デザイン留学以後から最近の活動の綴り書き:ケアへ、エコロジーへ、宗教へ

2022年もあっという間に終わり、2023年も気付けば4/365が過ぎた。正月が終われば、また怒涛の日々がうねりをあげ、2023年もあっという間に時間の渦に飲みこまれそうだ。

おもえば、2020年の秋に、フィンランドから帰国してからの2年ちょっと、息をつく間もなく、駆け抜けてきた感覚がある。フィンランドの湖畔をぼーっと散歩し、何もしないで過ごしていた時間は夢のよう。あの湖や森の光景は、いまでもふと心に浮かぶたびに、抱きしめたくなる。

帰国しての2年間、一般社団法人 公共とデザインおよびDeep Care Labの立ち上げと活動の基盤づくりに勤しんできた。ぐちゃっと、どんなことをしているかといえば、

・自治体のイノベーションラボの立ち上げ伴走
・産むを問い直すリサーチ&制作&展示: 3月に展示をやるよ
・ソーシャルイノベーションと民主主義にまつわる本の執筆: 今年でる予定
・西陣のありうる2040年の未来を地域企業・学生と描くプロジェクト
・微生物多様性が当たり前になった未来のSFプロトタイピング
・祖先/未来世代/非人間/人工物..をふくむ相互ケアの概念研究
・地域の風土リサーチと執筆
・気候危機時代のウェルビーイングを探求するプログラム開発
・ケア/アート/まなびを統合したお寺のフィロソフィづくり

といったように、産むことから死生観まで、微生物から神仏まで、とっても広い興味のもとで好き勝手やっている。詳しく知りたい方は、以下のnoteをみてください。そして、ぜひこんなこと一緒にやろう!と声をかけてくれたらうれしい限りです。

まだまだどちらかの会社だけでは、食べることができないし、合算しても経済的にはぎりぎりの生活だから、もう一歩、売上もあげていきたい。
業務としては、ワークショップやプログラム設計、リサーチとライティング、共創プロセスづくり、コンセプティングなどだが、扱う領域は自分が探求したいものばかりだ。昨年は、ついに30代にも突入した。今だに、学生と間違われることもあるけれど、いい歳になった。

20代のデザインとの出逢いから、別れ?まで

20代は、ぼくにとってデザインに出逢い、まなびはじめ、大袈裟ではなく世界の観方が変わった。そんな感覚があった。20代を振り返れば、明らかに「デザイン」を中核に据えた時間の過ごし方だったといえる。一方で、そんなデザインそのものにも、そこからまなざす社会にも、絶望し、苦しくなり、2018年から2年のあいだフィンランドに逃避した。そんな逃避行も終え、30代に突入し、法人を2つ立ち上げ、確実に自分のフィールドもステージも変わったのか、とふと思い立ち、ひさしぶりに綴り書いてみる。

今の活動をみて、ぼくのことをデザイナーだと考えるひとは少ないかもしれないし、ぼく自身、デザインに対してのこだわりはない。公共とデザインでは、法人名にうっかりデザインを冠している都合もあって、デザイナーぶる必要が出てくることもあるが、もはやアイデンティティを同化させることはなくなった。もちろん、デザインの可能性も捨ててはいないし、自分の実務や思考の様式の基礎には未だ深くデザインの杭が打ち込まれていることは確実だが。ぼくは、これからも都合よくデザインについて吹聴することもあると思う。しかし、自分のこころに対して響いてくるものはない。そのあたりはこの辺に記事をしたためている。

今、ぼくの心にあるものはなんなのだろう。キーワードをあげれば、ケア、エコロジー、政治、宗教とアニミズム、芸術、死。この辺り。本はその時々のその人の写鏡にもなるけれど、2022年に読んでよかった本の一部は、見事にこれらをまたがっている。

こんな本を読んだよ2022
・宮城 泰年, 田中 利典, 内山 節『修験道という生き方
・村田沙耶香『信仰
・ケア・コレクティヴ『ケア宣言: 相互依存の政治へ
・東畑開人『野の医者は笑う
・角幡唯介『狩りの思考法
・藤原新也『祈り
・鷲田清一『素手のふるまい
・エマヌエーレ・コッチャ『植物の生の哲学

これらを、ひとことで言い表すことはできない。だからきっとDeep Careと概念を打ち立てて、活動をしているのだろう。ぼくのなかでは、営んでいるふたつの法人は独立しておらず、関心としてはつながっている。

祖先・未来世代・非人間(自然や生きものにモノetc)・神仏…これらの遠い他者も身近な人々もふくんだ、いのちの編み目のなかで生きる実感を得ながら、わたしとしての生を全うすること。それが一貫しているテーマだ。30代はこれをいろんなかたちで追い求めたい。

