漢方音楽2制作秘話：触覚と聴覚の融合による新しいヒーリングミュージックの可能性
私たちの感覚は互いに密接に結びついています。視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚—これらの感覚は、単独で存在するのではなく、常に共鳴し合い、独特の体験を生み出しています。今回、私は新作アルバム「漢方音楽2」の制作を通じて、特に触覚と聴覚の関係性に焦点を当てた音楽制作に挑戦することになりました。これは、漢方アロマオイルを使用した施術と音楽との融合という、かつてない試みでもあります。
40枚目のアルバム制作：新たな挑戦への道のり
私のアルバム制作は、大きく二つのアプローチに分かれています。一つは、純粋に自分の創作意欲から生まれる作品群（アート思考）。もう一つは、様々なご縁やコラボレーションによって実現する作品群（デザイン思考）です。これまでに制作してきた約40枚のアルバムのうち、20枚以上が後者のカテゴリーに属しています。
今回の「漢方音楽2」も、そんなコラボレーション作品の一つです。サブタイトルには「美容と健康のための漢方音楽」と付けさせていただきました。この作品は、茨城県筑波市でエステティシャンとして活躍されている小林沙緒さんからのご依頼がきっかけとなって誕生しました。
施術と音楽の出会い：感覚の共鳴を求めて
2022年末、一通の連絡が私のもとに届きました。それは、新しい施術方法の開発に取り組んでいる方からの音楽制作の依頼でした。施術空間にふさわしい環境音楽を取り入れることで、より効果的な施術を実現したいという熱意が伝わってくる内容でした。
翌年1月末、大雪の中、小林さんは京都まで足を運んでくださいました。その週は偶然にも、湖西線が11時間も停止するという極めて珍しい気象状況でした。そんな中での出会いは、今でも鮮明に記憶に残っています。
私は実際に施術を体験させていただきました。カッサと呼ばれるヘラ状の道具を使用する施術は、想像以上の強さで、意外な刺激を伴うものでした。しかし、施術後の爽快感は格別で、血行が促進され、体が驚くほど軽くなりました。
感覚の融合：新しい音楽表現の追求
この「漢方音楽2」は、2018年に制作した「漢方音楽」の続編とも言えます。しかし、アプローチは大きく異なります。前作が漢方薬の味覚や香りから音楽を紡ぎ出したのに対し、今作は触覚と嗅覚を中心に据えています。
特筆すべきは、この音楽が施術を受ける方のためというよりも、施術者のために作られているという点です。施術者は全神経を集中させ、強い力で施術を行います。その過程で施術者自身の緊張や疲労も蓄積されていきます。そこで私は、施術者の心身の状態を整え、より良い施術を可能にする音楽環境の創出を目指しました。
施術者が心地よい状態で施術を行えれば、それは自然と患者さまにも良い影響を与えるはずです。この考えのもと、様々な音楽的アプローチを試みました。
物理的な価値の追求：パッケージデザインへのこだわり
CDの需要が減少している現代において、あえて物理メディアをリリースする意味を考え抜きました。その結果、7インチサイズ（約20センチ四方）の大型ジャケットを採用することにしました。これは従来の12センチCDケースよりもはるかに大きく、かつての45回転シングルレコードと同じサイズです。
パッケージは単なる収納ケースではなく、インテリアとしても楽しんでいただける設計としました。CDプレイヤーを持っていない方でも、アートワークとして飾っていただける価値を持たせることにこだわりました。
この作品は、2024年5月にプレスCDとしてリリースされました。漢方の知恵と現代音楽の融合、そして施術という身体的な体験と音楽体験の調和—この新しい試みが、皆様の心身の健康に寄与できることを願っています。
何気ない日常の中で、私たちの感覚は様々な刺激を受け取っています。その中で音楽は、単に聴覚だけに働きかけるものではありません。今回の「漢方音楽2」の制作を通じて、改めてその事実を実感することができました。これからも、音楽の新しい可能性を追求していきたいと思います。
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