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【読書録41】致知 2022年5月号 「挑戦と創造」感想

総リード 挑戦と創造

 
 致知発行人・藤尾秀昭氏による総リード。
最初に森信三師から言われたという言葉を紹介する。

「人間は進歩か退歩かいずれかであって、その中間はない。現状維持と思うのは、実は退歩している証拠である」

 そうなのだ。人間は変わり続けなければならないのだ。居心地の良さを感じるようになったら危険。新たなことへの挑戦を続けなければならない。

 また落語家・三遊亭歌之介(現・園歌)さんの話を紹介する。
この話が印象深い。

 真打ち昇進が林家こぶ平さんと同じになり、マスコミの取材がこぶ平さんと集中し、しょげて浮かぬ様子の、歌之介さんに対する、ジュポン化粧品の故養田実社長の言葉である。

 養田氏は、歌之助さんに「ウサギとカメの童話で、ウサギがカメに負けた理由」を尋ねてこう言う。

「カメにとって相手はウサギでもライオンでもよかったはずだ。なぜならカメは一度も相手を見ていない。カメは旗の立っている頂上、つまり人生の目標だけを見つめて歩き続けた。つまり人生の目標だけを見つめて歩き続けた。一方のウサギはカメのことばかり気にして、大切な人生の目標を一度も考えることをしなかった。君の人生の目標はこぶ平君だけではないはずだ。賢いカメになって歩き続けなさい、」

「どんな急な坂道があっても、止まってはだめ。苦しい時には、ああ、なんと有り難い坂道なんだ、この坂道は俺を鍛えてくれていると感謝しなさい。有り難いというのは難が有るから有り難いんだよ」

 どうしても他人と自分を比べてしまう自分がいる。ちゃんと目標を持っていれば、自分を持っていれば、そのような事はなくなる。

そして藤尾氏は、巻頭言をこう締める。

私たちもまた生ある限り、先達に学び、情熱をもって、果敢に、挑戦と創造に生きる人生を全うしたい。

本号から2つの記事を取り上げたい。

かくして「良い会社」を創ってきた

 
 東京海上ホールディングス会長の永野毅氏へのインタビュー記事。
永野氏は、震災後の2011年7月に海外事業担当の役員になった時に

「To be a Good Company」

という理念を打ち立てた。そして、その後、グループ全体の社長就任時にこれを全社員に理念として打ち出す。

 永野氏が、「To Be a Good Company」を理念とするように思い至った背景には、自身の会社人生を通じての経験が裏打ちされている。

 入社以来19年間経験してきた営業では、「正直であれ」ということを学ぶ。優れた営業マンは、商品を売っているのではなく顧客に対して「信用」を売っているという言葉には、共感を覚える。

 また同時に私自身が営業をしていた時にそうであったか?
自社・自分の事ばかり優先していなかったか反省させられる。
 
 その後、商品開発部長時代の生命保険と損害保険の一体型商品開発では、当時の社長であった樋口公啓氏から「これで本当にお客様が安心するのか。僕はこんな会社の利益を優先するような商品をつくれと言った覚えはない。考え直してこい。」という叱責を受け、目を覚まさせられる。

 樋口氏が、繰り返し言っていたという山田方谷の言葉、「義を明らかにして利を計らず」は、その後の永野氏の経営指針にも生きている。

 その後の保険の不払い問題が発生した際に、業界の「請求がない以上は払わなくてよい」という文化に対して以下のように言っている。

本来はどうしたらお客様が困らないかを考えてあげなくてはいけないはずなのに、ノルマや営業予算など自分勝手な理屈が先に立ち、商品をいかに売るかという発想になる。これはカルチャーを変えなければいけないと思いました。

 そして、震災時には、事務方トップとして、現地で指揮を執り、社員の総力を挙げて保険金の支払いを迅速に行う。その中で、保険業の「目的」を改めて自覚する。

 そのような自身の経験をベースにした永野氏の言葉は、心に響く。

強い会社よりも良い会社にしなくてはいけないと強く思いましたね。百年、二百年続くのは結果であって、その「目的」はお客様に安心、安全をもたらす事なんです。そうやってお客様に選ばれる会社になれば、そこに自ずから利益が生まれて再投資ができるようになる。その循環こそが重要だと考えたんです。その循環をつくり出すスタートの原動力は社員一人ひとりのやりがいだと。

営業という仕事は、数字という目標だけで引っ張るととても疲れます。だけど、「何のためにこの仕事をやっているのか」という目的で引っ張ると面白いし、やる気が出てきます。義を追求することが利益に結びついていく。これが私自身の実感でもあるんです。

