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キャバクラとカウンセリング,話の聞き方の違いと基本機能の違い

     キャバクラにカウンセラーがいたら,
楽しくお酒,飲めないよ?

こんにちは。豊かに学び豊かに暮らす【フリーランス心理士×SNS起業】臨床心理士/公認心理師/精神保健福祉士のまりぃです。

まだ若輩心理職で、【公認心理師試験・臨床心理士試験対策/心理学部生専用オンライン個別指導塾】や,【公認心理師・他専門職のための心理査定/カウンセリングはじめの一歩講座】を運営しています。
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今日は,私のお友達の話をしてみようと思います。

10年ぶりに再会した友人が元キャバ嬢になっていた

時々書いているように,私は元精神科の患者です。
宗教2世だったから,というと安直ですが,「人生を送る」だけのことが私には困難で,大学を中退してからしばらく病んでおりました。

著書のプロフィールにその流れがサラッと書いてあります。本文ではなく「著者プロフィールで泣いた」という感想をこんなにたくさんいただく書籍が他にあるだろうか

その友人たちとは,最も病んでいた時期に,インターネット上で好きなファッションについて話すうちに仲良くなりました。

何回か,直接も会っていましたが,インターネットの変遷とともに,なんとなくやりとりも減り,いつの間にか会わなくなって10年ほど経っていた,最近。

ちょっとしたきっかけで,その仲間のグループLINEが動き出し,「会おうよ」ということになりました。

生き延びた「生きづらさの集合体」の再会

さて,当時の仲間ということは,当時生きづらかった仲間でもあります。

私はあれから,通信制大学に行き,大学院に行き,臨床心理士になりました。
一人は当時大学を中退して私と似たような状態から会社勤めを始め,現在かなりフレックスな働き方で生きています。
一人は超高学歴なんですが,立派な就職先を辞めて現在在宅ワーカー。
そして,一人は,当時のお仕事を辞めて,キャバ嬢になって,今はそれも辞めたとのこと。
もう一人はこの日欠席でした。

全員,生きづらそうでしょう?^ ^そうなんです,でも私たち,生き延びて大人になったんですよね。再会し,お互いの近況を,それはもうけたたましくおしゃべりしたんです。

元キャバ嬢と臨床心理士と,話し手がテーブルについたら

で,最初に集合したのはこのうち3人でした。
メンバーは,元キャバ嬢のP,おしゃべりな末っ子気質の友人Y,そして私。
たまたまYの向かいに私とPが座る形になりました。

昼食をとりながら,たくさん話すY。
なぜか手を止めて,両手をテーブルの上に置き,姿勢よく話を聞くP。
やはり手を止めて,じっとYの顔や話す様子を観察しながら,話を聞く私。

途中で気づいて,おかしくなりました。
「友達と食事してるのに,私たち食べる手を止めて聴いているよ」
私がいうとPも「あっ」と言って笑いました。

「二人とも食べてね」とYに促され私は食べ始めますが,Pはなかなか姿勢が崩れません。
そこで気づいたんですね。
私たちは二人とも職業的聴き方をしていたと。

キャバ嬢の聞き方

キャバ嬢時代の友人。写真使っていいよ!と送ってくれました。

わたしが「ねえ,それってキャバ嬢の聞き方?」と聞くと,Pは「そう!」と答えてキャバクラの先輩に教わって実践していたことを教えてくれました。

興味がないものでも,興味深そうに聞く。なんなら褒める。
必ず手は膝の上において話を聞く。食事中は机の上に置く。右手が下。
グラスに空きがないか目を配る。お客様の次の動きを予測して,心地よく過ごせるよう配慮する。

この話から考えたのは,キャバクラ嬢たちは,私たちの用語で言うところの「投げ込まれる場所」として機能しつつ,もてなす存在であるようだ,ということです。

投げ込まれる,と言うのは,話し手の気持ちや,今話し手の心に溢れていることを,人に話すことで自分の心の中から出す,ということです。
ですから,キャバ嬢は,話し手が気持ちを投げ込みやすいように,自分のよく知らないものに関する話題でも,楽しそうに聴き,話にのっていきます。

そして「うんうんうん」と頻繁に相槌を打ったり,P自身も知っている話題だったら「それってこうだよね」「こういうところが私は好き」と自分から共通の話題を提供し,相手がそれについて楽しく話せるように場をセッティングしていく。
 そういえば,他の知人ですが,18禁専用チャット嬢をしている方も話し手が気持ちよく話せるように頻繁に合いの手を入れることを思い出しました。

