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幸せを追求する心理学 〜ポジティブ心理学入門〜

お世話になっています。まるです。
今回は幸せを追求する心理学の分野「ポジティブ心理学」についての研究をまとめた入門記事を書こうと思います。


ポジティブ心理学について

ポジティブ心理学とその誕生の経緯

今回の記事は、みなさんが自分の幸せを追求するにあたって少しでも役に立てることを願って書いています。そのような記事を書くにあたり、今回特に焦点を当てて紹介をするのがポジティブ心理学という分野です。ポジティブ心理学とは、人生で良い方向に向かうことについて科学的に研究する学問です。この心理学の分野はここ最近で急速に研究されてきた分野であり、100年余りの短い歴史しかない心理学のなかでも、特に新しくできた心理学の分野と言えるでしょう。

「幸せについて」という誰もが一度は考えるテーマが、なぜ心理学の中で今まであまり議論されてこなかったのでしょうか。それは第二次世界大戦以降の心理学が、人間の疾患とその治療法に注目することに力を傾けてきたことにあります。もちろん、ヒステリーやうつ病、トラウマといった精神疾患に注目したことで、その理解や治療、予防に関しては多くの進歩が見られたことは素晴らしいことです。一方で、日々の暮らしを向上させたり、よりよい生き方をするにはどうすれば良いかといったことには、根拠のない自称心理学者や、自己啓発本、あるいは宗教といったものに比べても、ほとんど研究がなされてきませんでした。心理学者はマイナスをゼロにするための研究はしてきましたが、ゼロをプラスに、プラスをさらに大きなプラスにするための研究はしてはこなかったのです。

このように欠陥に焦点を当てた心理学に対する反発として生まれたのが、人間の潜在能力に注目した心理学、すなわちポジティブ心理学です。ポジティブ心理学では、幸福感や強み、知恵、創造性、精神的健康といった事柄に対して、信頼できる実証的研究を提供することを目指しています。

人間性心理学との違い

「人間の潜在能力に注目した心理学」と言うと想起されるのが、ポジティブ心理学の前身として誕生した人間性心理学です。人間性心理学については、以前まとめて記事を書いています。

ポジティブ心理学と人間性心理学は、共にネガティブな主題に偏った従来の心理学に反発し、個人の成長などのポジティブなテーマに注目している点では共通していますが、そのアプローチは大きく異なります。というのも、人間性心理学ではネガティブな枠組みに反対しただけではなく、科学的・統計的で複雑な手法は複雑な存在である人間を理解する助けにはならないとして、研究には取り入れない傾向にありました。量的な研究より質的な分析を求めたと言うわけです。
一方でポジティブ心理学は、科学的な根拠に根ざさない人間性心理学を批判し、より科学的・統計的妥当性のある枠組みを尊重する傾向があります。どちらも扱う題材は似ていますが、用いる手法の点で区別がされるということです。

幸せの定義

幸せについて論じるためには、まず「幸せとは何か」をはっきりとさせることは必要不可欠です。とはいっても、幸せの定義は統一的な見解があるわけではなく、学者により様々な説が提案されています。
この章では初めに、幸せの定義を考えるにあたり重要となる二つの考え、ヘドニズムユーダイモニズムについて述べた後、様々な学者が提案した幸せの定義に関する説を見ていきたいと思います。

ヘドニズムとユーダイモニズム

この章の後半で述べる様々な幸せの定義の多くにおいて、その基礎として二つの考え方があります。それがヘドニズムとユーダイモニズムです。

ヘドニズム(快楽主義)とは、幸せを最大限の快感と最小限の苦痛により説明することができる、という主義のことです。ヘドニズムの起源はギリシャの哲学者アリスティッポスにまで遡ることができ、また後に功利主義の哲学者たちを中心として引き継がれてきた、非常に歴史のある主義になります。
ヘドニズムは分かりやすい定義ではあるものの、快感だけが幸せと言えるのか、という疑問が残ります。例えばドラッグの乱用や、凶悪犯罪によるスリルを味わうことによる快楽で満たされている人生は、幸せな人生と言えるのでしょうか。純粋なヘドニズムに従えば、このような人生でも幸せなものと言えるわけです。一方で、上記のような快感だけに満たされた人生を幸せなものだとは受け入れられない人も多いことでしょう。

ヘドニズムに対して、ユーダイモニズムによる幸福の考え方は快楽を重視せず、真の幸せとは、自分の美徳を見つけ、それを育み、それの美徳に従って生きることと考えます。その主張をより具体的に言葉にするのであれば、「人は自分における最高のものを開拓すべきであり、その上で、特に他人もしくは大きく人類の福祉を含むより大きな善に奉仕するために、自分のスキルや才能を使うことで真に幸せになれる」ということであり、より簡潔に表すなら「意味のある人生を追求することこそ真の幸せである」とする考え方とも言えるでしょう。
ユーダイモニアという言葉は、ダイモン(=内なる自己)に忠実であることを表すものであり、アリストテレスにより提唱されました。その後ユーダイモニズムは、ストア派の哲学者や人間性心理学者などを含む多くの人々に支持されて、発展してきました。