 目的と手段を混合し、手段を達成することが目的化する。戒めにしたい。

 そのような思いを持ち、トップに立った永野氏は、リーダーとしての心掛けとして「トップの醸し出す雰囲気が大切だ」という。

トップやリーダー自身が自らの言葉で発信し、行動する人でなくてはいけません。トップの熱い思いを込めた言葉ほど人を動かすものはありません。

トップダウンでやらなくてはいけない仕事は一つだと言っています。それは社員のボトムアップの力をリードすることです。

 規模が大きくなるほど、求められるのは社員の主体性であり、目的をしっかり示して自助の精神を持った社員をどれだけ育てられるかがトップの役割という。

 社員一人ひとりが、やりたいことをしっかりと持つ。その力が原点になるという考え方には非常に共感を持った。

 永野氏はこれからの大きな課題として、
「チャレンジと失敗を繰り返すことが当たり前という社風をいかに築きあげていくか」
と言っている。

これは、東京海上のみならず、日本社会全体の課題かもしれない。

ミシュラン三ツ星に選ばれ続ける店はどこが違うのか


 東京・大阪で長年ミシュラン、三ツ星店を切り盛りするオーナーシェフの米田肇氏と岸田周三氏の対談。

  料理人という私にとってなじみのない世界のお二人による対談であり、料理人の世界を垣間見られるという意味でも興味深かったが、超一流のお二人だけに人間としてのあり方や仕事との向き合い方についても考えさせられる。

 15年連続で三ツ星を獲得している「カンテサンス」のオーナーシェフの岸田氏は、修行時代の師匠から、「30歳までに料理長(シェフ)になりなさい」というアドバイスを繰り返し受ける。そのアドバイスから、逆算して目標を設定する。
 30歳でシェフになろうとすると、27歳までにフランスに修行に行く。そうすると26歳までにフランス語を取得する。そのためのお金を・・・と考える。そうすることで
いま何をすべきかが明確になってきて、意識と行動が変わったという。

 その後、なんの当てもないまま渡仏し、ようやく念願のお店に見習い以下の研修生という立場でもぐりこむ。1カ月間の研修生でという立場であったが、信頼を勝ち取り、8カ月目には副料理長を任される。

その経験からの実感が心に響く。

 与えられる仕事は最低限こなすべきことであって、それをどれだけやっても評価に繋がりません。頼まれていないけど、これをやったら皆が助かると思うことを率先する。そういうプラスアルファがあって初めて加点されるんです。

そんな岸田氏は、米田氏から伸びる人の共通点は何かと問われこう答える。

 やっぱり考え続けることだと思います。
思考が止まっちゃうと仕事が作業化してしまい、作業化すると仕事が劣化していくと思うんです。
こうしなさいと言われたことをただやる人は、あまりにも成長が遅すぎる。自分自身で問題を見つけて改善案を考えられる人は、放っておいてもどんどん成長していきます

それに対しての米田氏は、「結局、伸びていくか否かは能動的か受動的か、その差に尽きるのでしょう。」と応じる。

さらに岸田氏はこう続ける。

それともう一つ、日々の忙しさに追われていると、今目の前にある問題を乗り越えることだけに必死になってしまい、自分が何に何になりたいかという大きな夢を忘れてしまいがちです。だから自分の夢を毎日リマインドする必要があると思います。

昨日よりは今日、今日よりは明日へと日々成長することが大事。

 一方、世界最短で三ツ星を獲得した米田氏はサラリーマンから26歳のときに料理人の世界に転じる。専門学校に通うため、6百万円を2年で貯めるなどの凄いエピソードも紹介される。また料理人の世界に入ったのが遅かったため、「人の3倍働こう」という心意気で働く。

 米田氏のお話で心惹かれたのが、HAJIMEを開店したのち、自分の料理とか自分らしさってなんだろうと考え続け、改善改善、1週間すべて店を休んで東京の三ツ星レストランを回って研究するなどの徹底的に試行錯誤する姿勢である。
そして若い人へのアドバイスとして、「何かに挑戦する時、反対されたらゴー」と言う。

歳を取ってくると過去の成功例と失敗例を重ね合わせていろんなことを学んでいくので保守的になりがち。

皆に反対されても、そこにゆるぎない信念があるなら挑戦すべきだと思う。

「もう無理だと思う瞬間は答えが出る一歩手前である」と信じて挑戦し続けていく先に、新しい創造の世界が開けていく。

私も「現状維持は、退歩である。」
そんな意識を持ち続け、歩んでいきたい。

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