42歳、3回目の転職でなぜスタートアップに飛び込めたのか
6万人以上に読まれた前回のnoteは、実は自分を励ますつもりも半分くらいあったのですが、想像をはるかに超える多くの方、しかもオッさんではない方からもポジティブな反応をいただけました。
続きを!というプレッシャー ありがたい声もたくさんあり、その中でやや多かったのが、
「そもそも大企業・王道ぽいキャリアだったのに、なんで今の会社に転職しようと思ったの?」
だったので、今回はこのテーマについて書いてみたいと思います。
もちろん私個人の判断基準しか書けないですが、もしかするとこれを読んでいるあなたが転職するときや新しいチャレンジをするときの参考になるかもしれないので。
そうじゃない、XXXな話が読んでみたい、というリクエストがあれば、noteへのコメントまたはTwitterで教えてもらえれば、次の機会に書きたいと思います。
結論から先に言ってしまうと、だいたいこの5つ。
1.やりたい・経験したいと思っちゃったから
2.スタートアップは、ビジネスパーソンとしての総合力が問われるから
3.勝ち筋が見えたから
4.大きなダウンサイドがなかったから
5.世の中に自分がやったことの傷痕を残せそうな気がしたから
1.やりたい・経験したいと思っちゃったから
もう何を置いても、まずはこれが一番大きい。
そして、転職でも何でも、自らの選択で何かを始める場合、これが一番大事だと思ってる。
興味を持った、やりたいと思った。
そしたら、いっぺん経験しないかぎり、それが満たされることはない。
「関心がある」とか「ちょっと気にある」という薄ーい興味や好奇心は、誰にでもいくらでもある。
そこから一歩二歩進んで、「やってみたい」「経験してみたい」と思ったら、それは経験しないと永遠に満たされない。
もしやらなかったら、死ぬときに「やらなかった後悔」が残るだけだ。
もし、皆さんも「うー、これはいっぺん試してみないとモヤモヤが晴れない!」と思うモノがあり、それを試せる機会があるなら、絶対にやった方がいい。
やらなかったら、自分はあとで後悔するか?
これはある時から自分の中でとても大事な判断基準になった。
海外のビジネススクールへ行くと決めたときが、そうだった。
たしか、こんなアドバイスをもらった。
MBAに興味を持っている人はだいたい毎年1,000人くらいいる。
実際に行動に移すのはそのうち100人くらい。
やり続けられるのは10人くらい。
(数字はちょっと違ったかもしれない)
途中のつらい過程を乗り越えられるほど強い思いを持っている人は、実はそれほど多くない。
隣の芝生はだいぶ青く見えるもんだけど、どんなことでも、外からはわからないたいへんなことやつらいことが多々ある。
そういうつらいことにぶち当たったとき、それに耐えられるだけの強い思いを、自分は持っているのか。
逆もまたしかりで「今の場所でやり残したことはないか?」「今コレをやめたらあとで後悔しないか?」と自分に問うことでもある。
若い人には実感が湧きにくいかもしれないが、時間は有限だ。
自分の人生という貴重な時間をどこに使うのか。
後悔しないコトに、そして簡単に挫折しないくらいには頑張れるコトに時間を費やしたい。
42歳間近の私にとって、スタートアップへ飛び込むことはそういう対象だった。
とにかくいっぺんやってみたい。
といっても、なかなか飛び込みたいと思える対象があるわけじゃない。
3で詳しく書くが、自分で「これは!」と思える事業・商材になんて、なかなか出会えるもんじゃない。
仮に出会えたとしても、今度は自分がそこで求められる人材だとは限らない。
正直、やっぱりオッさんにはそういう選択肢は難しいのかなー、とも思っていた。
そして、たまたま、本当にたまたま、そういうチャンスに巡り合った。
それが今の会社(ワークスモバイルジャパン)だった。
もし今あなたに、そう思えるコトがあるのなら、それはとてもラッキーなことだと思う。
逆に今はそう思えるものがなくても焦る必要はないと思う。
まだ出会っていないだけで、いつかどこかで出会ったら、きっと気づくから。
ちなみに、そう思って転職しても、つらいときはホントつらい。
ときどき、へこたれそうにもなる。
そうそうキレイにはいかない。
2.スタートアップは、ビジネスパーソンとしての総合力が問われるから
元々、私はこれっぽっちも起業やスタートアップに興味はなかった。
昔は今ほど情報もなかったので、単純に知らなかったし。
