見出し画像

ヨーロッパ旅行記4〜日本人との出会い〜


目的地に書かれている住所を目指す。もうかなり疲れてきた。体も心もきつい。早く休みたい。目線は下を向きながら人にぶつからないように歩く。

歩いていると、とある建物の前でアイコスを吸っている男性がいた。遠目から見る感じアジア人だと分かる。日本人ぽい。僕がその男性の前を通り過ぎる少し前に目が合う。あーやはり日本人ぽい。通り過ぎる。すると「Hello. Are you Japanese?」と聞こえた。僕は立ち止まり、「YES. あっはいそうです。」と答える。

その男性は日本人の方だった。学会に参加するためプラハに来ていて、今はその建物の中でウェルカムパーティーが行われているのだそうだ。外でアイコスを吸っていた時にちょうど日本人ぽい僕が通りかかった。今回のプラハ滞在で自分たちの団体以外で日本人を初めて見たから、僕に声をかけたのだという。
首から英語で書かれた名札をかけている。会話が始まる。大学や専門について聞かれ、僕は哲学を学んでいると答える。すると頭がいいんだね、と言われる。謙遜していると、東大の学生の中で文系で1番頭がいい学生がいるのが哲学科で、理系で1番頭がいい学生がいるのが物理学科だと言っていた。僕も若い頃はよくデカントデカント言って勉強してたよ〜と笑顔で言っている。デカントとはデカルトとカントのことだ。話しているだけで知的さが伝わってくる。そもそも海外の学会に参加してるくらいだから、優秀な学者さんなのだろう。

そして、彼は自分も若い頃にバックパッカーをしていたと言っていた。その頃の話も少ししてくれて、若い頃にたくさん海外へ貧乏旅行しに行った方がいいというアドバイスもくれた。
心が折れかけていたこの時の僕にとって、この男性との出会いはとても嬉しいものだった。日本語で哲学や海外旅行の話ができるなんて。

チェックインを早く済ませなければなかった僕は男性に別れを告げ、少し元気になった体をまた動かし始める。

この男性との出会いはこの時の僕にとってほんとに大きなもので、2年経った今でもよく覚えている。
この後、アパートメントに着いてから名札に書かれていた名前を思い出し検索してみた。彼はとある大学病院の外科医の先生だった。通りで知的さが溢れていたわけだ。
今となって思うと、男性が僕に声をかけてきた理由は本当だったのかと疑問に思う。
僕は2日間しかいなかったプラハで結構日本人の姿を見た。もしかしたら、絶望の表情を浮かべながらバックパックを背負っていた僕を見て、過去の自分を思い出していたのかもしれない。
この出会いはヨーロッパ滞在の中でも特に記憶に残る出会いの1つになった。

読者の皆さま、まだ1カ国目だというのにまだ宿泊地にすら着いていなくて申し訳ない。あと3話以内くらいには到着する予定である。ちなみに言っておくと、この旅行記には観光地情報などはほとんど出てこない。リアルドキュメントだと思って読んでいただければ幸いである。

5へ続く。


サポートお待ちしております^_^