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親が5人もいるが、幸せな少女「そして、バトンは渡された」

「私には父親が三人、母親が二人いる。 家族の形態は、十七年間で七回も変わった。 でも、全然不幸ではないのだ。」

え、どゆこと?と、このフレーズに惹かれ、読んでみました。

結果、一気見したし、号泣したし、もうこれにもないくらい温かい気持ちになりました。(最近ほんとすぐ泣く笑)

本とか映画で、のいわゆる悲恋の物語とか、辛いことからの感動シーンでなら涙を流したことはあるんですが、
ただひたすらに幸せや温かい物語から涙を流すことは初めてでした。
先日出会った本でしたけど、この本を読んで心から良かったと感じた本です。

〇 この作品がおすすめな方

・作品ジャンル
  感動系・親子愛・ほのぼの

・おすすめな方
  ゆったりした感動できる本を読みたい方
  本を読むときに謎解きのような感覚が好きな方

・向いてない方
  ご都合主義の物語に違和感を感じてしまう方


〇 あらすじ

主人公は高校生の少女、森宮優子
キャッチフレーズにもあるように高校までに人生で7回も家庭環境が変わりました。

①実の母親と父親(~3歳まで)
水戸家に生まれるが、母は優子が3歳の頃に事故で死去

②実の父親と(~小学3年)
2人暮らし。おじいちゃんとおばあちゃんにお世話になる

③実の父親と梨花さん(~小学5年)
梨花さんと再婚し、3人で暮らすが5年生に父はブラジルへ海外赴任

④梨花さんと(~小学6年)
2人暮らし生活に困窮する毎日

⑤梨花さんと泉ケ原さんと(~中学卒業)
再婚した泉ケ原さんと3人暮らし、豪勢な暮らしでピアノを毎日弾く

⑥梨花さんと森宮さんと(2か月間)
梨花さんが急に再婚し、元同級生だという森宮さんと暮らすことに

⑦森宮さん(現在)
物語の高校3年生現在、森宮さんと2人暮らしをしている

まとめると
1人目の母親 実の母 3歳に死去
1人目の父親 実の父親 海外赴任
2人目の母親 梨花さん 自由奔放
2人目の父親 泉ケ原さん お金持ち
3人目の父親 森宮さん 今の唯一の親

物語は2部あり、第1章はここの森宮さんとの2人暮らしの様子と、現在までのいきさつが綴られています。

第2章からは、この複雑でありながらも愛情を受け育った、森宮優子が結婚という転機を迎え、
それぞれの親に会いにいき、それぞれの親の「想い」に触れる物語となっています。

・あらすじについて

これみると、いや梨花さん自由すぎ~ってなりますよね(笑)
2章で理由がわかるんですが、
ただ梨花さんは本当に優子ちゃんのことを愛情を注いでいて、泉ヶ原さんとの結婚理由なんか「優子ちゃんがピアノ弾きたがってたから」って!

えええ、とは感じましたけど、自由で気ままな梨花さんだけど、優子ちゃんの愛情は揺るぎない温かいものだと感じました。

このお話は、ちょっと変わった親たちでありながらもこんなような、温かくちょっと変に感じてしまう、思わず笑ってしまうような愛情表現がたくさん描かれています。

〇 印象に残ったところ

好きなセリフとか好きなシーン沢山ありすぎるんですけど、ここでは3つに絞って書きたいと思います。

#子供を持つ覚悟と温かい愛情

やっぱりこの物語の醍醐味は大きくて温かい家族の愛情です。

親の”都合”ではあるものの、どんな環境においても子供と向き合い愛情を注ぐ親たちに心揺さぶられました。

特に印象的な2つのセリフについて語らせてください。

「梨花のいう通りだった。優子ちゃんと暮らし始めて、明日はちゃんとふたつになったよ。自分のと、自分のよりずっと大事な明日が、毎日やってくる。すごいよな。」

1章の最後に、3人目の父親森宮さんのセリフです。
私はまだ親ではないので、この気持ちを理解することは完全にはできませんが、とても心に響きました…。

親になる前は自分の未来だけだったけど、
優子ちゃんの親になることで、自分より大事で、楽しみで、一緒に創っていく未来が2つに。

梨花と森宮さんの温かい見守り一緒に歩もうという愛情をかんじますし、親としての自覚や覚悟から出た言葉だとおもいます。

もし、私が親になった時は、この言葉を心に刻んで子供と一緒に未来を創っていきたいと思いました。

「本当に幸せなのは、誰かと共に喜びを紡いでるときじゃない。自分の知らない大きな未来へとバトンを渡すときだ」

第2章の最後の森宮さんのセリフです。
この言葉が題名の『そして、バトンは渡された』に繋がるのか!と感じ同時に感銘受けました…。

子供を持っている親ならこの気持ち分かるのかなぁ、私はまだ分からなくとも、とても温かくて優しい素敵な想いを含んだセリフだと感じました。
いつか子供を持った時、その子供を育てる時。送り出す時こんな想いを持てたらいいな。


