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[第18節_富山vs新潟] ‐富山が新潟を突き放せなかった理由-[21/1/27]

第18節。富山対新潟の試合は93-81で富山が勝利した。
富山の持ち前の攻撃力が見られた反面、意外と最後まで競った試合となった。

───もっと点差をつけられたのではないか?
そういう意味で今節の試合がパッとしなかったと感じた人は少なくないかもしれない。

今回はこの点に関して解説していきたい。


富山「そんなものは経験済み。」

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序盤から早々に9-0と先行し、タイムアウトを取らせ、さらに第1Qでは27-14と先行した富山。
そのまま前半は50-31で終了した。

新潟は信州同様にピック&ポップやダブルチームを試みるが、今節の富山には通用しなかった。

休養期間の2週間を使って作り上げられた信州のダブルチームに比べ、新潟が行うスミスへのダブルチームは寄りが甘く、スミス単独で押し込み、引き付けて宇都選手のリフトへパスアウト、ソロモンのダイブから前田のスリーへパスアウトと面白いようにオフェンスが決まる。

ピック&ロールに関しても、3P試投数リーグ1位の信州に2日間みっちり鍛えられたスミスとソロモンはこれらをものともせず対処していく。
さらにスミス選手はアウトサイドの1on1に関しても間合いを掴み、外国籍インサイドの1on1であれば1人で対応できるほどの成長を見せた。

───そんなものは既に経験済み

そう言わんばかりだった。

地道に富山へ適応していった新潟

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しかし、後半はなかなか新潟を突き放すことはできなかった。

富山が大量リードを奪い、さらに派手なプレーも決まっている為あまり目立たなかったが、新潟は少しずつ富山に適応していた。

それは各クォーターの得点を見ても明らかだ。

1Q  富27-13
2Q  富23-19
3Q  富17-22
4Q  富26-27

50-31と大量リードした前半に対し、後半は17-22、26-27と両クオーターを取られている。
また、後半の49失点というのはいくら得点力に強みのある富山でも多すぎる。

こうしてみると新潟は各クォーター毎にオフェンスのクオリティを上げており、ディフェンスに関しても4Qを除いて徐々に適応していることがわかる。

新潟は2Q以降、攻撃の軸をアウトサイド主体のピック&ロールからインサイドのポストの1on1へ変更した。

特にウォッシュバーン選手の1on1は富山のインサイド陣もあまり経験したことのないタイプのものだ。
体を当てつつ、本命はファールドローンやリングにより近いシュートではなく、フェイドアウェイ気味のターンアラウンドシュートへと体を逃がす巧みなプレーにスミス、ソロモン、マブンガもなかなか対応できない。

インサイドが決まれば徐々にスリーポイントシュートも条件の良いものを作り出せるようになっていく。
ここから得点パターンのきっかけを掴み、新潟のオフェンスは復調していった。

が、2ゴール差まで詰めることはできなかった。この要因は2つだ。

1つ目は序盤に簡単に富山に自信を持たせてしまったこと。
これによって富山はスコアが接近しても常に『やろうと思えばいつでもスミスのセットオフェンスで点は取れる』という余力を残していた。
そして、要所の場面でこれを成功させ、流れを切っていた。

2つ目は単純なミスだ。
信州であれば落としてくれなかったであろうオープンショットの打ち損じ。
24秒ヴァイオレーションでもよい場面での不用意なパスミス。
今年の富山にこれをしていては中々勝つことは難しい。

進化した富山についていけないマブンガ

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ここから先が今回の記事で特に語りたい部分だ。
新潟を突き放せなかった理由の2つ目である。

