「もの」だけで終わらない「ものがたり」がカフェの居心地の良さを醸し出す
「あ、雑誌で見たカフェだ!美味しそうだし行ってみよっと!」
「あ、instagramで見たカフェだ!雰囲気よさそうだし行ってみよっと!」
と雑誌やインスタを見てカフェに行く人が多いのではないでしょうか。
だけど、最も欠かしてはならないものは「人のあたたかさ」だと僕は考えています。
そこで今回紹介するのは関西プレスなど雑誌やメディアに数多く掲載されている中崎町の古民家カフェ「KAYAcafe」であたたかい雰囲気を体現する、
長谷川知美さんです。
僕は新しいもの好きで好奇心旺盛のカフェめぐりが大好きな男子。しかし気がつけば去年の5月から今年の3月までで8回も来ていました。
僕以外にも知美さんに会いに来る常連さんはたくさんいるとのこと。人を引き込むあったかさはどこにあるのか。
今日はとても美味しい料理や店内の落ち着いた雰囲気ではなく、KAYAcafeの1人のあったかい「ものがたり」に迫ります。
子どもの頃は幼稚園の先生の陰に隠れるぐらい人見知りだった
「今日をすごく楽しみにしていました!」
と早速丁寧な言葉で話す知美さん。次に出たのは驚くべき言葉でした。
「人見知りやったんですよ。KAYAに立つときはスイッチ入れて立ってますけど、中身は内向的な私です。」
ーー人見知りなのに人が好きなんですか?
人に興味があるから仲良くなりたいんですよ!
けど人見知りだからドキドキしてしまうし、
「自分をちゃんと受け入れてもらえるかな」って不安になるんです。
幼稚園の頃はいつも先生の陰に隠れているような子でしたね。
人前に出ることが億劫だった知美さん。そんな知美さんは3つのあったかエピソードを通じて変わっていきます。
あったかエピソード①
「ただ人を喜ばせたい。」家族からの小さなサプライズ
ーー人が好きになったきっかけは何だったんですか?
お母さんが人を喜ばせるのが好きだったのが大きいですね。
私が前働いていたクレープ屋さんを辞めるとき、帰ったら家族が「8年間お疲れ様」って幕を掲げてくれててすごい嬉しくて。
今でも実家なんですけど、うちのお母さん、今でもお誕生日にお子様ランチ作ってくれるんです!でお子様ランチのプレートの上によく立ってる旗を手書きしてくれるんですよ。いい歳しながらそういうことに喜んでます(笑)
なんかそういう、ちっちゃいサプライズに感動しながら生きてきました。
家族から受けたそんな「嬉しい幸せな気持ちを自分もちょっとでも与えたい」という想いを持ち、まだ駆け出しのKAYAcafeの店員としての人生を歩み始めました。
あったかエピソード②
小さなチラシ配りから感じたあたたかさ
店内でお客さんをおもてなしするのはKAYAが初めてだという知美さん。まずはチラシ配りから始めたそうです。
1日目かな、チラシを受け取ってくださった方に「頑張ってください!」ってミルキーもらったんですよ。
それがすごいあったかくてめっちゃ幸せな気持ちになって。
初日に人のあったかさに触れて、あ、人っていいなってなりました。
2日目は私が保育士をしていた頃にプライベートでよく行っていたカフェのオーナーさんがたまたま通りかかって「あ、ともちゃーん!」って声かけてくれて。
「今度2号店オープンするんやけど、ともちゃんをスカウトしようと思ってた」って言ってくれたんですよ。
世間話程度だとその時は思ったんですけど、定期的にKAYAに来てくれて、「あのあと実はもう一回本気でスカウトしようと思ってた」って言ってくれて。
こんな私でも必要としてくれる人がいることが嬉しかったですね。
あったかエピソード③
はじめての常連さんから感じたあたたかさ
その女の子は私にとって初めての常連さんで。
お店に来て、パフェを頼んでくれたんですけど、他のお客さんの注文と重なってしまったから作るのに時間がかかってしまって。
そしたらその子がたったったって来て、
「ごめんなさいもうお店で出ないといけなくって。隣の席の人にこのパフェをプレゼントしてくれますか?」
って言われて。
私の返金したい気持ちを押し切って「また来るんで!」って言って颯爽と出ていきはったんですよ。ほんとにかっこよくて。
それ以来常連さんで何回も来てくれて、友達のように仲良くなりました。
ーー通ってくれるって素敵ですね!
