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感動ポルノ

 先日 理由はなかったのだが なんとなく『いい話を聞いて感動したいなぁ』と、ネットをパラパラ覗いていた時のことだ。数年前に公開されている、頑張って跳び箱を跳ぶことにチャレンジする幼稚園児の映像を見つけた。ちょっと調べてみると、その模様がTwitterにアップされるや、そんなイベントの実行については賛否が分かれ、かなり有名になったらしい。
 寡聞にして知らずに最近まできたが、今回問題だと思っているのは、実行の是非ではなく、その内容そのもののことである。

 なんでもその子は引っ越すことが決まっているから、1人だけ前倒しで卒園するってことらしいんだけど、その際それまで跳べなかった跳び箱を跳ぶチャレンジをさせるのだという(卒園時に全員跳ぶのが園の方針らしい)。

 映像が進むにつれ、ひねくれ者の私は(これはやってんじゃないか?)と画面を見ながら疑いを持ち始めた。何度か跳ぶことに失敗したその子は、それでも諦めずにチャレンジを続けた。4,5回目の失敗の後、見守っていた他の園児たちが、先生の合図で本人の周りに駆け寄ったかと思うと、輪になり肩を組んで『できる!できる!できる!』と声を揃えて三唱するではないか。
 しかしそれを見て私の疑念は確信に変わった。(これはやってるぞ)と。とにかく妙に統制がとれ過ぎているのだ。私の心は汚れているのだろうか。どうしてもそれら一連の『感動の出来事』が、筋書きのないものとは思えず 安っぽい出来試合にしか見えないのである。

 体操指導者の池谷幸雄氏(オリンピック2大会で団体及び個人種目別でのメダリスト)も、ニュース番組に出演した際に 動画の園児について「初めてできたわけではないと思う。できないことをやらせている感じではない。本当に跳べない子に『頑張れ!できる!』と声をかけても、絶対に跳べない」という内容をコメントしたことが公開されている。

 ネット上には映像がいくつもあるようだが、大体は2分半位のものと6分強のものだ。見たことがない方は 後者のバージョンの方が前後の関係にも触れられているのでわかりやすいと思う(『幼稚園 跳び箱 感動』の検索ですぐにヒットする)。本件については 他の人にはどんな風に見えるのか、大変興味がある。私の所感が的外れであるなら 物事を素直な心で捉えられないジジイの思い過ごしであり失礼千万な話だということでしかない。しかしまたそうであることを祈ってもいる。

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