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"見えない気持ちをキャッチして言葉にする力:発達障害児と向き合う教育者の体験"

『自分の気持ちをキャッチすることは簡単ではない』と感じることが多いです。通級に来る子供たちと接する前は、自分のことだから難しいとは思っていなかったのですが、実際に子供たちと関わると、彼らの思いや気持ち、主張を聞いても『わからない』という返事が多いです。ただ単に面倒くさいから『わからない』と答えているわけではありません。感情や感覚は見えないものです。赤ちゃんの例を思い浮かべると分かりやすいかもしれません。赤ちゃんは「快」か「不快」かを言葉では表現できません。皮膚感覚や内臓感覚から脳に信号が伝わり、泣いたりして表現するのです。愛着が育まれたり、親が声をかけることで本能的に感じる見えない感覚や感情を言葉と統合し、表現や伝達が可能になると考えられます。しかし、養育態度や個人の特性などの要因で、この学習がうまく進まず、見えないものを言葉にする力が身につかないまま成長しているケースも考えられます。その結果、『わからない』という返事が多発するのではないかと感じています。

最近、私の担当している生徒の中で『わからない』という回答が減ってきました。彼らが自分の気持ちや思いを言葉にして伝えてくれるようになったのです。例えば、得点を競うゲームをした時に『悔しい。もう一度していいですか?』と発言してくれたりするようになりました。今までは、すぐに諦めて何も言わずにやめてしまうことが多かったです。しかし、『悔しい』と口にできたことで、その悔しさを「もう一度していいですか?」と再チャレンジのエネルギーに向かわせることができたのです。生徒が思うような得点を取れなかった時にコミュニケーションのやり取りが深まりました。この変化には3つの要因があります。まず、私と生徒との関係性が構築されたことです。彼らが私に何を言っても自分に危害が加わらないと感じてくれたため、率直に語れるようになったのかもしれません。次に、経験の積み重ねによって気持ちをキャッチする力が向上したことです。そして、アンガーマネジメントの方法を活用して現在の気持ちを言葉や数値で可視化するワークを実施したことです。このアンガーマネジメントを取り入れた気持ちの可視化が、言葉による表現において大きな要素となったように思われます。また、選択肢を用意して生徒が選ぶようにすることで、回答が難しい生徒にも対応できました。さらに、気持ちを数値化する際には似顔絵が数値の横に表示され、怒り度が表されるようにしました。似顔絵によるイメージがしやすかったこともあります。気持ちを言葉にする準備を進める中で、言葉と気持ちの統合が進み、表現力も向上していくのかもしれません。他人の気持ちはよく見えますが、私自身も辛い時には感情を押し込めてしまい、感じないようにしていることもあります。自分の気持ちをキャッチして言葉にすることは、発達障害児だけでなく、多くの人にとって必要なスキルかもしれません。自身の内面と向き合い、気持ちをキャッチする練習を積み重ねることで、他人の気持ちを理解する能力も向上するかもしれません。ぜひ、自己探求を進めてみてください。」

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