思い返すとMBA留学中に同級生から「アントレの授業取ろうよ、そんでビジネスプランコンテスト出ようよ!」と誘われたときも、全然ピンと来なかった。
やってみたらおもしろくて、いろんなコンテストに出たり、本物のVCの前でピッチする(英語で)なんていう貴重な経験もできたし、決勝戦でLAまで行かせてもらうなんてこともあったけど(優勝はできなかった)、卒業後に自分がそういう世界にいくということは考えてもいなかった。
でもそのときの同級生の口説き文句は今でも覚えてて
「アントレ(起業)は、ビジネスパーソンの総合力が問われる世界。これをやらずして、ビジネススクールで学んだことを活かせるのか?」
そのときは「うーん、まあ、そうかもな」くらいにしか思ってなかったけど、コンサルティングの世界でターンアラウンド(会社や事業を根本的に立て直す)の一部を垣間見たり、事業会社で経営者の日々の議論や意思決定に触れたり、自社事業の立て直しに携わったりするなかで、「経営は総合格闘技」という実感はどんどん増していった。
レバーやボタンが1〜2個しかないような、高度に operationalize された事業というのは、はっきり言ってめちゃくちゃ強い。儲かる。スケールする。
でも、中ではたらく人にとって、おもしろいとは限らない。
どのレバーを引いたらいいか、どのボタンを押すのが一番インパクトが大きいのか、そういうところにおもしろみを感じる人間にとって、できあがった会社や事業はおもしろくない。
リソース(ヒト・モノ・カネ)は限られるけど、限られるからこそ、どこをどうするかウンウン唸って考える。
変なところにリソースを割いたら、死んじゃうかもしれない。
エンジニアではない、ビジネスサイドの人間がスタートアップに魅せられる理由は、そういうヒリヒリ感だと思う。
そんな人間が、会社と事業が立ち上がる場に居合わせられる機会に巡りあったら、飛び込まずにはいられないでしょ。
ちなみに、総合格闘技で勝てるかどうかは全然別の話。
わりとしょっちゅうボコボコにされてる。
つらい。マジ大変。
3.勝ち筋が見えたから
実はこれも大事だと思ってる。
ぶっちゃけ「思い」だけじゃなくて、ロジックも当然必要。
だいたいスタートアップや新規事業なんてものは千三つの世界なんだから、自分でもうまくいくと思えないなら、まず成功しないと思う。
そもそも自分で信じてないのに、なぜ自分のキャリアをそこに賭けようとするのか?
だから、自分で考えて、これはうまくいく気がする!と信じられることはとても大事。
といっても、そもそもスタートアップというのはこれからビジネスを始めるわけだから、考えるための材料がほとんどない。
少ない材料でも自分が信じられるレベルのストーリーを描けるか。
まずはこれが第一歩。
次に、面接プロセスを通じて、追加情報を集めて、自分が描いたストーリーが合ってるのか、実現できそうなのか、答え合わせをしていく。これ大事。
40代ならそれなりに経験あるので、このストーリー(仮説)を描けるはずだし、面接を通じてこういう対話をするのが大事。
そもそも面接って一方的なアピールや質疑応答の時間ではなくて、対話の場だからね。
(面接のプロ笑としては、この辺は別の機会にまた書いてみたい)
日本のB2B市場は99%が中小企業で占められている。
この市場は、チャネル、意思決定層の特性、意思決定プロセス、意思決定基準などが、新しいツールの導入に対してハードル高い構造になっていて、グローバルプレーヤーと言えども高いシェアを取るのが難しいマーケットだ。
単純に、日本市場にあったプロダクト仕様じゃないから勝てない、というだけではない(と思う)。
日本の、特に中小企業向けITソリューション市場で、かなり fragmented な状態が長らく続いているのは、これが理由。
逆に、この市場が取れるなら、既存のプレーヤーとは比べものにならないくらいスケールできることになる。
そして、このプロダクトなら、それができるかもしれない。
プロダクトコンセプト(当時はまだ存在してなかったので)を聞いたとき、このあたりのストーリーが自分の頭の中でバーっとつながった。
だから、おそらく周りから見えている以上に、自分としては「勝ちに行く」という感覚だった。
こう書いてみて気づいたけど、事業投資とかと同じような感覚だと思う。
「思い」だけあっても、成功への道筋が見えてなかったら、「自分はビジネスパーソンとして正しい判断をしてるのか?」と自分に問うてみるといいのかも。
