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新しい地図 2019年FC今治観戦記(前編)

旅の魅力とは何でしょう。

多くの人が旅に求めるのは、「未知なる経験との出会い」だと思います。

しかし、一度行ってしまうとそこは「未知なる場所」ではなくなってしまいます。旅を繰り返していると、地図上の未知なる場所はどんどん塗りつぶされていきます。

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・僕が旅してきた地図

僕はJリーグの柏レイソルを応援して、サッカーを見る旅を続けてきました。

柏は去年、3回目となるJ2のシーズンを過ごしました。今回も1年で昇格出来ました。……蘇我方面などから石が飛んできてる気がしますが、気にしないでおきます。

その3シーズンで対戦したチームは以下のようになります(その年の順位順)

2006年
横浜FC、神戸、鳥栖、仙台、札幌、東京V、山形、愛媛、水戸、湘南、草津、徳島

2010年
甲府、福岡、千葉、東京V、横浜FC、熊本、鳥栖、栃木、愛媛、草津、札幌、岐阜、大分、水戸、岡山、富山、北九州

2019年
横浜FC、大宮、徳島、甲府、山形、水戸、京都、岡山、新潟、金沢、長崎、東京V、琉球、山口、福岡、千葉、町田、愛媛、栃木、鹿児島、岐阜

僕はこれら全ての試合会場に行きました。毎年全部の試合に行っているわけではありません(例えば岡山は去年は行っておらず、2010年に行っています)。これまでJ2で訪れた都道府県を地図上に表示してみます。

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全部で28都道府県になりました。それだけでも日本全国の過半数をカバーしています。もちろんJ1の時もアウェイに行ってはいるので、それを含めて図示すると下のようになります。J1でのみ訪れた都道府県は赤で追加します。長野、静岡、愛知、大阪、広島です(長野県がここに含まれるのが、巡り合わせとはいえすごい)。

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面積は一気に広がった感じがしますが、実は5つしか増えていません。J2こそが真の全国リーグであるということの証かもしれませんね。おいでよJ2、来ないでJ2。


・新しい地図、今治

去年は自分にとって、山口、京都、金沢、琉球、鹿児島の5会場が、サッカーでは初めて訪れた場所でした。それらの「初めての場所」は、ある意味行き慣れた新潟とか神戸とかとは違って、旅先としての新鮮さがありました。

前置きが長くなりました。今治についての話です。
「愛媛県」という括りでは行ったことのある県ですが、今治を訪れたのは今回が初めてです。

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旅の動機や感想は色々ありましたが、今回の旅は久々に「未知なる経験」でした。国内では、新しい場所に行くのはなかなか難しいと思っていたのですが、今治にはそれがありました。

僕は昔、「ロマンシングサガ」というゲームが好きでした。そして今回僕にとって、愛媛県の地図の中に今治を発見できたのが、すごくロマサガっぽい感じでした。ゲームの終盤、オールドキャッスルを見つけたみたいな…、わかる人にしかわからない話ですみません。

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・旅の動機

2019年11月3日、JFL第26節となるFC今治vs流経大ドラゴンズの試合を見に行きました。

前日の11月2日、柏は大宮に1-2で逆転負けしました。当時のJ2情勢としては、柏はまだ首位でしたが、リーグ戦残り3試合で3位との勝ち点差が5と縮まりました。

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柏は当時、昇格確定気味に扱われていましたが、だからこそダメだった時に世間の手のひら返しが待っているだろうと思うとプレッシャーがかかります。

サッカーの疲れはサッカーで癒すべく、翌日今治へと旅立ちました。自分にとっては久し振りに緊張感なくサッカーを見たいという感じです。「今そこにあるサッカーを愛したい」、いや違うか。

