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なぜ、開墾するのか。

米作りを基本に「生きるチカラ」に向き合う「農業複業化プロジェクト」
今期は2年目。新たにプログラマーであったり、旅館経営者であったり、新聞記者であったり、リモートワーカーであったり様々な特技をもつ6名のメンバーが加わってくれてのスタートです。

メンバーが増える、ということもあり田んぼを拡張することにしました。

そして、借りた土地がこちら。
昨年再生した田んぼのすぐそばの敷地で、1反(10a)をちょっと割るくらいの面積です。
農林水産省によれば令和2年度のお米10aあたりの平均収穫量は535㎏。一人当たりお米の年間消費量が50㎏なので、10人ちょっとまかなえる程度の面積です。(ピークは昭和37年、ひとりあたり118.3㎏食べていたそうなので、それくらい食べる人だと5人弱分)

草原・・・。

十年以上はお米作りをしていない田んぼ。
オーナーさんも、毎年草刈りはしていますが、耕してはいない状態です。

ここが田んぼになるのか?
講師をお願いしているつながり自然農園の磯村さん(僕らの呼び名はイソップさん)も、やったことが無い体験だそうです。実際、昨年の田んぼの再生と比べても、今年のそれがもっと大変なのは言うに及ばず、、、という感じです。

「でもやってみたい」内なる衝動。


農業複業化プロジェクトのメンバーはフロンティア精神旺盛です。
去年1年目も田んぼ再生の中でいろいろなトラブルがあり、いろんな土木工事をやったりして何とか田んぼにしました。もしかしたら、その体験がメンバーの開拓精神に火をつけてしまったのかもしれません笑

◆排水改善のための暗渠(あんきょ)づくり

さて、まず何をするか?
敷地の状況を確認するに、すぐ隣の水路が老朽化していて水が漏れているようで、一部湿地化してしまっています。まずは排水改善をしなければなりません。

こちらの用水路が老朽化していて水がしみだしているので湿地化している

なぜ、田んぼなのに排水改善をしなければならないのか。
これはこの後綴るエピソードにも繋がってくるのですが、湿地だとトラクターがハマってしまって入れません。ですので、効率よく耕せません。
あと、水はけが悪いと稲刈りにも影響が出てきます。水が抜けないと、稲刈り機が入れないので、稲刈りもスムーズに行きません。

という意味でも、適度な排水環境を整える必要があります。

ということで、人力で穴を掘りまくります。
50~70㎝ほど掘っていくと固い層に突き当ります。ここまで掘りすすめ、水が流れるように傾斜を意識しながら溝をつくって、そこに竹などを入れて再び土を戻します。そうするこことで、排水できる環境になります。

掘ってたら、昔何かに使っていただろう管がでてきた。何に使っていたかは不明。

ちなみに、土。
草刈りはしていたので、その草が養分になって、土の状態はよさそうとのこと。これは楽しみです。

しかしながら、田んぼの半分は状況的にも時間的にも今年は再生が難しそうだったので、この時点でいけそうな半分のみを再生することにしました。全面再生できないのは残念でしたが、やってみてはじめて状況が分かってきたこともあるので、致し方なしです。

暗渠をつくって、畦をつくって、この日は終了。

◆田んぼを耕す

後日、作業の続き。暗渠のおかげで、排水は体感レベルではよくなっています。一安心。そこで、トラクターを入れて耕そうと試みましたが・・・、ここでアクシデント発生。
今年の再生は諦めた田んぼの方からしかトラクターの入れそうな場所がなかっため、そちらから入れたのですが、危うくトラクターがハマって出られなくなるところでした。
メンバーと協力し合って何とか脱出、ひやっとしたシーンでした。
でも、この日初めて会うメンバーもいましたが、こういったアクシデントを乗り越えるとチーム力が上がります笑 狙い通りです(うそです)

トラクター、はまる。

そういう訳で、トラクターは断念。

では、何で耕すか?
管理機(≒耕運機)を使います。土を起こした後、畑を耕すあれです。

草が深くて耕せない・・・

で、やってみたものの・・・。
草の根が深すぎて、全然耕せません・・・。
葉が草の表面をすべっちゃってるだけで、根に勝てません。

草刈りは毎年していた土地だけど、耕してはいなかった。
そうすると、そうですよね、こうやって根はしっかりしっかり張っているわけです。(継続して農作やってくれていたり、耕してくれていたりってすごくありがたいことなんだと痛感します。その先人たちのおかげで、すぐに農業ができるわけですから・・・。再生は大変です・・・。)