だから、法人活動も当然大切だし、もっと売上もあげないと厳しいし、いろいろあるのだけど、それ以上に"生"の全体を大切にしたい。ぼくは「よく仕事を遊びにしよう」「仕事を趣味にしよう」的な話にあまり乗っかれない。もちろん遊び的・趣味的にはなり得るけど、資本の論理を微塵も介さない逃げ場のような時空間のほうが、ぼくは自分が取りたいバランスがうまく取れるのだろうな。

仏をつくる、行に勤しむ、宗教的な想像力を感じられる身体を

昨年、自社のプロジェクトで実施したWeのがっこうのなかで行ったDeep Care Challengeというものがある。対話・ワークショップを経たあとに、2週間ほど各々が自分なりの暮らしにおけるDeep Care (祖先・未来世代・非人間・神仏をふくむ相互ケア)の実践をするミニチャレンジだ。実践内容はなんでもいい。ぼくは、一日一仏と称して、まいにち粘土で仏さまをつくることをはじめた。仏や神、といった論理を超えた存在に生かされている感覚をもっと感じたかった。

昨年のはじめに岐阜のおじいちゃんの家にいったとき、おじいちゃんが趣味で彫っていた円空仏を目の当たりにして感動したことはひとつのきっかけだ。円空仏を彫っていることは以前から知っていた。けれどこれまでは、そうなんだ、くらいのリアクションだった。ものごととの出逢いや感動とは、つねに訪れるものではないらしい。出逢うとは、じぶんのこころの状態ふくめた縁起的なネットワークの賜物だな、と思った。

おじいちゃんの円空仏たち

それから昨年の頭には円空仏を3つほど、小さな木片をつかって彫ったが、どうにも続かなかった。それをふまえての一日一仏。粘土のほうがしっくりきたのだろう。一日も休まないほどにストイックにはやっていないが、今だに手もからだも動き続ける。部屋には自然と、仏さまがふえていく。その仏さまのまなざしを感じ、相対すると安らぐと同時に背筋がのびる。

小さなことだし、修行とよべるほどの修行ではないが、とにかく手を動かし続けて何がその先に生まれるのかを感じてみたい。いま、20体ほどの仏さまがいる。今年には200体ほどには到達したい。もっと神仏についても学ばないといけない。

一日一仏でつくる仏さまたち

また、昨年は修験道本山派の聖護院で、護摩焚きに参拝をしにいった。お不動さんの縁日である28日に毎月おこなわれている。パチパチと燃えさかる大炎から、煙があがり天井を燻す。念仏が唱えられ、法螺貝と太鼓が時空をゆがませる。初めてみた時、自然と涙がこぼれ落ちた。なぜかわからない。ただこの道にもっと進まなければいけない、とお告げをもらった気がした。不思議な体験だった。そんなこともあって、今年は講習会に顔をだし、修験の道にふみだし始めたい。

生と死のエネルギーの生々しい実感への欲望

その他に、狩猟免許を取りたいとおもう。ほんとうは昨年にやりたかったけど、できなかった。というか気づいたら試験が終わっていた。昨年から畑をやっている。畑でも生命は明滅する。撒いても芽を出さない種はそのまま土の養分になり、芽生えて成長した野菜たちはぼくの一部になったり、枯れてまた土を豊かにする。まさに明滅、という表現が適しているな、と畑をやって感じている。

枯れた野菜に死を見出すことはあるが、自分自身をつらぬき、突きつけるようなおどろおどろしさは今一歩、感じることができていない。以前、鶏の解体体験にいったときに、相対した死んだ鹿が放つ強大なエネルギーのようなもののことだ。

これはエネルギーとしか言いようがないとおもう。まだ自分のなかでも言葉にできていないし、それがなんなのか、なぜ死を匂わせる強烈さに惹かれるのかもわからない。とにかく身体が求めているとしかいえない。藤原新也の写真に惹かれたのもそういう理由なのだと思う。このあたりの話は今、Inquireさんでの連載でまたエッセイ的に書くことで深めてみたい。

Deep Careの話をするときに、環境問題やエコロジーを紐づけることも多い。ただ、死者や死そのものはこぼれ落ちてしまいがち。そして間違いなく自分自身がいま希求するものは、死のエネルギーと宗教にある。だから狩猟免許をとって、少しでもいのちを自分で殺めて喰らうような生活を取り入れてみたいと思うし、山に入って生死を繰り返すような修験の道に惹かれてしまう。

まとまらない文章だけど、デザイン研究をしていたフィンランド留学を終えてからの2年。活動を立ち上げたことで、自分の動きの方向性はなんだかどんどん横道に逸れているような気もするが、これがいまの自分に必要な道なんだと思う。なんだか、留学から今の活動への変遷をうまく書いてみようとおもったけど、書けなかった。今惹かれるものに適切なことばを添えられるほどには、いまのぼくにまだその実践の堆積が足りていない。他ではなくぼく自身がいま立つ場所がどこかを記し直すために書いた。

本年もどうぞよろしくおねがいします。
ー2023.01.05 朝、京都の自宅にて

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