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【感想】フジ木10ドラマ『あなたがしてくれなくても』第1話

夫婦間のセックスレスをテーマにした漫画原作ものであり、『昼顔』のスタッフが再集結という宣伝文句からも不倫ドラマ(ただ、原作においては不倫はあくまで物語上の要素の一つなのかな?)の雰囲気も漂う本作。

正直なところ自分は不倫ドラマにはそこまで興味が湧かないのだが、初回時点ではまだ不倫ドラマという感じでもなかった。
あくまで不倫の予感が漂う程度。
ただ、原作では夫の陽一のモノローグで男性目線のセックスレスの悩みも描かれているのに対して、第1話を観る限り今のところドラマ版の陽一(永山瑛太)はシンプルに割と酷いモラハラ夫に映ってしまってる気はするw
何をどう考えた末にああいう行動に移したのかが伝わりづらいというか。
あと台詞もどう悩んで追い詰められた末に吐いてしまった酷い言葉なのかがイマイチまだ分からない。
原作の方は彼も彼なりに悩んでるのが分かりやすい作りなんですけどね。

ただ、そもそも自分が第1話を観てみようと思ったのは本作のチーフ演出が西谷弘監督と聞いたから。
フジテレビのドラマ演出はもちろん、『ガリレオ』の劇場版シリーズなどで映画監督も務めてきた人。

テレビドラマの映画化となると映画好きからはどうしても軽んじられがちだが、『真夏の方程式』『昼顔』『マチネの終わりに』なんかは映画として秀でた点もしっかりある良作だったと思う。

と同時に『アマルフィ 女神の報酬』みたいに「これはさすがに擁護のしようが…」な作品も無いわけではないw

まぁあれは脚本のクレジットが無いという異常事態から推察される通り監督の力量とは別のところで色々あったのだろう。

なので映画監督としては日本を代表するとまでは行かないまでも志のある作品を撮り続けていて、テレビドラマ演出家としては頭一つ抜けている人というのが自分の認識。

そんなわけで僕はストーリー(脚本)よりも演出を楽しみに期待して観たのだが、まぁ何というか西谷弘のフェティシズムが終始炸裂している画面だったw

まずは会話しているメインのキャラクター2人の前を子供や通行人が通る構図。
冒頭お花見や前半の川沿いのベンチで話すシーン。
ぶっちゃけ気が散るノイズにもなるけどああいう変な画面設計は嫌いじゃない。

これ以外にも思わず「実相寺昭雄じゃないんだからw」とツッコミを入れたくなるような手前に物を置く構図が頻出。

  • 洗濯物

  • レジの機械

  • 工事現場

後半にコピー機でトラブル発生するシーンのカメラ位置とかもう何あれ!?って感じでしたけどねw※褒めてます。
机の下、椅子の高さぐらいから覗き見るようなアングル。
いや、誰の目線なんだw

さらに資料室のシーンではそれがより一層エスカレート。
書類棚を横移動で舐めていくカメラワークから棚、みち(奈緒)、棚、新名(岩田剛典)の四層で撮る構図。
実に変態的であるw

からのエスカレーターを正面から縦に捉える構図。
奥行きを使った立体的な画面設計。

エスカレーターといえば視点は上りながら下る人物を映すカメラワークも良かった。
カメラマンが上りエスカレーターに乗って反対側の下りエスカレーターに乗る俳優を撮るとああいう感じになるのか?

そして、みち(奈緒)がコピー機の紙の上で迷路にハマるちょっとコミカルで不思議な演出を挟んだ後に来たのが初回のハイライト。
井上陽水作詞・作曲の『ダンスはうまく踊れない』をB'zの稲葉浩志がカバーしたバージョンを流し、2分強の間台詞なし!
音楽もフェードアウトではなく電気のスイッチを押す動作に合わせてカットアウト。
このシークエンスは妖しくて良かったなぁ。

終盤に入るとテーマに直結する会話が多くなるため前述のような演出は抑えめに。
歩きながら会話するシーンでのワンカット長回し撮影もあくまで俳優陣の演技を一気に見せるための手法として採用されてる感じ。
あのトーン&マナーの中で冷蔵庫の内側からのカメラアングルだけは意表を突かれて「ん?」となったけどw

エンディングでのタイトルの出し方も面白い。
「あなたしかいない」の文字がまるで波紋のように崩れた後に「あなたがしてくれなくても」に変化していく。
何とも陶酔的なデザイン。

今後のストーリー展開に自分が夢中になれるかは分からないが、西谷弘監督が演出するなら次回も観てみたいと思う。

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