さて、どうするか・・・。
もう、これは人力で耕すしかないのか。
しかしそうはいってもこの面積、もう田植えの適正時期は目の前・・・。

時間が足りない・・・。
今年は諦めよう・・・。

その場にいたメンバーで出した答えでした。

管理機を引き上げる。あきらめムード。


しかし、しかしです。
ここで諦めないのがイソップさん。
いくつかの方法論で試行錯誤。
そして、最後の最後で、通常は溝を切ったりする耕運機使って再トライ。
そうしたら、結構行けそうな感じに。

ただ、深くは耕せるけど、1回で耕せる幅が非常に狭いというデメリットが・・・でも、メンバーの中でも開拓精神旺盛な坂本さん(さかもっち)が、1日時間を確保してくれて耕し続けてくれて、なんと、田んぼになりそうな雰囲気になってきました。ありがとう!さかもっち。腕はしばらくプルプルしてたそうです・・・。

全面耕し終わったさかもっち

◆水を入れる、代掻きをする。

畔を整え、僕らにとってはおなじみの「温水フロー」を使って水の引き込み口を作ります。そして、排水口も、きっとこっちが水の落ち口だろうと予想して設置。(田んぼの傾きがわからないんです、でも通常対角線上に落ち口があるそうなので、そう信じて設置)

水をいれる
温水フローで用水路から水をひっぱる
水の落ち口を設置
排水路づくり
豆トラのアタッチメントを変えて代掻き
代掻き
代掻き

なんとか、田んぼになったかも・・・。いやー、今年の開墾もなかなかでした・・・笑 (まだまだ全然安心できないけど・・・)

水鏡がうつくしい

◆なぜ開墾するのか。

さて、なぜこんなにも時間をかけ、こんなにも大変な思いをしてまで開墾をするのか。

かっこいいこと言いたいんですが・・・・

正直その答えはわかりません。
もうね、内から沸き起こってくる衝動だから仕方ないのです。

でも、そういえば、こちらの書籍の中でこんなことを言っていました。

●経済合理性で解決できる問題はほぼ解決されて、安全で快適に生きるための物質的基盤の整備はほぼ完了した。
●私たちの次の使命は、今の「安全で便利で快適(だけの)世界」から「真に豊かに生きるに値する世界」へと変容させる必要がある。
●そうするためには、金銭的価値観を超えた「人間性に根差した衝動」が必要、つまり、「そうせずにはいられない」という衝動が大切だ。
ビジネスの未来ーエコノミーにニューマニティを取り戻す/山口周/プレジデント社

今の世の中、経済合理性で判断することがほとんどだと思います。でも、僕も、この先の未来を作るには、経済合理性も大切にしつつも、この山口さんが言っていることに共感するわけです。

この田んぼの開墾も経済合理性なんて一切ないし、もちろん予定調和なんてものは存在しない。思ってもいなかったところから課題が出てきて、それを解決するためにただただ知恵を絞り行動を繰り返す。
これは、人間性に根差した衝動に他ならないと思っています。

僕らはたまたま「開墾」することに「衝動」が湧き上がってきましたが、違うことに衝動が湧き上がる人もきっといるはず。

普通に今の世の中生きていると、この「衝動」に気づかなかったり、抑え込んでしまうことがほとんど。

でも、次のステップに行くために、この「衝動」と出会う体験、いや体感をするために一歩踏み出せる環境があるのは良いことだと思っています。やっぱり「衝動」に素直になる訓練も必要だと思うからです。

そんなことを意識して開墾しているわけではなかったですが、ふと思い出したので綴っておきました。

あと、開墾しながらメンバーと話してて、「この活動はアートだよね」って表現も出てきました。確かに、内から湧き上がる衝動だから、アートですよね。きっとそれぞれのアートがたくさん表現されれば、世の中もっと豊かになるはず、と信じてこの活動も続けていきたいと思います。(あれ?ちょっとまて、農業複業化プロジェクトの趣旨から、それてないかい?笑)

でも、こんな大変な開墾作業。
きっと、僕一人だったら絶対に途中であきらめていたと思う。
やっぱり、価値観を同じくする仲間がいるからこそできている部分もあると思います。素敵な仲間に出会えたことに感謝&今後の展開が楽しみです。

まずは、この田んぼでもお米作りを成功させて、最高のお米を食べたいと思います。もちろん「農業複業化」も。

開墾はアートだ!!


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