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リカちゃん 2

 悪ふざけは続き、ますます大掃除ははかどらない。一度このゾーンに入ったらなかなか元には戻れないのは 私の子供の頃から変わらない特徴だ。『もうしばらく頭の中でリカちゃんを、今度は少しお花畑から外れた世界を追いかけてみようか?』と自然に思ってしまうんだよなぁ(笑)


《脱北リカちゃん》
 父親が政治犯としての疑いをかけられ、みんなで強制収容所で暮らしているリカちゃん一家。死に直面するような酷い生活の中、ある冬の日の深夜、 リカちゃんたちは隣国 韓国に逃げ込もうと決死の脱走をするのだった。しかし行く手を阻む冬のイムジン川の水は、体の感覚がなくなるほど冷たく、リカちゃんを濡らさないよう 肩車をしてくれていた父ピエールは、対岸である韓国側の岸に辿り着く直前に、北朝鮮の兵士によって射殺されてしまう。
 悲しむ間もなく からくも岸にたどり着いたリカちゃん、本能的に水際の草むらに隠れていたところを 運良くすぐに韓国軍兵士に保護されたのだった。韓国で成長した後は脱北者として平和活動に従事、国連の顔として世界を飛び回っていたのだが、東京オリンピックにも招待されたリカちゃん、北朝鮮選手に向かって『アッカンベー』をしたことが、例のオバさんが出てくるニュースでも取り上げられて、かの国では『国際問題だ!』とリカちゃん排斥運動が起きているらしい。

《仕事人リカちゃん》
 時は18世紀の江戸。ある文献によると、どうしても許せない人を、その人の代わりに 金で請け負い 恨みを晴らすという 裏の稼業があったそうな。もちろん人違いなどあってはならないから、依頼があったら調査を行い、なるほど申し出の通りだと確認できてからの実行である。
 刺客としてのリカちゃんの仕事は、売れっ子芸者の顔を持ちながら 色仕掛けでターゲットに しなだれかかり、三味線のバチで喉をかき切ると同時に付け爪で両目を突き刺す というエゲツない方法だった。後に残った死体は喉がパックリ切られ、また目玉がえぐられていたことから、街の人は『また 一夜干しのメザシ が出たらしい』と呼んで噂しあったが、それがどんな手練の仕業なのかは誰も知らなかったという。

《お水のリカちゃん》
 キャバクラ時代は絶大な人気を誇ったリカちゃんも、同僚のやっかみや社長との確執をはじめとする人間関係に悩み、最後は飛び出すようにこの店を、またこの世界からも足を洗うことになった。自暴自棄になっていた時に、救いの手を差し伸べてくれたのは、新人キャバ嬢時代 しょっちゅう先輩からいじめられていたリカちゃんを、いつも助けてくれたホールスタッフだったワタルである。今や北新地の高級クラブ6店舗のオーナーであるワタルは、経営している店舗の中でも一番売り上げが上がっている『クラブ 宝』のチーママにリカちゃんを据えたのだが、酒が入ると着替えたがるクセは治らず、いつも客に洋服やジュエリーをせがむ、金のかかるホステスなのだった。

《里帰りリカちゃん》
 リカちゃんが高校3年の秋、街で久しぶりに偶然会ったレンは、小学校の卒業文集に書いていた通り美容への道を志していた。自分の夢を熱く話すレンに心惹かれたリカちゃんは、周囲の反対を押し切り、自分も美容師になるといいだしたのだ。しかし当たり前だがプロの世界は 子供の頭で考えていたほど簡単なものではなく、次第に美容師としての日々に生きがいを感じられなくなっているリカちゃんだった。
 同棲生活にも疲れが出てきたそんなある日、リカちゃんは体の中に新しい命が宿ったことを知る。しかしその事実を告げたレンはあいまいな笑いを浮かべていたが、その3日後から2人の部屋に帰ってこなくなり、それ以来全く連絡がつかなくなった・・・。そう、リカちゃんは捨てられたのだ。
 心身ともに打ちひしがれたリカちゃんにとって、香山家の敷居は高かった。

《結論》
 大掃除を1日で終わらせようとするなら、押入れの奥は探らないようにした方がいい。

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