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読書メモ【A.T.カーニー 業界別経営アジェンダ2024】から、「企業価値創出の論点」をまとめてみました。

はじめに

筆者は現在トラベルテックのスタートアップ「Kabuk Style Inc.」にて、コミュニケーションデザイン周辺に携わっております。

弊社のサービス「HafH」は旅のサブスクという素敵なB to Cビジネスモデルです。そのブランドおよびユーザーとのコミュニケーションに携わる者として、そして一人のビジネスパーソンとして、常に世の中の動向にキャッチアップはしておきたいと考えています。


ということで、戦略コンサルティングの視点で様々なセクター(業界)のトレンドをまとめてくれているA.T.カーニーさんの【A.T.カーニー 業界別経営アジェンダ2024】から、個人的に気になっていた「企業価値創出」についてサマっておきます。


筆者は米国企業への株式投資を細々としてます。日本企業の株式も多少所有している(分散投資)ものの、やはり米国企業に比べると投資リターンは弱い印象です(保有銘柄によりますが)。

日経平均が過去最高の数値に達した後、最近伸び悩んでいる日本株市場。今後どうなるのかを考える際に、話題の「PBR1倍問題」は理解しておきたいなと思っています。



発端は2022年4月の「東京証券取引所の再編」

明確な規律ができたことが事件

それまで、東京証券取引所一部・二部としていた分類を「プライム・スタンダード・グロース」に再編したのが約2年前の2022年4月。

特にプライム上場企業たるもの、日本を代表して世界をリードする企業であるべし。そして国内外投資家の要求水準に合う基準となることを期待され規律が設定されました。

東証プライム上場基準は時価総額100億円(2022年末時点)でしたが、そこに満たない企業もちょいちょい散見されていた中で、証券取引所を仕切る人たちが提言したのが2023年。

PBR1倍というわかりやすいスローガン

「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応等に関するお願いについて」なる提言が出され、それまであまり株主等のステークホルダーを大事にしてこなかった?プライム企業はドキッとします。

「資本コストを上回る資本収益性達成や株主との対話について具体化し各社に実行を促しなさい!」とピシャリと言われてしまいました。つまりきちんと株主価値の最大化を具体的に目指さないといけない状況。

グローバルで成長していく上では外国人投資家の賛同を得ないといけないのは確かに必須ですから。

東証プライム上場企業の現状

2022年7月31日時点で東証プライム上場企業は1,827社。
そのうち、45%の830社がPBR1倍未満とのこと(平均PBR:0.68倍)。
業種では 卸売:80社 化学:75 社 銀行:66社となってます。
※一方PBR1倍以上が多いのは情報通信・サービス・小売業。

結構多いですね。これは騒ぎになるなぁと。

ちなみにアメリカの企業のPBRは日本の企業よりも高い傾向にあります。例えば、2021年の時点でS&P500のPBRは約4.5日経平均のPBRは約1.3というデータがありました。3倍以上 差があるのは見逃せないですね。日本株が割安と言われる理由もわかる気がします。

PBRを分解すると

おさらい:改めてPBRとは

大学院のファイナンスの授業で学んだものの、細かいところを忘れているのが悲しいところですが、、、

PBRとは「株価純資産倍率」のことで、株価が1株当たりの純資産の何倍あるかを示す指標です。

分母の「1株当たり純資産額」は、負債総額を引いた総資産を発行株式数で割ったもので、1株あたり解散価値である。

「1株当たり純資産額(BPS)」は以下の式で表される。
1株当たり総資産額 =(総資産 - 負債総額)÷ 発行済み株式数

・PBRが高い場合は、簿価では表れない無形の価値(技術力やブランド力など)が評価されていることを示す。

・一般にPBR=1が株価の下限と考えられる。PBRが1を割っている場合は、その会社の清算価値より株価総額が下回っていることになる。

・PBRは買収や投資の際に多用される指標であるが、PBRからは利益成長力などを判断しづらく、これだけで判断することはできない。また、総資産額は簿価をベースにしているため、時価との差がある場合には注意が必要である。

グロービス経営大学院 MBA用語集

問題は「当期純利益率」と「売上高総資産回転率」

PBRの因数を分解すると上記の「当期純利益率」と「売上高総資産回転率」という指標が出てきます。この辺は大学院の授業でもやりましたが、筆者もなんとなく知っている程度です。

傾向として、PBRが低い企業は「当期純利益率」と「売上高総資産回転率」が低いとのことです。


当期純利益率
PBR<1の企業:4.1%
PBR>1の企業:6.1%
PBR>2.5の企業:9.4%
※全体平均:5.9%

売上高総資産回転率
PBR<1の企業:0.95%
PBR>1の企業:1.00%
PBR>2.5の企業:1.09%
※全体平均:1.00%


資産の効率性を測る「売上高総資産回転率」

この数値がイケてる会社は、総資産から効率よく売上高を上げているということですが、具体的には何がトリガーなのでしょうか?パッと浮かぶのは負荷になっている固定費(使えてない工場や不採算の子会社や株式)の売却です。資産をスリム化(つまり分母を減らす)して売却益を稼げる事業に投資して、、

ただ、頻繁に使える技ではないですし、何かを切り捨てるわけですから社内の雰囲気もよろしくはないかもしれません。

打ち手の一つはキャッシュコンバージョンサイクル

もう一つ、流動資産(現金など)にテコ入れするという打ち手がありますがここで「キャッシュコンバージョンサイクル(CCC)」という指標が登場します(なんか思い出してきた)。

キャッシュコンバージョンサイクル:
企業が原材料等を仕入れることで債務を負ってから、売上として回収されるまでにどの程度の期間がかかったかを表す指標

本書より

キャッシュコンバージョンサイクル
PBR<1の企業:107日
PBR>1の企業:79日
PBR>2.5の企業:73日
※全体平均:90日

比較すると上記の数値になります。
PBR<1の企業はPBR>1の企業に比べて約1ヶ月余分な時間がかかっていることになります。大きいですね。

まとめ:運転資本の効率化の施策

企業ごとに打ち手は様々ですが、運転資本を効率よくするための施策として、本書に書かれていたのは下記4つでした。

①取引条件の見直し・向上
②運転資本を扱うプロセスの改善
③モニタリング体制の構築
④企業文化の醸成

特に①は長く続いた商慣習を変えることにもなり、特に買い手企業には厳しいなと思います。社内で完結する②③あたりから取り組むことになるのかなと思います(結局①と②はリンクしてますが)。

また、全社一丸となってPBR1倍を目指す文化を作る④も大事かなと思います。皆を長く巻き込むようなビジョナリーワードをCEOから発信していく必要があるのかもしれません。

過去にジョン・F・ケネディが「10年以内に、人類を月に送り込む」と発言し、多くのアメリカ人に目標を植えつけたように。

ちなみに調べると、約40年前の1982年時点では、米国の上場企業の約60%はPBR<1の状態だったそうです。

終身雇用の慣習を薄め、人材の流動化を促し新たな企業を生み出すことで今の強い経済へとシフトしていった米国。

まさに、今の日本に重なっている。。。ということは日本株も今後のために張っといた方が良さそうです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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