快楽を追求するヘドニズムと、人生の意味を追求するユーダイモニズムは、幸せの定義に関する多くの説の根底に存在している重要な概念です。
そしてこの二つはどちらか一つしか選ぶことができないわけでは決してなく、実際に多くの説では両者が混在した上で幸せが定義づけられています。

提案されてきた幸せの定義

さて、上記を踏まえた上で、幸せの定義に関する様々な説を見ていきましょう。

  • 欲望説
    幸せとは自分が望むものを得ることだとする説。欲望説では個人の欲するものが必ずしも客観的な快感を伴う必要はなく、他の人にとってはつまらないようなものであっても、それが自分が欲するものであれば、その欲望を満たすことで幸せになれると説明する点が純粋なヘドニズムとの違いとなる。
    一方で欲望説に対する反論は純粋なヘドニズムに対する反論と同じであり、もし個人がドラッグや凶悪犯罪によるスリルを代表とする反社会的な行動などを欲望し、それを満たした人生を送っている場合、そのような人生を幸福と言ってしまって良いか、という点にある。

  • 客観的リスト説
    世界中の誰から見ても真に価値のあるものが世界には本当に存在し、それらを成し遂げることが人生の幸せであるとする説。ここでいう価値のあるものとは、例えば病気からの解放、物質的な快適さ、職業、友情、子供、教育、知識といったものが含まれる。客観的リスト説を採用すれば、純粋なヘドイズムや欲望説で肯定されていた反社会的な行動などによる幸福を除外することが可能となる。
    客観的リスト説に対する反論は、過去に蓄積されたデータとの矛盾である。というのも、ここ数十年において世界中の多くの国では識字率は高くなり、寿命は延び、情報はより身近に利用できるようになり、安全性や快適さを提供する物質的財は確実に豊かになった。その一方、自己報告による幸福度は、客観的な財が増加し続けるペースに伴って増加してはいない。例えばアメリカにおいては、人々の幸福度は50年前の幸福度とほぼ変わっていないことが分かっている。この客観的財と幸福度の間のズレを、客観的リスト説では説明することができない。

  • 指標による定義
    実際に、ある個人に対して、自分の人生について満足しているか、幸せを感じているかといったことを聞き、幸せを得点化する定義。特によく使われるのは人生の満足度測定尺度と呼ばれる指標である。これは個人に対して以下の5項目の質問に七段階尺度で回答させることにより測定する:

    ・自分の人生はだいたい理想に近い。
    ・自分の人生は素晴らしい状態だ。
    ・自分の人生に満足している。
    ・今までのところ、自分の人生に望む大切なものは手に入れた。
    ・人生をやり直せるとしても、自分はほぼ同じ人生を選ぶだろう。

    指標による定義のメリットは、個人の幸せを数値化して測定できる点である。例えば指標により幸福を測定すると、異なるグループ間の幸福の大きさを比較することができたり、ある心療・カウンセリングがその人の幸せに本当に効果を与えたか、またどれだけ影響したかを定量的に分析することができるようになる。
    一方、このような人生の満足度調査の多くは、回答者のその時の気分に影響されることが知られている。例として、若者に人生の満足度調査を行う際、調査の前にデートの頻度について尋ねると、デートの頻度と人生の満足度に大変高い相関が生じるが、一方で人生の満足度調査を行った後にデートの頻度について尋ねた場合だと、この二つの間の相関は先ほどに比べて小さくなる。つまり、デートの頻度を調査の前に聞くと、デートの頻度が多い人ほど自分が良い人生を送っているものだという「気分」になり、人生の満足度調査でも良い回答を答えるようになる。逆もまた然りである。
    このように、指標による定義はその時の気分により回答が異なる。果たして「人生の満足度」というものの結果が、その時の気分次第で大きく変わった回答となってしまっても良いのだろうか、という点は議論となる。

  • PERMA(パーマ)
    幸せというものは、欲望説の「望むものを得ること」や人生の満足度測定尺度の「人生の満足度」といったように一元論的に定義することは難しいとし、幸せを5つの構成要素に分解して定義する、という立場。ポジティブ心理学の提案者セリグマンによる発案。PERMAにおいて、幸せは以下の5つの要素から構成される。

