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ネットで知り合った子が、リアル友達になるまで

この間のお休みは、高尾山に紅葉を見に行ってきた。

一緒に行ったのは、Aちゃん。

彼女はTwitterでライブチケットを譲るために、大学時代に知り合った子だ。令和になって会うのは初めてで、久々だった。

共通点は好きなバンドとライブと同じ歳くらい。

チケットを譲った時は、ライブ以外でも会うようになるなんて、その時は思わなかった。

最近はライブも行ってないし、共通の話題もないから少し会うの、緊張するなあ。と行く前は少し斜に構えていたが

会った瞬間からの「久しぶりー!!」で懐かしさと嬉しさが溢れてしまった。とにかく私たちの声は駅に響くくらいうるさかった。

そうだ、忘れていた。彼女はとにかく明るくて元気がいい子だった。

今日、楽しくないわけがない。そんな予感がした。

しかし、そんな予感も裏腹に1番軽いコースで行くつもりだったのに、前の人について行けば間違いないという雑さで私たちは苦しい登山コースを歩むことになった。

息を切らしながら、重い足を引きずった。コロナ禍でテレワークが増え、衰えた体力と足腰には響くものがあった。

だが、何も無言でいるわけにはいかないので、近況報告を交えながら私たちは足を前に進めた。

まだ、仕事続けてる?とか、あのバンド、まだすき?とか、結婚したんだね!とか。

特にAちゃんは今は2.5次元ミュージカルにハマり、私はアイドルの練習生にハマってる話をして、お互いにどういうところが魅力かというプレゼンがたいそう白熱した。

お互いに足を止め、コンテンツを見せ合い、面白そう!とかかっこいい!と言い合う。登山者からはどんどん抜かれるが、私たちは生き生きしながら登山中の女子会を楽しんでいた。途中で団子やフランクフルトを買ったりしてお腹も満たしながら喋り続けた。

山登りに慣れてきた頃、ようやく山頂に着いた。高く昇った日差しが差し、山頂を照らす。その時ばかりは私たちは喋るのをやめて、まっすぐ日差しを見つめてた。

「もう12月だね。私たちもう30になるね」「出会った時は20とかだったよね。まさかエルレが復活するなんて思わなかったよね」

ふふふ、と笑いながら、山頂で蕎麦をすすった。赤い紅葉が風に飛ばされて何個もフリースにくっついた。

「今年も終わるねえ」2人で赤々とした木を見ながら、ぼーっとした。

「最近、もう現状維持でいい、平和に生きていきたいが口癖になってる」

「わかる。平和に暮らしたいよね。でもわたし、転職するけどね。」

「めんどくない?」

「うん、面倒なんだよね。」

「まあさ、幸せになれるならいいよね」「うん、幸せになりたいよね。これ、10年前も話したよね。これから先もずっと言っていくよね」

ふふふ、とまた、私たちは笑った。

ライブのチケットがあの時あまらなければ、Aちゃんと出会えなかっただろうな。

あの時、連絡が来なければ、あの場所に行ってなければこの出会いはなかったんだなあとしみじみしたところで、

帰りは、一気に日が暮れて、極寒の中リフトに乗って下山した。リフトに乗っている間も、積み立てNISAの話とか、血液型の話をしたりして、私たちの話は、少しも尽きなかった。

帰りの電車で、別れた後、Aちゃんが「出会って10年経ってた!楽しかった!」と写真と共に投稿して、嬉しくていいね!を速攻で押した。私たちはこれからもSNSのおかげで続いていくと思う。

SNSで簡単に繋がることはできても、関係を続けるって難しいとつくづく思うことがある。学生時代の友達でさえ、疎遠になるし。そんな中でも、ライブチケットが運んだ友情を、SNSでのいい出会いを、リアルでも続けていけますように。









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