東京家族~娘と携帯電話~

 子供に携帯電話を持たせる論争、我が家もその渦中にいた。結論から言うと、持たせることにした。悩みに悩み、持たせることにした理由は習い事を始めたからだ。幼稚園に通っていた頃は習い事の時間もそう長くはなく、習い事側も子供を一人で外に出すことがそもそもなかった。教室まで送り届け、教室で引き渡していた。何かあれば習い事側から私に連絡がきていた。しかし、小学生になると変わって来る。一年生から六年生までを小学生と括る。一人で来て、一人で帰る子も多くいる。ついこの前まで幼稚園生だった娘も同じように扱われる。勿論、送り迎えはするが念の為にという理由で携帯電話を持たせた。はじめはGPSを持たせようかと思ったが、防犯ブザーとGPSが付いている子ども用携帯があるのだと知り、携帯電話を持たせることにした。一度持たせると、無くてはならないものになり何かと便利に使っている。
 この「便利」が我が家にひと騒動を起こした。私が思う便利というのは、一人で出掛ける際の安全確認の手段としての便利だと言う。しかし、娘にはその「便利」は働いたようだ。それはアイスの調達である。子ども用携帯電話はは登録した相手のみに発着信ができる。なので娘は私と夫のみ連絡ができる。この連絡にはメールも含まれる。普段はその辺にほっぽり投げられている携帯電話だったので、油断をしていた。問題が起きる前には小さな前兆がいくつも散らばっている。先ずは夫がコンビニに頻繁に寄って帰って来るようになった。夫はコンビニ好きで以前からも寄ってはいたが、その頻度が明らかに多くなった。次に、購入品目が変わってきた。以前はビールやつまみ、煙草など自分の趣向の物が大半だった。しかし、近頃はアイスだったりグミだったりと様子がおかしい。初めの内はただのお土産程度だと気にしなかったが、アイスの種類がやたら娘寄りになり、終いには若者の間で流行っているグミなども買ってくるようになった。既に若者ではない夫が流行りのグミを知るはずもない。不思議に思い夫に聞くと、口を閉じた。しょうもないことだとすぐに分かった。
早速、二人を呼び尋問を開始した。被告人Aは黙秘を貫き、被告人Bは半笑いを浮かべた。長年の経験からどうやら首謀者は被告人Bだと見えた。疑惑を確固たる証拠で固め言い逃れできないよにしなければならない。

「おい、娘よ。パパにアイスやガムを買ってくるように言ったの?」
「たまにね。」
「たまにってどれくらいの頻度で?」
「夜だけだよ。」
「それは毎日と言うんだよ。」
「でも、パパが買ってくるから。」

次に私は被告人Aに質問をした。

「なんで毎日買ってくるの?」
「だって、メールが来るから。」
「メール?」

私は急いで娘の携帯を確認してみた。携帯電話というだけあって、通話に目が取られしまいがちだが、それは抜け目だった。連絡手段にはメールという手もある。メールを確認ししてみた。

 パパ、なんじにかえってくるの?

 もうすこししたらかえるよ。どうしたの?

 かえりに、アイスかってきて。

 いいよ。なにがいい?

 チョコレートのやつで、ふたつにわれるやつ

かんじがないとよみにくいやりとりがまいばんくりひろげられていた。


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