴者には見てすらもらえない」という結論に達したのだろうか?
というわけで俄然興味が湧く形に。
なので自分は本作にキャストや脚本以上に撮影・ショットといった画作りに注目・期待していた。
いざ始まった第1話。
しかし、感想ツイートにも書いた通り、いわゆる日曜劇場っぽい顔のアップの構図が多用されていて「うおお映画みたいだ!」というショットは少ないような?
雑誌『SWITCH』のインタビューによると、ある程度は意識的なものだった模様。
なので最初に観た時点ではちょっと期待外れか?とも思ったのだけど、改めてもう一度観たら評価が変わった。
確かに顔のアップは多い。
ただ、過去の日曜劇場と異なり暑苦しくないのである(決してふざけて言ってるわけではありませんw)
映像が落ち着いているというか。
それが冒頭の感想ツイートの最後に書いた「画面の色味」
インタビュー記事の中で「我が意を得たり」な内容が語られていた。
この辺りは大根仁監督も『エルピス』当時のインタビューで言及している。
「準じたもの」ということは『エルピス』ほどには最高峰の機材ではないのかな?
でも『ラストマン』もルックは地上波ドラマの水準は飛び越えてかなり良い。
画面の色調(トーン)は何パターンか用意して最終的には現場で監督と相談して決めているそう。
なるほど!
それを意識しながら観てみると、あれだけ中年男性のアップがたくさん出てくるのに画面全体から漂う温度は低め。
青系統の色を基調とした美術もこれに貢献している。
(ちなみに衣装はスーツの登場人物が多いから黒を基調としやすいが、それだけで画面のトーンが落ち着くわけではないことは歴代の日曜劇場の作品が証明済み)
映画的な引きの画という意味では皆実(福山雅治)と護道(大泉洋)の2人が歩く姿をかなり遠くから長回しで捉えたショットが印象的。
団地
並木道
こちらも意識的だったそう。
最初に観たときは「なんだかんだ日曜劇場っぽい顔のアップばかりだなー」と思ったのだけど、実は非常に細やかな工夫が施された映像美。
そしてスタッフロールでまたびっくり。
照明に小野晃!
山本英夫と数々の作品でタッグを組んできた人である。
ただ、こうなると西谷弘監督のフジ木10ドラマ『あなたがしてくれなくても』もこの座組みで見てみたかった気がしてきてしまうなぁ。
土井監督と西谷監督のドラマが同じクールに被るなんて。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?