これはTwitterでも発信したが、どんなに秀才でも授業を2回休めばついて行けなくなるものだ
それはマブンガ選手も例外ではない。

怪我明けで本調子でない自分。
そんな自分が数週間ぶりに合流したチームは信州戦を経て別チームへと成長していた。

そのため、実はこの試合では彼のところから多くの失点が発生していた。
その様子がこれだ。

①~④マブンガ選手の関わった2on2ディフェンスからエラーが発生し、ノーマークができてしまっていることがわかる。また、単独のオフボールディフェンスによるミスも。

⑤~その点スミスとソロモンはスムーズに処理をし、その後のアウトサイドのケアまでしっかりと行えている。特にスミスは本当に変わった。完全に "間合い" を掴んでいる。

富山はピック&ロールに対して完全にオールスイッチというわけではない。フリーでスリーを打たれそうになれば構わずスイッチするが、ある程度はノースイッチで凌ぐことを目指す。
しかしそこには、どこまでノースイッチを引っ張り、どこで見切りをつけてスイッチをするかという判断が問われる

この判断は味方と呼吸を合わせなければならないため、必要なのはIQや身体的な敏捷性というより、味方と2on2ディフェンスをしてきた回数になってくる。
しかし、これを全員が信州戦の2日間でみっちりと練習した中、彼だけはできていない。
チームメイトが実戦で得たものを、自分だけがチーム内の練習で埋めるといのは容易なことではないのである。

スタッツを単純に見ればEFF9とそこまで悪い数字は出ていないが、出場時間の得失点にはそれが表れていた。
彼が出場した17分47秒間では得点が34、失点が41とマイナスの数字となっている。

オフェンス面でも彼の1on1のプレーはチームの一連のパス回しの中にあるものではなく、ボールの流れを止めた、チームのボールムーブから独立したものが多かった。
その中でもシュートをねじ込むオフェンス力はさすがだが、少なからずこれもブレーキになっていたように思う。

浜口HCのマネジメント

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───もっと点差をつけられたのではないか?
そういう意味で今節の試合がパッとしなかったと感じた人は少なくないかもしれない。

しかし、最後はなんだかんだで点差をつけて勝負を決めた。

そして、富山ベンチには終始慌てた様子がなかった。

恐らく浜口HCは大量リードしたこの新潟戦をマブンガ選手のリハビリに充てたのではないかと思う。

第4Qでマブンガ選手が出ていた最初の4分21秒間で富山は8得点に留まり、林選手のバスケットカウントで10点差にされると、そこから彼をベンチ下げ、富山は以降の5分39秒間では18得点。

この展開は、「危なくなるまではできる限りマブンガ選手に試運転の時間を与え、最後の重要な場面ではベストメンバーでクロージングをする」というような意図だったと考えると合点がいく。

なぜなら次節は東京戦。
目の前の試合に大差で勝つことより、マブンガ選手がチームに追いつく機会を与える方が大事だと考えるのは妥当だ。

富山は今シーズン。開幕の4試合をオン1で戦い、3勝1敗とした。
それ以降もしばらくは8人ローテで戦い、三河からも1勝を取った。
途中合流の選手が多い難しい日程だったにも関わらず、富山は今東地区の4位の勝率をキープしている。

これだけのマネジメント力を持った浜口HCであれば考えそうなことである。


次節で戦う東京は宇都宮に24点差をつけて勝利した。
12/2の対戦では田中選手はとても大人しかったが、この試合では仕掛ける本数が非常に多く、スコアの起点になっていた。

多くはカーク選手とのピック&ポップからのスリーとそこからの派生だ。
次節は恐らくここに対する富山の対応が重要になる。
今日のように2on2ディフェンスにエラーが生じれば簡単に大量失点を許してしまうだろう。
そういう意味では次節はマブンガ選手がチームにどこまで追いつけるか。
"マブンガ次第"の部分も出てくるのかもしれない。

東京は宇都宮に快勝して自信があり、しかし今回は富山に警戒がある。
富山もOF、DFともに向上し、2連勝しているがマブンガ選手の状態には不安が残る。

前回とはお互いに状況が違う。
全く別物になるであろう次節の試合に注目していきたい。



ここまで読んでいただきありがとうございました。
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岩沢マサフミ@富山解説
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