また,彼女たちはもてなす存在なので,客より自分を一段下に置くような在り方をしています。それは座り方,幼い頃に躾けられる「手はお膝!」を守っていることにも表れていると感じました。

それから,食事中「手は机の上におく」というのも,お客様から見える位置に手を置くことで,危害を加えない存在であることを視覚的にアピールしているのではないかと思います。右手を下,というのも昔で言う刀を抜く方の手を下にして左手で押さえることで同じく危害を加えないという意味があるのかな?と思ったり……しましたが,友人曰く「お客様に拳はふるいません」という意味だそうです。

だから,彼女はYに「食べて」と言われても姿勢が崩れません。聞く時に職業病スイッチが入ると,もてなす体勢に入ってしまい無意識のうちに自分が食べながら聞くのは失礼だと思うからでしょう。

もちろん,高級クラブなどにいくと経済や国際情勢の話などもあり,また違った機能があるのでしょうけれども,友人の勤めていたキャバククラではそのような機能があったようでした。

(精神分析をベースアプローチとする)臨床心理士の聞き方

一方の私は,Pの隣で,やはり食事の手を止めてYの話を聞いていましたが,相槌はほとんどうちません。

じっとYを見つめ,ときおり「うーん」とか「そうだねぇ」と,深いため息のような相槌を入れる。

何かこちらから振る時は,Yの話を整理したり,「こういうことかな?」とYの語りの奥にある気持ちについて言及する。

ときに沈黙が訪れたとしても,それを破らず,なんなら沈黙の意味について考えている。

まったくもってキャバ嬢とは基本スタンスが違います。

なぜなら私たちは,話し手と対等な存在であり,時に話し手が後ろに置いてきた「考える機能」として存在するため,話し手がたとえ心地よく過ごせていなくても,そのこと自体に意味を見出していくからです。

だから,カウンセリング中であれば,話し手が悲観的なことを言っても「そんなことないよ」と慰めるのではなく,その悲しさに寄り添っていき,なぜそれが悲しいと感じるのかについて考えていきます。

そして,基本スタンスが対等な存在ですから,職業スイッチの入りかけていた私でも,Yに「食べてね」と言われると,すんなり食べることを再開できたわけです。

気持ちよく話したいならキャバクラへ,考えを深めたいならカウンセリングへ

以前,ネットで「キャバクラにカウンセラーを置けばいい」と書いている人がいらしたのですが,このようにキャバ嬢とカウンセラーでは基本的機能が異なります。

カウンセラーは,相談者と一緒にその心の奥へ潜っていく作業をするので,時にそれは相談者にとって嫌なことを思い起こす作業にもなります。
そのため,カウンセリングは決して「心地よいだけの場所」ではありません。

しかし,私たちが一緒に潜っていきますから,心細い思いはさせませんし,一人では潜れないような深みに達することもできます。
このため,基本的には秘密をしっかり守れる,そして安心して危険な深みに潜れる個室で話すことになります。

病気を治すための手術をするには痛みも伴うけれど,それをしないと病が良くならないのと同じですね。

一方,お酒を飲む社交場は,楽しいところです。楽しい話も悲しい話も興味深く聞いてもらえるし,慰めてももらえます。だからスッキリして帰ることができるし,場はある程度オープンなわけです。

精神分析用語を使うなら,キャバクラはPSポジションで楽しむところ,カウンセリングはDポジションで考えるところ。

だから,もしキャバクラにカウンセラーを配置してしまったら,嫌な気持ちを排泄してすっきりしたくて来ているのに,逆にその気持ちに向き合うことになり,楽しくなくなると思います。

もちろん,どっちが良いとかどっちが上とかではなく,ただ機能が違う場所であるだけ,ただ専門性が違う役割であるだけです。
このことは明記しておきたいと思います。

たまたま,用途の違う「聴き手二人」が隣に座って,同じ人の話を聞く,という面白い場面でしたが,さて,同時に話を聞かれていたYはどんな気分だったのでしょうか?笑

もちろんこのあと,私たちは全員仕事スイッチを切って,友人として食事をし,会話を楽しみました。

読んでいただき,ありがとうございました。

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