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書店は難しい問題の答えが難しい件

本屋はビジネスとして難しい、田舎ではとくに、書店数は年々減ってる、ネットで買える時代に。耳がタコ、略して耳タコ。たった一年しかやっていない私でも耳タコなんだから、書店の皆さんこれまでどれだけ言われてきているんだろう。

私は本屋以外にも宿をやったり会計周りで法人のお客さんと仕事をしたりしている。
それを言うと納得したように、ああだからできるのね(なーんだ)という反応を受けることがある。それにもだいぶ敏感になってしまった。

皆さんの言うとおり、この不況続きの日本において、ことごとくデータ化される昨今において、生活必需品ではない、紙の本を売る商売がそう簡単でないことは明白。
だからこそ、どうやったら書店が残っていけるか、苦しくなく、でもいいものを続けるためにはどんな手法があるのか、ない頭を捻りに捻ったりして。
誰に頼まれたわけでもなく勝手にやっている。なので何が起きても引き受ける覚悟でやっている。というか覚悟も何も、勝手にやっている。
お気楽に見えるかもしれない。
でもなんの苦労もないということはない。

1年目は本屋準備のために既存の仕事をセーブして、私財全部つぎ込んで、借金もして、それでも足りずに貯金額が16,000円になったこともあった。ドキドキした。スーパーに行ったら一番大きくて一番安い野菜を2つだけ買っていた。ゲームだと思わないとやっていられず、今月どれだけ節約できるか、節約ゲームだ、と言い聞かせていた。
2カ月先の借入の返済の目処が立たなくなった。怖くて眠れなくなった。来る日も来る日も計算した。でも結果は変わらなかった。すんでのところで仕事の依頼が来て、首の皮一枚繋がった。

オープンする前に、他の本屋さんのイベントで聞いた続ける秘訣、それは「開けると言った日にちゃんと開け続けること」。営業日は営業時間は必ず開ける。それがお客さんとの最初のコミュニケーションだと。
お客さんに約束したことは守る。それだけは絶対にやるんだと、お店を開け続けた。イベント出店でどうしても不在になる日も苦しいけどできるだけアルバイトの方に来てもらった。
せっかく来たいと思ってくれたのに、開いていないお店には絶対にしたくなかった。
週休0日。疲労か体調不良でぶっ倒れるまで休まない。

それもこれも、どうやったら本屋が、それもいい形で、いい本屋と自分が思えるものが残せるだろうかと、やれるだけやったみたら結果的にそうなってしまった。

出版ビジネスは構造的に難ありとよく目にする。
会社員時代に出版事業の立ち上げに携わったが、その時初めて出版の仕組みを知って、確かに驚いた。知る限り、他のどの業界もそのような仕組みでは成り立っていない。
返本制度、うず高く積まれる新刊、初速が命、3カ月で鈍化する売上チャート、大量の断裁。
悪い論調で書かれることもあるけど、出版関係者みんなが生きていくために、編み出されたものだと今は思っている。
その方々が出版を書店を残してくれたから、今こうやって書店としてなんとかやっていけている。

その構造自体は確かにややいびつに見える。ただ抜本的かつ速やかに変えることは難しそうだ。

では自分にできることは何かと考えた。

スモールビジネスの組み合わせでやってみることにした。
ビジネス的にはセオリーと真逆だけど、参入障壁をできるだけ低くしたい。
同じような事業をやりたい人には聞かれたことはなんでも隠さずにお伝えしている。
どんどん参入できるように。
どんどん参入して、ついに私がいらなくなったら、喜んでいつでも撤退する。

資金面、税金面、経営面でのサポートが必要なら、聞いてくれたら何時間でも答える。

それが本屋や、小さくて、でも大切な事業を守り継続することに繋がるのであれば、いくらでもやりたい。その価値があると思うから。

間違っていることもあるかもしれない。でも正解を置きにいくくらいなら実践して失敗したい。

少し前にXで、「朝起きて、どこにいるか分からずぼーっと天井を眺めて、そうだ徳島で倉庫を改修して本屋を、すごいことしてるなぁ私」と時々思う、というようなことを書いた。

これがまったく逆向きに起こることもある。
起きて、ぼーっと、あ、まだあと何百万も借金あるけど、あの人もあの人も、ここでそんなことやれないよと言ってた。できないかもしれない、いやきっとできない。だって私実はそんなにすごい人じゃない。そうだった、何を大見栄きって……

と怖くて跳ね起きる日もある。

そんなとき、天井から雨漏りがしてきて、本当に心が折れかけた。

「本屋は難しいでしょう」、「出版不況が続いているから」、「今は動画コンテンツが」、「ネットで買えるし」、「他の仕事してるからやれるのね」、「本業は別なんだ」、「趣味の延長線上って感じ?」、etc

カジュアルな挨拶みたいな会話なのは分かる。

でも本当のことをいうと、それらの言葉に毎度そっと小さく傷ついている。

傷つくから言わないでね、ってことではない。
そもそも私の好きでやっていることなので、何を言われたとしてもしょうがない。
悪意はなく、ふと出てきた会話の糸口みたいなものでしかない。
だから怒れない。
会話から逃げてしまう。

それなら知ってもらう努力をした方がいいかなと思い、これを書いている。

総じて、本当にやってよかったと日々思う。
単独でやれているわけでは決してなくて、出版関係の方々、他の書店の方々、お客さん、みんなが協力してくれるから、余計にそう思う。

本屋になって、出版や別の本屋さんに会う機会が増えた。
会う人会う人みんなかっこいいんだ。
かっこいい大人ばかり。
こんな業界他にないと思う。

難しい、で終わらせたくない。
難しくない、こうすればやれるんだってことを証明したい。
書店が難しいと言われて、へらへらしてそうなんですよぉと言いたくない。

まだまだ、試行錯誤の日々は続く。



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