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Lemon Peel

わたしが、ハイボールをはじめて飲んだのは、10年以上前だった。

その時のわたしは、
ちょっと贅沢な『シングルモルト』を覚えたてだった。

格好つけて、何件かの『お店にキープボトル』をおき、
タバコは『アメリカンスピリッツ』を吸っていた。

そんな時、新しく「行きつけのBAR」ができた。

その『BAR』は新しくオープンしたばかりで、まだ開店から1ヶ月ほどだった。
店内はまだ『内装工事』の『新しい匂い』が抜けておらず、何もかもが新しく、
店の『バーテンダー』もお客も「慣れていない」感じが漂っていた。

「『常連客』は今から」といった感じで、
お客さん達の間にも遠慮が感じられた。

そんな中、3回目の来店で、「わたしはいつものように『ボトル』を希望した」のだった。最初は、お店側も「すいません。うちではキープできません」と
頑な(かたくな)に断られた。

わたしもわかっていたが、
「どうしても、お願いできないだろうか?」と必死にお願いした。
『行動で気持ちを示す』と意気込み、『10日連続』でお店に通った。

店側というよりは「店長が根負けした」と思う。

わたしはその店長のことをとても気に入っていた。
後には、男2人で『飲み』に行っては、熱く語るほどの仲になった。

『その店長』が
「ボトルを入れさせられて、このままじゃ面子に関わる!」といって、
まだ開けていない「シングルモルトウイスキー」を開けた。

当然、カウンターの上には、『デキャンタに氷が入っていて』横には『ミネラルウォーター』が置かれていた。

しかし、『店長』はアンダーカウンターの『冷蔵庫』から『炭酸の小瓶』を出し、フタッフに行って、『レモン』を持って来させた。

『グラス』に『開けたシングルモルトウィスキー』を注ぎ、
丁寧にその『グラス』に『氷』を入れていく。『グラスに氷が満ちる』と
『マドラー』で丁寧に『グラスのなかの氷』を混ぜていく。

『グラス』の外側に『汗』が出てきた。一旦、『グラス』を拭き、
『汗』を拭った。

『グラス』が透きとうり、『綺麗な琥珀色』の液体が見えた。
そこに、あらかじめ出していた『炭酸水』を『マドラー』を伝わせ、
注いでいく。

やさしく『炭酸』の『弾ける音』が聞こえる。
「パチパチパチパチ」と静かな、静かな音が...。

『炭酸水』が『琥珀』と混じっていくのが見える。ゆっくりと。
『グラスを満たす』と、店長はおもむろに『レモン』を手に取った。

『レモン』の皮を剥きはじめた。『柑橘系』の爽やかな『香り』が、

カウンターを飛び越えてこちらまで『香る』。
わたしの吸っている『タバコの煙』を浄化していくように。

『レモンの皮』を剥き終えると、『グラス』の飲み口回りに
『レモンの皮のレモン汁』を吹きつけていた。

吹きつけ終わると、その『レモンの皮』を何の躊躇も無く、
『琥珀色のグラス』に投げ入れた。

そして、カウンターにコースターを差し出し、『グラス』をその上に置いた。
そして、自信満々な笑みで「どうぞ!」と一言だけ発した。


わたしは、『レモンの香り』に既に『魅了されて』いた。
『モルトの香り』『微かなアルコールの香り』『炭酸の弾ける音』。
そこに『タバコの匂い』が重なり、大人な雰囲気がさらに増していた。

『グラス』を顔に近づける。わたしは『わたしが笑顔になる』ことを感じながら、1口目を舐めるように、口に含んだ。

「うむ」といった瞬間、再び『グラス』に口をつけていた。
今度は、『喉越し』と『香り』を一緒に呑み込んでいた。


そして、一気に『グラスの琥珀』を空にした。




『飲み干していること』も『タバコを吸うこと』も忘れていた。



ほんとうに『頭が真っ白』になっていた。




ふと、気がつくと『2杯目』が目の前にあった。

わたしは「店長、ありがとう!めっちゃイイ!」と満面の笑みで、

お礼を言った。

店長も「イイでしょう?気にいると思っていました。」と

自慢げにかえしてきた。


当時はとても珍しい『ハイボール』だった。
当然のようにその店の『キープボトル』は
この『ハイボール』で飲むようになった。

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#ここで飲むしあわせ

誰が見ても「綺麗な言葉」を紡いでいきたいと、理想を、希望を胸に。 日々精進しています。 どこかの、だれかのために役立てれば幸いです。 そんな私に少しの勇気をください。 ・・・◯◯