詩「カラスが鳴くから帰りましょ」


気づいたときには傷だらけだった大事なものを抱いたままあなたは笑っていたから、つい幸せにしてあげたいと思ってしまった。それは温かくて柔らかな手触りだったけれど、結局のところ傷を負わせた何かとよく似たものでしかなかった。助けるつもりで檻に入れた。約束のつもりで強制した。愛のつもりで孤独になった。気づいたときにはもっと傷だらけになったものが転がって。拾い上げるはずの手も擦り切れて。それは戻れない失敗の顔をしていたけれど、実のところ温かくて柔らかな場所への帰り道だった。帰る場所は来た場所で、幸せにしてあげたいと思うより、自分で幸せになれるよって
信じていた。



文字でもものづくりでも、どこか通じ合える人と出会いたくて表現をしているんだと思います。何か感じてくださったならとてもうれしいです。