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ただいま、今までとは違う日本

5月上旬、日本に帰国し、実家までの帰路の中、車窓から見えた風景は「日本だ・・・」という、ごく当たり前の感想だった。きっと、僕は何が日本らしさなのかを、この30歳になるまでわかっていなかった。まるで別の日本に来たかのような気持ちになった。

人々の会話のトピック、何に不満を感じるか、街中の建物、ポスターや雑誌の体裁、テレビ番組の話題、お店の看板、規制の多さ、そして街の角々にある神社や寺。

それと同時に、自分がゲイであることを急に悲しく感じてしまった。つい先まで、同性が手を繋ぎながら歩き、国をあげて差別撲滅に取り組んでいる場所にいたのに、日本に戻ってきたが故に、また僕は「同性愛者は受け入れられない」という政治家の発言を見ながら暮らす羽目になる。違う国というか、まるで別の世界線にやってきたような気持ちになった。

カナダでは、僕の滞在していた人口6000ほどしかいない街にもLGBTQをサポートするチームがあり(地元紙に掲載されている)、教会には常にレインボーフラッグがためいていた。黒人が住んでいたかどうかはわからないが、それでも黒人の権利についての集会が開かれていた。人権の問題は、たとえ彼らが当事者でなくても、常に彼らの関心ごとであり、平和維持のために不可欠な議題だと考えているようだった。

都市部に行けば、LGBTQフレンドリーのサインを掲げたお店があり、警察が発行している「危険を感じたらここへ電話を」というレインボーカラーのステッカーを貼っている建物がある。僕らは、誰も一人ではないというメッセージを強く感じる。



久しぶりに再開した恋人の顔も見ながら僕らは、ちょっとシンドイ所に生まれてしまったね、と思う。もっとやりすい人生があっただろうか、と別の人生を想像する。

僕は地元に帰ってきたけれど、どうしようか、とも考える。



僕が高校を出て、浪人をしてから、ちょうど12年。この一回りの間は、予想もしない出来事に揉まれて、彷徨いづつける12年だった。次の12年は、僕はどこにいるだろうか。そこに、恋人はいるかな。