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写真との出会い

高校大学を経て、
私は理学療法士として働いていた。

社会人2年目のことである。
社会に揉まれ、疲弊をしていく中で沸々と湧き上がる気持ちがあった。

「何にとらわれず、自分の好きなことを
          たくさんしていきたい」

人のために動く事が原動力だった
優しい性格と言われることはあるが、
その裏は人から認められたい、よく思われたい。人の評価に価値を求める人間だと思う。

他人軸で八方美人、そんな自分の本心が20何年間と生きてきてようやく蓋を開けてでてきたのだろうか。

今まで人のためと思ってた事が、それは自分の原動力ではないということに気づき始めていたのかもしれない。

ちょうどそんな時に、
カメラ好きな友人が新しいカメラを買った。

SONYα7III、のちに自分の愛機となるカメラだ。

その友人と一緒に星空を撮影しに行った。

向かった先は千葉県野島崎灯台。
梅雨の真っ只中だったがその日だけ快晴だった。澄んだ夏の空気に、満天の星空が広がっていた。

そこで友人が撮った星空の写真が、
私の心を強く打った。すごく綺麗だな。

その写真を見たら今でもあの星空が目の前に浮かび上がる。一瞬の思い出を永遠にするツールとしてカメラがあるんだと気づいた。

本格的にカメラが欲しくなった。

野島崎灯台での天の川



そしてその一ヶ月後、私は職場の同僚と
酒を飲みながら話していた。
自分の好きなことをやってみたいってこと。
そこで同僚に言われた事が金言だった。

「好きなことに一回突っ走ってみれば。」

 そこから、自分の好きな事は何だろうと本気で考えた。やっぱり最初に出てきたことは宇宙、星空のことだった。もう一つは旅行。一人旅でたくさんの場所に行くのことが好きだった。そしてカメラだった。

全部掛け合わせればいいんじゃないか?

夏休みの7連休、私はひたすらに星を求める
撮影1人旅をやることにした。

課題はもちろんあった。

①カメラがない。
②天候の問題

①調べると、カメラはサブスクリプションで借りる事ができるとわかった。

私はSonyα7IIIと、Sony 24-70f2.8gmを借りた。星はこれがあれば問題なく撮れるだろう。これでカメラの問題は解決した。

②場所を決めてしまうと、天気が悪かったら最悪だ。一週間を棒に振ってしまうリスクがあった。それだけは避けたい。

だったら車を神奈川で借りて、行き先はお天道様に任せることにした。

7日間で晴れそうなところに行こう。
それは九州かもしれないし、北海道かもしれない。全国の星空スポットを舐めるように調べた。一週間全国が雨だったら、それはもう仕方がない。天候の問題も解決した。

そして出発一週間前に、比較的天候が安定してかつ、友人が住んでいる四国方面に行き先を定めた。

忘れもしない2020年8月。

自分の人生を変えた、四国へ星を求めるカメラ旅がこうして始まったのだった。

仕事を終え車を借りて、夜通し四国を目指し、高知の温泉施設で仮眠する算段である。

スケジュールは
1日目の夜、高知県と愛媛県の
県境にある四国カルスト
2日目の夜、徳島県剣山
3日目以降は帰宅しつつ余力があれば星を見る。
こんな感じだ。

案の定2日目の剣山で限界を迎え、帰ることになるのだが。

移動を含めると0泊5日という
過酷スケジュールだった。

深夜高速に車は消え行く。
しかしまあ、四国は遠いこと遠いこと。

音楽のプレイリストは何周したんだろうか。

この曲聞いたの3回目はザラだった。
いい加減飽きてくる。

夜の8時半に神奈川をでて、朝の4時半に
兵庫県淡路島SAに到着した。車の中で仮眠を取ろうとした。

薄明の空に、冬のダイヤモンドが浮かんでいる。

真夏の夜明けの星空は、冬である。
しかし、冬なんて全く感じないほど、
夏の車中泊は地獄の暑さだった。

結局睡眠らしい睡眠は取れなくて、ほぼ不眠不休14時間ほどかけて高知に着いた。

温泉で疲れを癒し、夕方に四国の友人と合流して、四国カルストへと向かった。

四国カルストに着いたのは夜9時過ぎだった。

車を降りると高原地帯の涼しい空気が肌を包む。見上げると見えるは、まさに降ってきそうなほどの星空だった。

感動だった、涙が溢れそうになるほど。
自分が追い求めていたことはまさにこれだと直感した。

そして人生初の星空撮影を始めた。
使ったものは三脚とカメラ、ナノトラッカーというポータブル赤道儀だった。

撮影の知識なんて何もない。
F値、isoの概念、ホワイトバランス、何も知らない。

友人が送ってくれた、星の撮影のメモだけを頼りに撮影をした。


星空撮影のメモ
星の撮影の知識はこれのみ



四国カルストの天の川 
この一枚は自分の人生を変えてくれた



夜通し撮影をして、アスファルトの上で寝落ちした。朝の運転は友人に任せて四国カルストを後にした。

次の日は仮眠をして徳島県剣山を目指した。
剣山の星空も大変美しかった。漆黒の空に浮かぶ満天の星々、雲海と天の川。朝日。
自然の美しさにひたすらに感動した。

剣山の星空
雲海に沈みゆく天の川




焼ける次郎笈
この日の朝日はとても綺麗でした



この旅を通じて自分の中で
意思が明確となった。

全てをかけてでもカメラを買って、
星を求め続けていくべきだ。

自分の本心が心に訴えていた。

人のためでなく、自分のため。

自分の人生の選択にとって、この決断はとてつもない価値を秘めたものだろう。

四国の旅の2ヶ月後、秋葉原のヨドバシカメラでカメラを買い、自分の写真人生がスタートしたのだった。

新たな人生の幕開けだった…

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