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靴ガチ勢のスポーツメーカー社員が創る靴〜その1〜

これまでさらっと靴作りの工程を説明する記事を書いてきましたが、今度は実際に自分で作ってみる記事を書いていきます。
靴作りの工程が気になる方は過去の記事をさらっと覗いてみてください。

靴ガチ勢たる由縁は中学生の頃からスポーツシューズを開発することを目標に十六年間勉強を進めてきて、靴の開発に必要とされる知識を学べる機械工学科に進学し、靴教室に通ったり国内と海外の靴メーカーでインターンしたり、歩行解析の研究室行ったりスポーツメーカーに就職したりとやたらと時間を割いてきたからです。

1. 着想

まずはどんな靴を作るのかを考えていきます。

ぼくは昔サッカーをやっていてそこでサッカーシューズと出会ったのが靴バカへの入り口でした。サッカーシューズの機能的でありかつシュッとしたデザインが子供心にスーパーカーのように映りました。

そこでその原体験に振り返り、流線的でスポーティーであるという要素を組み込みたいと思います。また学生時代や仕事で使用する3Dプリンティングも組み込んでいきたいです。

しかし、それだけだとただのスポーツシューズになってしまい面白くないので何か別の要素を噛み合わせたいと思いました。

ここでking gnuの白日とガウディの建築を参考にしたいと考えました。

白日って複雑なメロディーの曲で何か他にはない雰囲気があります。けれど何もかもが新しいわけではなくてあくまで既存の音楽の要素をつなぎ合わせた結果がああなっているんだと感じました。

そういうたくさんの異なる要素をセンスよく繋いで新しい何かを生み出す姿勢を真似したいと思いました。

一方、ガウディの建築は生物のモチーフを取り込んでいて人工物だけどどこか温かみのある不思議な感じがします。

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カサ・バトリョ

もともと靴は人の足を元に作るので生物的な表情を持ち合わせています。なのでガウディ的なアプローチは相性がいいだろうと感じました。

そして色々考えてやはり靴は服に合わせてなんぼであり、クラシックな要素が合った方がいいだろうと思いスポーティ✖️生物的✖️クラシックをテーマとすることにしました。

クラシックかつスポーティな雰囲気の靴としてローファーが良いのでは無いかと思い、ローファーを原型として靴作りを進めていきます。

2.木型製作

靴の原型となる木型をまず作っていきます。普通ならば紙に靴の絵をスケッチしたりするところから始まりますが、ぼくは絵を描く時は描く前に考えるのではなく描きながら考えるタイプなので今回もとりあえず木型を作るところからはじめます。

流線的であることがキーワードなのでシェイプを絞った流線的な木型にしていきたいと思います。

ここで以前インターンシップ をしていた靴の会社で特別にスキャナと専用のCADを使わせてもらってPC上で木型製作をさせていただけることになったので今風にデータドリブンに木型を作りました。

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ぼくの右足をスキャンしたデータ

足長、足幅や甲の高さ踵の幅なんかもデータから分かります。典型的な幅広甲高の足です。

このデータを元にローファー用の木型を作りました。

ローファーは紐がないためその分甲周りのフィッティングをきつめにして靴が脱げないようにします。紐でごまかせない分、モロに木型の性能が反映されてしまう難しい靴であります。

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こんな感じで流線形(なのか?)の絞った木型をFDM方式の3Dプリンターで作成しました。

FDM というのはフィラメントという樹脂を溶かしながら積層していって物体をプリントする形式のことです。

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FDM方式の3Dプリンター

ここから試作品製作に入っていきます。

3.試作品製作

木型の上にぐるぐるテープを巻きつけてその上にデザイン線を書いていきます。そしてその線に沿ってカッターで切り込みを入れていき型紙を作っていきます。

デザインの着想はしましたが詳細は決まっていなかったのでここで詰めていきます。

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TORTOISE 本革ローファー

ローファーといえばこういうデザインが主流です。ローファーはタンと呼ばれる中央のパネルパーツが必ずありますが、ぼくはこのタンが大きすぎると昔から思っていました。もっと小さくした方がかっこいい気がします。

また個人的に好きな靴の横顔としてサッカーシューズの踵部分があります。

サッカーシューズってシュートする時に足がぶれないようにかなり踵のフィッティングにこだわっていて、そのおかげで非常に綺麗な形をしています。

この意匠を取り込んでスポーティな要素を組み込んでいきたいと思います。

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adidas copa mundial

こんな感じのイメージで木型を眺めながらイメージを膨らませました。

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そして実際に試作品を作ってみたのがこちら。

だいぶ工程の説明を端折ってしまいました、、

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まだアッパーのみでソールは何も考えていませんが、なんとなくクラシック✖️スポーティーな雰囲気を出せたんじゃ無いかと勝手に感じてます。

サッカーシューズのようなヒール形状に従来より大幅に小さいタンを使用してあとはソールの方で生物的なニュアンスを出していけたらなと思っています。

この状態で足を通してみるとフィッティングが緩い感じがしたので木型に修正を加えて木型を再製作しました。

革の選定も今回は試作用の適当な革を使ったので、色や質感も改めて選定していきます。

次回に続く

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