    ポジティブ感情(Positive Emotion):
    快の感情や前向きな感情、よいフィーリングのこと。ヘドニズムにおいて追求されるものとほぼ同じもの。

    エンゲージメント(Engagement):
    自分の強みを利用して、没頭した状態、完全に熱中した状態になること。フローと呼ばれたり、スポーツの分野ではゾーンとも呼ばれる。

    人間関係(Relationships):
    他者と繋がること。

    有意義な人生(Meaningful life):
    自分の人生の意味を認識し、自分より大きなものに仕えること。

    達成(Accomplishment);
    自分自身のために成功と勝利を手に入れること。

    上記五つの構成要素の頭文字をとり、PERMAと名付けられる。

  • 前野らによる定義
    日本のポジティブ心理学研究者である前野とその研究グループは、PERMAには以下の問題点があると述べている。

    ・PERMAの5つの構成要素は、自身の経験に基づいて挙げられた候補であり、科学的な妥当性があるわけではない。
    ・PERMAの構成要素は欧米的な個人主義の要素が強く、日本人への馴染みが薄い。特にPERMAにおける「有意義な人生」と「達成」の二点はアメリカ的価値観を強く受けている。

    以上を踏まえ、前野らはPERMAの代わりに「1. 科学的な妥当性を持った方法で」「2. 日本人の価値観に合った」幸せの構成要素を研究した。具体的には、1500人の日本人を対象にアンケート調査を行い、結果を因子分析という高度な統計処理により解析し、幸せの構成要素を求めた。
    この研究によると、日本人における「幸せ」は、以下の4つの要素により構成されている:

    ・自己実現と成長の因子:
     大きな目標を持っていること、大きな目標と目の前の目標が一致していること、そのために学習・成長しようとしていること。
    ・繋がりと感謝の因子:
     人を喜ばせる、愛情、感謝、親切といったように、他者と心を通わせること。
    ・前向きと楽観の因子:
     ものごとがうまくいくと思ったり、失敗や不安な感情を引きずらないといった楽観性を持つこと。
    ・独立と自分らしさの因子:
     他人と自分を比較しないことや、自分らしさをはっきり持っていること。

以上、様々な幸せに関する定義の例を挙げました。もちろん今あげた定義の他にも様々な幸せについての考えが提唱されており、上述したものはほんの一例にすぎません。

価値観・強み・興味から見た幸せ

幸せであること、特にユーダイモニズム的な幸せにとって、自分の価値観に沿って生きることは非常に重要な意味を持ちます。自分の人生を意味のあるものにしたい人にとって、もし自身の価値観とずれたことを成し遂げたとしても、それは人生の満足につながらないことでしょう。
そして価値観を満たすためには、自分の強みを活かすことが重要です。強みを活かせば、価値観に沿った目的の達成に役立ちます。
また価値観・強みが明確であっても、目的に対して興味がなければ実行する段階まで進みません。反対に興味があれば、価値観に沿った目的を満たすために積極的に強みを活用することができるでしょう。
要するに、自分の人生を満足させるような目的を達成するには、価値観・強み・興味の3つの要素が密接に関係しています。そこでこの章では、それぞれについてポジティブ心理学の観点から詳しく考察していきたいと思います。

価値観

価値観の研究についてポジティブ心理学者が重要視してきたことの一つは、その目録を作ること、つまり価値観とはどのような種類のもので構成されているかを明らかにすることでした。
数ある研究の中でも特に評価されているのは、社会心理学者シャローム・シュワルツによる価値観の研究です。彼は70の国々で価値観についての調査を行い、その結果に高度な統計学的手法を用いることで、国や文化によらず普遍的な人間の価値観の構造を明らかにしました。
シュワルツの研究によると、以下の10の価値観が、世界中で同じように区別されています。

  • 達成:社会の基準に従い能力を証明することを通じて個人的に成功すること。

  • 慈善:自分の身近な社会集団において他人の福祉を保護し、向上させること。

  • 適合:社会的規範を犯したり、社会的期待を裏切る行為を抑制すること。

  • 快楽主義:個人的な満足や喜びを得て楽しむこと。

  • 権力:社会的地位、名声、優越を得ること。他人を支配すること。

  • 治安:社会の安全、調和、安定性を村主すること。

  • 自己主導性:自立した思考と行動を追求すること。

  • 刺激:興奮、目新しいもの、人生における挑戦を求めること。

  • 伝統:自分の文化的または宗教的な習慣において敬意を払い、受容すること。

  • 普遍性:あらゆる人間や自然を理解し、真価を認め、保護すること。

また、上記の価値観は下の図のよう円状に配置することができます。

シュワルツによる価値観の普遍的構造

上記の10の価値観は「変化への柔軟性と維持」と「自己高揚と自己超越性」の二つの軸に沿って配置されています。二つの価値観が隣接する場合は互換性があり、同じ人が双方を支持する傾向があります。反対に二つの価値観が円の両極にある場合にはそれらは相入れず、同じ人が支持する傾向はありません。

