東京家族~娘と携帯電話~

 子どもというのは本当に周りをよく見ている。特に親の言動は見るだけでなく、真似までしている。この真似も家庭内なら笑いごととして扱えるが、親から離れた場所、つまり幼稚園や学校でされると大変だ。目のあたりにしていない分、周りがどのように受け取っているかも分からないし、又聞きの要領で別の子どもが各々の家庭で真似をしていたら、大元である我が家に対してどう思っているのかと考えるだけで恐ろしい。うかうか笑顔で挨拶を交わす事すらままならない。
 他にも私としては無意識な行動であっても娘の目には確実に映っている。何気なくつけているテレビ一つとってみてもそうだ。私の好きな俳優がテレビに出ていると、娘は私を呼んで教えてくれる。教えたはずもないのになぜか知っている。娘に聞くと「ママがいつも見ているから。」と返ってきた。きっと無意識に私の中の関心が表に現れ、それを娘が見て「母の関心事」として認知しているのかもしれない。
 親や友だちなどと言った身近な人たちの事だけではなく、本人の中での興味にも「関心事」として反応している。面白かったことや悲しかったこと、怖かったことなどもよく覚えている。そして子どもの中で様々な感情や体験などとくっつき自分のものとして受け入れていくのかもしれない。
 その日、我が家は外食をする予定だった。仕事終わりの夫と外で待ち合わせをしていたので、到着時間を知らせようと夫へ連絡を入れることにした。私はその連絡を娘にお願いした。娘は自分の携帯電話を取り出し夫に電話をかけた。

 「もしもし、私、私。急にお金が必要になって百万円欲しいんだけど。」

本当に子どもとは様々なものを見て、聞いて、吸収している。気を付けねば。

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