はい!しかもその女の子は「商品の味」や「お店の雰囲気」じゃなくて、「私と喋りたい!」って感じで来てくれてたのがすごい嬉しかったんですよ。それでもっと人が大好きになりました。
人のあたたかさに触れながら人が大好きになっていった知美さん。ここから受けた幸せな気持ちをお客さんに与えていきます。
あったかい気持ちを形に。
今年の2月、知美さんは僕に「バレンタインクッキー焼いたんで、ぜひ来てください」って言ってくれました。ちょうどその頃はお客さんが増えてきて忙しい時期。それでも自分の時間を削ってクッキーを焼いてくれたそうです。
見てください!この癒されるクッキー。かわいすぎてもらった僕も思わずほっこりしました。
ーーお店が忙しい時期に作れるんですね。
はい。いつもお客さんと関わるときに、感謝の気持ちを大切にしてはいるんですけどその気持ちを形にできるのっていつなんかなって考えたときにバレンタインが思い浮かびました。
確かに2月は大変な時期ですけど、ほんとに人に喜んでもらうのが好きで。その時間は苦にならないですね。
ーー素敵。家族のようにあったかいですね。
こんな私をいつも気にかけてくれる優しいお客さんに対して、私は「負けないくらい大切にしたい!」って思いから行動しているだけなので。自分1人では何もできないです。
優しくてお兄ちゃんみたいなオーナーや、可愛くてキラキラしたスタッフ、そしてあたたかいお客さんと”一緒に”この空間を作りあげているという感覚ですね。
この時代にこの日本で、大阪で、しかもこんなちっちゃいカフェで、今このタイミングで出逢える(※)のってすごい奇跡やと思ってて。
だからスタッフは家族だと思っていて、お客さんは親戚。
普段家族で過ごしている家に久しぶり~!って遊びに来てくれるような、そんな空間にできたらなって思ってます。
※出逢う:「出会い」と区別されます。「出会い」は誰かと誰かが知り合うという「事象」。「何かしらの意味合いがある」のが「出逢い」です。
あたたかい雰囲気が行列へと変わりゆくKAYAcafe。
そんな家のようなあったかい空間も最近は雑誌やメディア掲載も増えるようになりました。
ーー最近お店の方はどうですか?
おかげさまでKAYAcafeも最近はたくさんの方に来ていただけるようになってきて、もうほんとにすごく嬉しいです!
ただ、今まで私が大切にしてきたことが後回しになってしまうことが増えましたね。
せっかく常連さんが私に逢いに来てくれたのにバタバタしちゃってて。お見送りのときは「すみません~!」と思って見送っています。
ーーあったかい雰囲気は薄れたりしないんですか?
薄れはしないし今でもあったかい雰囲気は大事にしたいですけど、それより周りの人に「KAYAcafe知ってる!」って言ってもらえるのがありがたいんです。
前まではチラシ配っても興味をもっていただけなかったり、売上1日☕1杯だけでずっと掃除してる日もあっていまだに覚えてるので。
だからこそ今は自分の優先すべき仕事に集中しないといけない、と思っています。
そこは常連さんたちを信じて、「ちょっと私頑張ってるから見守っててね」って気持ちでやってますね。
新規のお客さんが増え、1人に向き合う時間が少なくなった知美さん。
それでも「新規のお客さんたちにも常連さんと同じように『またこの場所に帰ってきたいな』って思ってもらえるお店にしたい」と知美さんは前を向きました。
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人からもらったあたたかさを周りにも与え続けることで、ファンを増やしてきた知美さん。
そのほっこりエピソードに、僕が「素敵!」といった回数は20回以上を数えました。
味や店内の雰囲気の「もの」だけで終わらない「ものがたり」のあるカフェ。
「また来たい」ではなく「また帰りたい」と思わせてくれるカフェ。
知美さんはまさに家屋(KAYA)の名前にふさわしい「家」のような方でした。
皆さんも「帰りたい」と思うカフェを見つけてみてはいかがでしょうか。
北海道に飛び込んだ僕も出会う1人ひとりに向き合い、癒すことのできる「家」のような存在になりたいと思います。
4月から北海道に住む社会人1年目・佐々木将人
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