今の時代、子供との向き合い方を問われることが多いですよね。虐待のニュースも、子供が親へ暴力を振るうケースも。
ニュースにならなくとも、街歩く中で子供に対してとても冷たい態度をとっている親、自身の理想を押しつけて子供に道を決めさせる親。
さらには共働きによる子供と触れ合う時間の減少…。

この時代だからこそ、様々な選択肢があるからこそ、親と子供の向き合い方を問われますよね。
でも、この物語の森宮さんのように、「親」にとって、まず1番に、何より大事なのはその子へ注ぐ「愛情」だとしみじみ感じました。

#家庭ごはんの描写

物語は、半分ほどが現在暮らしている自分と20歳しか変わらない現在の父、森宮さんとの描写です
森宮さんと優子ちゃんは、森宮さんが毎日作ってくれるごはんを食べながら対話します。

このご飯がまたおいしそうで、それでもっての愛情表現だなって
誰かのために作るごはんってとても温かく幸せなものなんだと、感じました。
ほんと、ごはんシーン沢山でもはや飯テロでした。

・ケチャップで2行の渡る長文メッセージのオムライス
・スタミナつけるために3日連続の餃子
・始業式の朝食にスタミナかつ丼

ちょっと変なメニューのときもあるし、なんかズレてる時もある森宮さん。
主人公が買ったプリンを食べちゃったときも、

「ごめんな。俺本当の父親じゃないから、自分の食欲を抑えて娘に残しておくってできないんだな。申し訳ない」

おいおいおい!?みたいな笑

ちょっと、いやだいぶ変なんだけど明るくテンポの良い会話は面白いし、
優子ちゃんを大切に思っての食事を作るシーンは、次第に森宮さんなりの愛情表現なんだな、と心温まりました。

#構成が謎解きのよう

私、普段はサスペンス系とか、謎を解かれていく描写が好きで、東野圭吾さんとかよく見るんですけど
この物語も、謎が解かれていく描写が気になり、どんどん先に読み進めてしましました。

読む前も、

・なぜ親を転々としてきたのに、主人公は不幸ではないのだろうか
・どんな理由で家庭環境が変わってしまったのだろうか

とか、読んでいる途中にも

・優子ちゃんの妙に大人びている性格はなぜなのだろうか
・別れてしまった親たちは今どこで何をしているのだろうか

と呼んでいる途中に疑問がたくさん湧いてきます。

物語の構成的に、現在の優子ちゃんの暮らしと、これまでのいきさつとが交互に綴られているので、なぜ親が変わったのかという「謎」がちょっとずつ紐解かれていきます。

この作品は感想などを見ていると、一気読みしていしまった(私も笑)という方が多いのも、
先の展開がその謎が気になってついつい飽きがこず、見てしまうというのもあると思います。

〇 感想

この作品は終始子供である、優子ちゃんの視点で語られています。その子供目線でも感じる様々な形の愛情を受けとり、成長してきます。

作品の最後に解説で上白石萌音さんは

これから先、人生の大切な節目を迎えるたびに、わたしはこの本を読み返すだろう。
恋をするとき、結婚を決めるとき、家族が増えるとき。そしていずれ訪れる旅立ちを見送るとき。

このように綴っています。

この作品は私たちに近いような似通っているような、人生の歩みの物語だと思います。辛いとき楽しいときなどの「状況」や、子供であるとき親であるときの「立場」、この本はそんな状況や立場によって、その時々で感じること、思うことが違うのだと思います。

自分と自分よりずっと大事な明日を、未来が2つにはまだなっていませんが、周りの誰かをまずは身近な人との時間を大切にしようと思います。

あと、蛇足ですけど、このお話すごく「食」の幸せを体感できました。毎日の食卓がちょっと嬉しくちょっと楽しめるものになりそうです。
誰かのためにご飯を作るってとっても温かいですね。

〇 あとがき!

この本は私の中で、今後も大切にしていきたい、人並みな表現になっちゃうんですけど、とてもお気に入りの本となりました。

そんなとっても良い本なんですが、語彙力のせいでこの良さが伝えられないのがもどかしい…!自分の想いや感想を文字にするって難しいですね。もっと上達させていきたいです。

あと、最近はコロナで時間を持て余しているため、初心者ながらピアノを始めてみました。片手だとなんとかなっても、両手だと途端にできなく…。1時間練習して、やっと和音4つとか。(笑)世の中のピアノできる方々ほんと尊敬です。かっこよく弾けるようになりたいです。(どうでもいい話)


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