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子どもの主体性を育むために。

ある年の保育園での話。
いつものように保育室で子どもたちと過ごしていた時に、5歳児の女の子が私に話しかけてきました。
「ここの保育園に来てよかったと思う」
そう話しかけてくれた女の子は、一年前に転園してきた子でした。

『どうしてそう思ったの?』
私が質問すると、
「遊ぶものがたくさんあるから。前の保育園はお部屋におもちゃが出てなくて、自分がしたい時にできなかった」
『遊びたい時はどうするの?』
「先生が“今日はこれしよう”って、その時におもちゃを出すんだよ」
と話していました。

私は保育士になってから10年以上同じ保育園で働いていたので、
保育室には常に玩具や遊びがあって子どもたちが自由にしたい遊びを選択できる状態が当たり前だと思っていました。

確かに実習でそういう保育園もあったような・・・。と、学生時代のことをを思い出し、懐かしい気持ちになりました。

このエピソードのあと、保育園ってどういう場所なんだろう?乳幼児期の子どもたちにとっての学びってなんだろう?と少し立ち止まって考えました。

期待されているのは、"軍隊的"保育・・・?

乳幼児期の子どもの学びは全て「楽しい遊び」があってこそ。と私は考えていました。

一方で、私の友人は自分の子どもが通う幼稚園(保育園)を決める時に、「行事や習い事教室」がたくさんある保育園が良い。
と、言っていました。

人それぞれいろんな考え方や価値基準があるのだなぁと思いました。

保育園によっても様々な考え方があって、方針も保育のやり方も異なっています。希望した所に入れるかはわかりませんが、選択肢がたくさんあるのは良いことだと思います。

子どもにとっては長時間過ごす第二の家庭のような場所である保育園。
子どもにとって居心地の良い場所であるべき。
子どもは一人の人間なので、したい遊びや得意なことは一人一人異なる。

行事重視、文字の読み書き、〇〇教室中心の保育・・・。みんなで揃って一斉に同じことをする。

やっぱり、私は"軍隊的"な保育に違和感を持ちます。
※軍隊的な保育は私が作った言葉です。ニュアンスが伝わればと思います。

軍隊的保育と一斉保育は全くの別物です。
なので、一斉保育をなくさなくてはいけないということではないと思います。子どもがみんなと同じようにしたくないからといって、みんなで取り組む活動の機会を失くすということではなく、一斉で活動するところは一斉で行う。ただ、子どもや保育士が負担に思う行事は減らすなり、内容を簡素化するなりする。大人が主導でするのではなく、子どもと一緒に活動の内容を考える。などの改善は必要ではないかと考えます。

さらに、保護者の方へしっかりとした説明を行うことを長い年月をかけて取り組む必要があります。
もしも、保育園で何か“毎年やっているから”とか“保育園の伝統だから”といった理由で、やらさなければならない製作や活動があるとすれば、いきなりその製作や活動が無くすとなると保護者の方から指摘をいただくことがあると思います。自由な保育が合わない保育感をお持ちの方もいらっしゃいます。

子どもの主体性を育むために昔の保育を変えていくことを保護者の方に理解していただくことがどんなに難しいか、保育園が長い何月をかけて取り組むことの重要性を私もすごく感じています。

保育士が行う”種まき”が大切。

今まで一斉保育が主体であった園で、急に自由な保育の保育感を取り込むと色々なところで摩擦が発生します。特に行事数を減らします。とかをすると大ごとです。

なので、今できることは、
子どもがやらされているのではなく自ら“やりたい”と思って活動できるようにすること。
そのために保育士は事前に色んな種まきを行うこと。

乳幼児期は「楽しい遊び」が大事!と言います。

保育園での実際の遊び。

ある年の、翌月にひな祭りを控えている頃の5歳児クラスでの話。
集まりの時間にひな祭りや雛人形の由来、意味などを話したり、絵本を読み合ったり歌を歌ったりして子どもたちとひな祭りを楽しみにしていました。
園では毎年、子どもたちと一緒にお雛様を出して飾るという体験をしています。
本物の七段のお雛様を、初めて見たり飾ったりする子どもが多いようで子どもたちは興味津々。
クラスのお部屋にも飾ってみたいということで、保育室にある積み木や玩具を使ってお雛様を作り始めました。

実際に子どもたちが作ったお雛様

お雛様を飾ったという共通の経験があるので、自然と友だち同士で協力しながら作る子どもたち。
作るのが得意な子が他の子に教えてあげたり、みんなで考えたりして出来上がったお雛様です。

もちろん中には全く作らない子どももいますがそこはもちろん強制ではありません。時々作る様子を見に来てくれたり、飾られていくお雛様をまじまじと見つめたり、興味を持ってくれるだけでも十分です!

室内(身近)にある道具や玩具を使ってみんなでお雛様を作れたら楽しいだろうな、協力して何か一つの物を作れたら達成感を味わえるのではないか、という保育士のねらいからこの活動に至りましたが、
保育士は種まきとして、前々からひな祭りに関する話をしたり絵本をみたりみんなで本物のお雛様を飾る経験を作ったりしたことで、
子どもたちがひな祭りに興味を持ち、やらされるのではなく自然と「作りたい!」と遊びが始まったのだと思います。

子どもの主体性を育むために、保育士はただ何もせず子どもを見守るだけというわけでなく、日々のさりげない種まきは本当に大切です。

簡単そうで難しいこの種まきを保育士の中には無意識にできる方もいますが、そういう方は子どもの気持ちに寄り添うことができる方なのだと思います。

もしさりげない種まきが難しいなと思う保育士の方がいれば、そういうことが無意識にできる保育士を身近に見つけてその方の姿を注目して見て真似したり、子どもの気持ちに寄り添って関わることを意識して行うと良いと思います。

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