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百万遍にある友達の家

大学に入って2回目の春、私はようやくサークルというものに入った。普通の大学生は一年生の春にサークルに入るのだから、まさに“満を持して”である。

私が入ったサークルは音楽系のものであったが、そこに所属している人間はこれまで私が接してきたどんな人とも別種のものであった。一言で言えば、みんな大人。さりげなく気をつかい、その場にいる人間の心の機微を敏感に感じ取ることができる人たちの集まりだった。常に二手先、三手先を読まれている感覚がして、僕はどうしようもなく子供だった。

ある日、サークルのメンバー何人かでお酒を飲む機会があった。僕は酒に弱いくせに、いつも飲みすぎて周りに気を遣わせてしまうのだ。その日もそんな感じで、酔っ払ってうたた寝をして夢を見た。そして、僕は目が覚めるとたった今見た夢の内容を喋り始める。他の人にとっては僕が見た夢の話なんて世界で一番どうでもいいことのはずなのに、適度な相槌と質問で僕をいい気分にさせてくれる。僕はみんなの優しさに気づくことなくとりとめなく喋り続ける。

やっぱり、みんなは優しくて大人。僕だけはひたすらに子供だった。

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