ちなみに、フタを開けてみたら、そうそう思ったようにいかない。
もうちょっとスーッと行けると思ったのに、全然そうならない、なんてことは多々ある。
まぁ、ビジネスなんでそういうもんだ。
4.大きなダウンサイドリスクがなかったから
現実的なオハナシとして、これも大事よね。
いくらスタートアップやりたくても、「おk、給料3分の1ね」と言われたら、妻子持ちの40代にはシンドイ。
ていうか、やらない。
起業にしても、昔のように個人資産を保証に入れてね、という世界だったら、こんなに起業家は増えてない。
ダウンサイドリスクは許容できる範囲なのか。
これはちゃんと考えた。
考えてみて、改めて思ったのは、実際には、ほとんどの場合、ダウンサイドなんてないってこと。
だって、死ぬわけじゃない。
失敗しても命まで取られることはないし、飢え死にすることもない。
せいぜい会社が潰れて、その仕事がなくなるだけ。
でも、個人として何もかも失うわけじゃない。
手元にはものすごく貴重な経験が残る。
会社やその仕事がなくなっても、自分が経験したコトは消えない。
むしろ給料をもらいながら、ものすごく貴重な経験をさせてもらった、とも言える。
それがあれば、次の仕事を探すときに「いやー、盛大に失敗しましたが、こんな経験しましてね」とドヤればいいのだ。
自分が面接官だったら、そんな経験した人の話には興味が湧く。
前職に「外資の日本参入がことごとく失敗し、3回会社を畳んだことがある」という人がいた。
心から、その経験はすごいな、と思った。
だって、そんな経験なかなかできない。
そんな大変な経験をしたとしても、その人は今ここで仕事をしている。
つまり、仕事なんていくらでもあるのだ。
もちろん自分の時間を投資することになるから、機会コストは発生する。
ポイントは、自分の時間投資に見合うだけの経験が得られるかどうかだ。
だからこそ、
やらなかったら、あとで後悔しないか?
やり切れるほど、中途半端な思いじゃないか?
自分がその選択を信じられるか?
そういったことが大事になる。
こういう感じだったから、前回書いたような未体験ゾーンの仕事でも、こんな貴重な経験ないよなー、と思いながら、どんどんやれたんだと思う。
このポイントだけは、フタを開けても変わってない。
変化が激しくなればなるほど、モノやハードスキルよりも、時間と経験が何よりも貴重になる。
そういう時代なので、リスクやダウンサイドが気になっちゃう人は、得られる経験という価値(=それが得られないことの機会損失)をあらためて考えてみるといいかもしれない。
5.世の中に自分がやったことの傷痕を残せそうな気がしたから
最後に、これも挙げておきたい。
でも、これはあくまでも5番目だ。
こんな格好いい理由だけで飛び込むなんてコト、オッさんにはできない。
でも、ふっと「あ、このビジネスなら、世の中に自分がやった何かを残せるかもしれない」
そう思えた。
今ここで、この仕事をする意義。
それをどれだけ感じられるか。
オッさんになるにつれ、こういう intrinsic motivation が大事になってくる。
いや、むしろ最近は若い人ほど、この「意義」が感じられないとはたらくことへの意欲が喚起されないようにも思う。
だから、これは私の年齢じゃなくて、大きな時代の流れなのかもしれない。
転職する理由としては5番目だったけれど、大変なことも多い中で、今この仕事を続けている理由としては、これが1番かもしれない。
何かを残せるチャンスがあると思えるなら、今ここで頑張る、という選択をする。
キャリアに限らず、自分の人生をどうするかは、すべて自分の選択によって決まる。
選択するからには、自分なりの基準が必要で、今回の転職について、私の場合はこの5つだったように思う。
このnoteがあなたの役に立たない可能性
これを書いている私ですら次の機会に同じ基準で考えるかはわからないし、ましてやあなたの選択の基準はこれとは全然違うのが当然。
大事なのは、あなたの基準で、あなたなりの選択をすること。
自分で選んだ道だ。後悔はない。つらいことも乗り越えられる。
あなたには、そう思えるような選択をしてほしい。
それは周りの人にもきっと伝わり、応援してくれる人も出てくるから。
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