将来の働き方の実現に向けて

新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、Facebook Japanでは2020年3月より完全なリモートワーク環境に移行しました。

リモートワークの要諦は社員への信頼と責任の明確化

全社員が一斉にリモートワークを行うのは初めての経験でしたが、リモートで業務を行うこと自体へのハードルは実はそれほど高いものではなく、結果としても業務の生産性という観点では影響は小さかったのではないかと思っています。
もともとFacebook Japanでは社員の多様な働き方を支援しており、社員が希望すればリモートワークを行うことができましたし、そのためのツールも用意されていました。またそのような仕組みだけでなく、各社員の目標や役割が明確に設定されており、その前提のもと社員を信頼し、社員は責任をもって業務にあたるというカルチャーが醸成されていたことも要因だと思います。

最近もリモートワーク時の生産性が平時よりも落ちるという調査結果を目にしましたが、リモートワークにはこれまでどのように組織を運営してきたかという側面が反映されてしまうと感じています。リモートワークが機能していないと思われている方がいるようでしたら、社員への責任の与え方、目標とそれに対する期待、評価基準の設定がうまくできているのかどうかを見直してみると良いかもしれません。

Facebook社に限らず、外資系テック企業は優秀な人材の能力を最大限に活かせるよう、各社で仕組みこそ異なるとはいえ、責任を与え評価をしていく形がきちんとできているからこそ、リモートワークにも柔軟に対応できているのだと思います。

雑談が無くなったことで失われたこと

一方で、全てがうまく回っているわけではなく、リモートワークだけという環境ならではの課題も見えてきました。特に全社リモートワークが導入された直後は、緊急事態宣言も発出され社会的にも緊張度が高まっている時期でした。

そのような中で、家から出ることなく際限なく仕事に集中し、ミーティングなど必要最低限の機会でしか同僚と会う機会が無い状況が続くと、社員の中でも特に一人暮らしをしている社員の中には少なからず孤独感を感じてしまう方もいました。また、ミーティングも、スクリーン越しに議題に沿って必要なことを話していくので、本来であればオフィスでミーティングの前後や、通路やフリースペースなどで会話していたような機会は失われがちになります。

そのため、社内の横のつながりが減ってしまい、組織に属している感覚が以前と比較すると失われてしまっているのではないかと感じました。これは私だけでなく、多くの方にとってもこれまで経験したことがないことではないでしょうか?

孤独感を解消したり、帰属意識を維持・向上させるためにはどのようなことをすればよいのか。社内のチームとも何をすべきか検討した結果、オフィスでの雑談のように、仕事以外のことを話したりできるような場を意識的に用意することにしました。

そこから生まれたのがコーヒー・チャットや瞑想タイム、ストレッチ・タイムと私たちが呼んでいる時間で、テレビ会議システムを通じて、社員が任意で参加して気軽に交流ができる場です。私自身も毎週「Masa’s room」という時間を設けて、社員と話すようにしています。

取り組みが立ち上がった直後から社員も積極的に参加して周囲とコミュニケーションを図っていましたし、当時はリモートワークのTipsなどの情報交換も行われていました。今では、複数のグループが共同で企画を行ったりするなど、取り組みが定着化しています。社員のみんなに関りがあるテーマを設定し、「勇気を出して参加しなければ・・」とならないような仕組みになっていることが定着したポイントなのではないかと思います。

リモートワークを推進し、新しい働き方を実現

Facebook Japanでは現在、全社的にリモートワークで業務を行っているのはお伝えしている通りです。そして、今後は、会長兼CEOのマーク・ザッカーバーグが昨年表明したとおり、Facebook社は中長期的なスパンで積極的にリモートワークを推進する企業になることを目指していきます

新型コロナウイルスの感染状況が落ち着いた段階ではオフィスを再開する予定ですが、全社員がオフィスに戻ってこれまでのように業務を行うことはないかと思います。

個人的にも、リモートワークの推進は働き方の自由度を確保するという点で利点が多いと思います。

特に採用に関していえば、これまで住んでいる場所に縛られていたことは、良い人材を採用できない、あるいは失ってしまう要因であった可能性があります。最初からリモートワークを前提とした採用であれば、例えば全社集会の時だけ出社するといった考え方も可能となり、働く側にとっても自由度があがり、企業側にとっても良い人材を確保できるメリットがうまれるのではないでしょうか。

またテクノロジーの進化によって、リモートワークを取り入れた働き方がさらに進化する可能性があります。例えば昔のビデオチャットツールと現在広く使われているようなオンライン会議システムを比較すると、遅延も少ないですし、参加者の反応も良くわかり、コミュニケーションの深度は明らかに高くなっています。

このようなツールがさらに進化し、またVRが一般化して業務に取り入れられるようになると、人と人とのインタラクションやコミュニケーションがさらに深くなり、これまでとは違う将来の働き方が実現されていくのだと思います。

企業カルチャーの維持が新しい課題に

一方で、課題もあるでしょう。さきほど帰属意識の問題について紹介しましたが、まだまだ分からない課題が多いといったほうが正確かもしれません。

私は企業カルチャーの維持が一番の課題になるのではないかと考えています。私自身、Facebook社に入社してから本社にトレーニングを受けに行き、その後リモートワークを導入するまでの約1か月半はオフィスにて社員と交流していました。オフィスはカルチャーを体現している場所でもあるので、その点でカルチャーを肌で感じることができています。しかし、リモートワークを前提とした採用が進むと、1回もオフィスにくることなく業務を行う方も増えてきます。そのような方にどのようにカルチャーを感じてもらい、また組織全体としてカルチャーを維持していくのか、は大きなテーマになってくるでしょう。

Facebook社はカルチャーをとても大事にしていますし、そのカルチャーは時間をかけて築かれるものであることも認識しています。だからこそ、Facebook社としても5-10年という長いスパンの中で、リモートワークがどのように機能するかなど、様々な課題を解決しながら、時間をかけて移行を進めていく予定です。