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カカオ酵母パンを作った時の話

カカオの実から発酵種を集めてから、パンの焼き上がりまでの道のりを、ここで今一度振り返り、まとめておくことにする。

カカオの実に酵母の存在を感じるヒントとなった出来事。
チョコレートが発酵食品だと知った時から、いつかその様子を現地で確かめてみたいという夢を密かに抱え持っていた。
京都にあるチョコレート専門店「ダリケー」主催のカカオ農園視察ツアーに参加。
ツアーの参加記念用のお土産として、農園で収穫したカカオの実を1個持ち帰った。
2017年8月27日朝、インドネシアから帰宅。
 


酵母がいるのか?
インドネシアのスラウェシ島産のカカオ。
関西国際空港の検疫所で、「カカオの実」の持込許可を得た。
その時に僕は、乾いたタオルに包んでスーツケースに詰めていたのだが、
他のツアー参加者の一人、京都大学の大学院生は、ジップロック式のポリ袋に入れていた。ポリ袋内ではカカオの実が濡れている様子で、何か処理したのか尋ねたところ、何もしていないとの答え。匂いを嗅がせてもらったところ、アルコール臭が感じられたので、「カカオの実の表面にはきっと酵母が棲んでいるぞ」と思った。
帰りの飛行機内では何も浮かばなかった新作パンのアイデアが、国内に戻ってから乗ったバスの中では「次どうする?」の予定が次々に浮かんできてワクワクが止まらなかった。
 
インドネシア旅行へ行く前の段階では、カカオから酵母を集めて、パンを焼くという発想は一切無かった。
 
実験スタート
8月28日夜、カカオの実を解体し、酵母を採る実験をスタート。


8月28日に カカオポッドから酵母を採り、液種、元種へと発展させて培養。
 

24時間
48時間
120時間


初めてのことなので、仕込みからパンが焼けるまでにどのくらいの時間がかかるのか見当がつかなかった。水や砂糖の分量もそう。自家製酵母を使う場合、基準となる発酵力が分からない。
9月13日にはテスト用の元種までたどり着いた。
 
【カカオポッドの自家製酵母でパンが焼けました!】
 
9月15日、パンを作るテスト第1弾実施。
結論。 完成度は高くないけれど、一応パンの形に焼き上げることができた。(食パンと丸いパン)
初めてのテストとしては大成功。
 

最終発酵後


あと2割ほど大きく膨らんでくれたら、文句なしだった。
1次発酵~ベンチタイムまでは、チョコレートやカカオを思わせる酸っぱい匂いが生地から漂っていたけれど、2次発酵まで進むとその匂いもほぼ消えてしまった。
スキムミルク、麦芽エキス、ショートニングを加えたせいか、カカオ本来の香りの発生を抑えてしまった可能性がある。
また元種を作る時に、不快な酸っぱい匂いが強くなりすぎるのを恐れて、培養期間を十分に確保しなかったのは失敗だった。
条件などを忘れないうちに、早めに再テストしたい。
(以上、2017年9月15日のFBより抜粋)

(以下、2017年9月25日のFBより抜粋)
カカオ酵母パン テスト第2弾
ベンチタイム終了!

最終発酵後


生地の感触は初回テストとは違って、いつも(従来品)と同様に仕上がっている。
水分調整も元種の投入量もうまく出来たおかげ。
今回は余計なものを一切加えず、手堅い配合。
カカオの香りを阻害するような原材料は使っていないけれど、やっぱりカカオを想起させるような芳香が少なくて残念。さて、焼き上がった時にどうなるか?
食パン2斤、バタール1本、プチブール4個、チョコチップ入りプチパン8個
 
9月24日24時前、パンが焼き上がった
何と言えばいいのか。間違いなく、大成功だ。
いつも焼いている商品としての「天然酵母のパン」と見間違えてしまうほど普通に焼けた。
一見、完璧。
ただし、やっぱりカカオの香りがない。
結局のところ、カカオの酵母は製パンに適しているということになるのだと思う。

テスト第2弾の試食


朝日に照らされて、おいしそうに見える。
25日朝、パンを食べた。
あまりにも普通。
カカオ風味ゼロ。
何と言えばいいのか。


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