愛媛県今治市。
JFL(当時)のFC今治があります。FC今治は当時JFLで3位でした。ものすごく簡単にいうと、今治はJFLで4位以内に入ったら翌年J3に昇格出来ます。ここにも緊張感に包まれたサッカーがあります。でも他人事の緊張感なので、僕としては気楽に見ることが出来ます。
今治は訪れたことのない場所です。旅はやはり、未知なる地に行ってこそです。そして何より今治には、サッカー専用スタジアムがあります。専スタがあるなら日本のどこでも行きたい、今治にも行かなきゃ。そう思いつつ早2年が経ちました。このままじゃ何時まで経っても行けないぞ、ということで急に思い立って行くことにしました。


・今治の地政学的状況

ここまで当たり前のように登場していますが、「今治」は「いまばり」と読みます。知り合いに「『こんち』ってどこだよ」みたいに言っていた人もいたので、難読な地名の方かもしれません。タオルと岡田監督でそこそこ有名になったので、サッカーファンの中では読めないと非常識扱いされるように思います。地図で見ると、愛媛県の北の端っこです。

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昔、中村主筆が今治の記事を書いていました(完結していないらしい)。それによると、「今治は瀬戸内海の島々の玄関口だった」とされています。

20年ほど前に来島海峡大橋が開通し、しまなみ街道が整備されたことで、今治はその輝きを失ってしまったのだそうだ。例のシャッター商店街には、島々の人が日用品を買うために船でやってきて、大変な賑わいを見せていたのだそうだ。しかし今は、車でどこへでも行けてしまうので、わざわざ今治に来る必要がないのだそうだ。
来島海峡大橋が開通したのが1999年。悲願の建築であったそうなのだが、それは今治市にとっては、ノストラダムスが予言した「恐怖の大魔王」になってしまったのかもしれない。

FC今治とは誰の夢なのか vol.1


逆にいうと、以前の今治は四国の最先端だったということになります。
そこで僕もまず広島空港に飛び、そこからレンタカーでしまなみ海道を渡り今治を目指すことにしました。

飛行機は10:05広島着で、今治での試合は13:00キックオフでした。広島空港から今治へは、道路だけなら1時間ちょっとの距離です。とはいえレンタカーを借りる手続きなどもあるので、まあまあタイトな時間です。しまなみ海道を今治へと急ぎ走ります。

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・しまなみ海道を渡り、夢スタへ

尾道から本州を出て、向島、因島、生口島、大三島、伯方島、大島、としまなみ海道を走り、今治に着きます。島々を一つ一つクリアし、今治に向かって進んでいくと、何だか自分が村上海賊になったかのような気分になってきます。「今治は瀬戸内海の島々の玄関口である」という、そういう地理的な視点もわかる気がしてきます。

ところで、しまなみ海道を走っていると、途中の島で降りていく車もそこそこいます。住民でしょうか、それとも観光で立ち寄る人でしょうか。僕はキックオフにギリギリ間に合うぐらいなので、途中の島に立ち寄る時間はありません。

旅とは人生であり、人生とは旅である、と誰かが言っていました。もし途中の島で降りたら、それはそれで何か新しい知見があるのでしょう。寄り道しない旅、回り道しない人生。効率的かもしれないけど、時には寄り道したくなることもあるなあ。運転しながらそんなことを考え、今治への道を急ぎました。

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FC今治のホームスタジアム、「ありがとうサービス.夢スタジアム」にたどり着きました。山を切り開いたような土地でしたが、隣にはイオンモールもありました。これから賑わっていきそうな雰囲気があります。
前述の文章では、「今治はさびれた土地に見えたが、スタジアムはにぎわっていた」とされていました。
僕の場合は逆に、今治にまずスタジアムから入りました。確かににぎわっていました。試合も5-0と、いわゆる夢スコアで今治が勝ちました。ありがとう。スタジアムを後にし、ここから先はさびれた今治なのかと思うと、身が引き締まります。


・シャッター商店街

この日の宿である今治国際ホテルに向かいました。

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さびれ感が全くありません。地方都市としては相当ラグジュアリーな感じのホテルです。

チェックインが済み、ちょっと散歩しようと外に出ました。ドンドビ交差点という変わった地名が目につき、その先にアーケードがありました。嫌な予感がしたので入ってみることにしました。

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