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[第25節_富山vs千葉(後編)] ‐ 千葉が行った2-3ゾーン対策 -[21/3/7]

※この記事は第25節_千葉戦の後編です。
前半をまだ見ていない方はこちらよりどうぞ。

3月7日。
Bリーグ第25節。GAME2は88-90で千葉が勝利した。

第4Qは25-27と得点の応酬となり、まるで130-129まで点を入れ合った第14節のようなエキサイティングな展開となった。

しかし、それまでの両者の戦術の駆け引きも同様に非常に見ごたえのある内容だった。

富山の変則2-3ゾーンを崩す千葉のゾーンアタックと、そのゾーンアタックを無力化しようとする富山との戦術の応酬は千葉の得点推移に表れていた。

千葉の得点推移  1Q:29点 2Q:13 3Q :21 4Q :27

1Qは千葉のゾーンアタックが成功。
2Qは富山がゾーンアタックを対策。
3Qはさらに千葉が修正。
4Qでは完全に富山が止められなくなった、という展開だ。

そして今回はこの展開を裏付ける、ある数字をご用意した。(※)

(富山2-3ゾーン時の千葉のオフェンス)
シュートが決まったポゼッション数 /
ハイポストにボールが侵入したポゼッション数

今回の記事では、「この確率が高いほど千葉は効果的にハイポストを使い、富山の変則ゾーンを崩せている」と仮定し、この数字を添えながらそのクォーターに両者が行った戦術を解説していきたい。


①ハイポストを経由して、2P・3P・FT・オフェンスリバウンドによる得点など、何かしら得点に繋がったポゼッションを1/1でカウント。
②ハイポストを経由して、シュートミス・ターンオーバーなど、無得点に終わったポゼッションを0/1でカウント。
③速攻やマンツーなど、富山がゾーンを組んでいない時のこれらはカウントしない。
④ "ハイポストを経由" とは、"ハイポストにいるビッグマンがパスを受ける" ケースだけでなく、"ガードがハイポストへドライブする" ケースも含める。


【GAME2】

17  1Q  29
20  2Q  13
26  3Q  21
25  4Q  27
富山  88   F    90  千葉


1Q千葉_2-3ゾーンアタック

名称未設定-2_アートボード 1

GAME1では、千葉は富山の変則2-3ゾーンに得点を抑えられた。

富山の変則2-3ゾーンは、ハイポストのビッグマンへボールが入ったら、サイドのマブンガがハイポストまで上がってマッチアップするというものだった。

これをさせないため、千葉はこの変則2-3ゾーンを無効化するためにある工夫をした。

それは、マブンガ側のウイングの低い位置にシューターを配置し、充分にマブンガを外へ吊り出してからハイポストへと配球するというものだ。

こうすればハイポストのシュートへマブンガは対応できない。
上のガード(岡田)と入れ替わろうにも距離が遠すぎるからだ。

スミスが対応してしまえばゴール下が空き、パスを落とされたりリバウンドが手薄になってしまう。

かといって対応しなければシュートを打たれてしまうし、上の2枚のガードが対応しに行っても高さのミスマッチによってダンカンらのパスアウトを邪魔できず、3Pを打たれてしまう。


これに対し富山は、上のガードがハイポストへ "ジャブ" を行うことで止めようとした。
つまり、ハイポストの "キャッチ&シュート" だけをチェックして止めに行き、その後すぐに外のディフェンスへ戻るというものだ。

こうすればパスアウトされてもアウトサイドシュートへ素早くチェックに行くことができる。
その後ハイポストでボールを持ったダンカンらを空けることにはなるが、"キャッチ&シュート" より少しリズムの難しいシュートになる。

【MEMO】
シュートはキャッチ→シュートまでを一連の動作、一定のリズムで行うのが最も良いとされている。
しかし、こういった対応をされればキャッチ→ピボット→シュートとなるのでこの一連の動作が途切れることになり、シュートの難易度が上がる。

このミドルシュートを決め損じることを富山は狙った。

しかし、ダンカン選手とエドワーズ選手が構わずこのシュートを決め、富山は千葉のゾーンアタックの方程式を崩せない。

その結果、1Qの例の数字は以下の通り。

千葉-1Q
・シュート成功ポゼ数 / ハイポストに入ったポゼ数:6/9(66%)

そのうち...
・ビッグマンのハイポストに入ったケース:4/4(100%)
・ガードがハイポストにドライブしたケース:2/5(40%)

千葉のビッグマンがハイポストを効果的に使えていることがわかると思う。

さらに富樫はこれに加え、ガードがハイポストにドライブしたケースはあまり上手くいかないと見ると、クォーター終盤にはハイポストを使わないダブルピックからの3Pシュートを選択。

GAME1では0/5だった3Pを、このクォーターだけで2本決めた。

さらに千葉は速攻も多く出し、富山のゾーンが組まれる前に攻撃することも抜かりなく行い、速攻だけで8得点を奪う。

これにより、千葉は第1クォーターを29得点と完璧な内容で終えた。


1Q富山_ベンチメンバーが流れを変える

名称未設定-2_アートボード 1

富山はGAME1で好調だった岡田侑大をスタートで起用し、96点取った5人で出だしから勝負したが、最初の5分間でマブンガのスリー2本の6得点に留まっていた。

用意したセットオフェンスが千葉に読まれてことごとく先回りされ、良いシュートを作れない。

さらにディフェンスのプレッシャーもGAME1より高く、P&Rでズレを作れない。
そのためそこからオフェンスが派生せず、富山のオフェンスはトップ周辺からほとんどボールが動かない。

浜口HCは早めに損切りの決断をし、ベストオーダーのスタメンを解除。
攻撃のリズムを変えるために橋本、水戸、松脇とコートインさせていく。

ベンチスタートの彼らが入るとウイングからの攻撃や、スミスのポスト1on1が生まれ、ここから富山はリズムを掴んでいく。

後半の5分では11得点と復調し、29失点しながらも12点差でしのいだ。


2Q_富山のゾーンアタック対策

名称未設定-2_アートボード 1

富山は決して目先の点差に慌てず、1Q後半のオフェンスを続けていく。
水戸が2得点1アシスト、橋本が4得点、松脇が2アシストと、この時間ではGAME1で得点の無かった彼らがチームを支えていく。

彼らとスミスのP&Rが3本成功すると、ここからはスミスが調子を上げてチームの得点を引っ張っていく。

2Q終盤にはスミスが4ファールとなるトラブルに見舞われ残り2分にベンチに下がったが、その時間は宇都ー岡田のホットラインで連続5得点を挙げ、このクォーターで20点と1Q後半の得点ペースを維持した。


...とはいえ、修正が急務だったのはオフェンスよりも1Qに29失点した2-3ゾーンだった。

富山は千葉のゾーンアタックにある対策を講じた。


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