強み

強みは、ポジティブ心理学の主要テーマの一つです。よく知られた強みの測定手法としては、VIA(ヴィア)ストレングスファインダーリアライズ2といったアプローチがありますが、この記事ではその中でも特に有名なVIAについて解説を行います。

VIA(Values in Action, 生き方の原則)とはその人の強みとなる徳性を見つけるためのアプローチであり、ポジティブ心理学者マーティン・セリグマンクリストファー・ピーターソンの二人により開発されました。
ここで、「特性」という語を使わず「徳性」という言葉を用いたのは、VIAで測る強みがその人の道徳的な強みだからです。徳性は才能と比較すると、努力や意志でその強みを発揮することができます。例えばバスケットボールのマイケル・ジョーダンは、類い稀ない運動能力という才能を持っています。大抵の人は彼のように自在にバスケットボールを行うことはできないでしょう。しかし、マイケル・ジョーダンはその運動能力という才能に加え、極度の負けず嫌いであるという徳性においてもまた尊敬されていました。この負けず嫌いの徳性であれば、たとえ病気にかかってバスケットボールすらできない人であっても、自分が病床から起き上がって、精一杯努力して仕事をしようとすることでその強みの徳性を発揮できるでしょう。つまり、才能は生まれ持っての要素にも大きく依存しますが、優れた徳性を養おうと切望することは誰にでもできるのです。

それでは、人間にはどのような徳性が存在するのでしょうか。セリグマンとピーターソンの二人は徳性の分類法を作成するため、あらゆる分野の文献を解析しました。この解析対象分野は非常に幅広く、精神医学、青少年発達、徳性教育、宗教、哲学、組織研究、心理学、車のバンパーステッカー、死亡記事、表彰状、標語や信条、新聞の個人的な広告、落書き、タロットカード、ポケモンのプロフィール、ハリー・ポッターに出てくるホグワーツ寮の廊下の様子などから、美徳に関するメッセージを調査しています。
この解析の結果、徳性は24種類に分類されることが分かりました。また、この24種類の徳性自体も、以下に示すように大きく6種類の枠組みで捉えることができます。

  • 知恵:知識の獲得・利用に関する強み

  • 勇気:外的・内的に関わらず、反対があった時に、目標を達成しようと意思を行使する強み

  • 愛・人間性:対人関係に関連する強み

  • 正義:公共心のある人間として持つ強み

  • 節度:行きすぎた行動を防ぐための強み

  • 超越性:より大きな世界観へとつながるための強み

VIA診断は無料で公開されています。下のURLからアクセスし、ぜひ自分の強みとなる徳性を診断してみてください。

興味

興味に関するテストで有名なものの一つに、ストロング職業興味テスト(SVIB: Strong Vocational Interest Blank)があります。このテストでは、回答者には何百もの活動(「美術館を訪ねる」「切手を収集する」「ゴルフをする」など)の一覧表が与えられ、各項目について好きか、嫌いか、無関心かを回答します。この回答は様々な職業に就いて成功している人々による平均的な回答と比較され、その結果、各職業に対する適合度が算出されます。

また、興味に関する系統立てられた研究としては、ジョン・ホーランドによる研究が有名です。興味テストと職業選択に関する多くの研究から、ホーランドは仕事に関連した興味と、人々が得意とする仕事の種類に関して、次の六つの基本的なタイプを特定しました:

  • 現実的なタイプ:物、道具、機械、動物を扱うことを好む人。機械技師、整備士などに向いている。

  • 調査好きなタイプ:物理的、生物学的、文化的な現象を観察して調べるのが好きな人。科学者、ジャーナリストなどに向いている。

  • 芸術的なタイプ:芸術作品を創造するのが好きな人。小説家、音楽家などに向いている。

  • 社会的なタイプ:教えたり、訓練したり、育成したり、病気を治したり、啓発するなど他の人と共に働くのが好きな人。ソーシャルワーカー、教師などに向いている。

  • 企業的なタイプ:組織的な目標や、経済的利益を目指して努力するのが好きな人。販売人、株式仲介人などに向いている。

  • 型にはまったタイプ:データの機械的操作や記録の保存が好きな人。会計士、図書館員などに向いている。

ポジティブ感情

喜びや楽しみといったポジティブな感情を抱くことは、それだけが幸せの必要十分条件でないにしても、数多くの幸せに関する定義に登場します。この章では、まず「感覚」と比較した場合における「感情」の言葉の意味や具体例を述べた後、ポジティブ感情の効用に関する理論として最も有名な拡張・形成理論について述べていきます。拡張・形成理論は、ポジティブ感情が社会的に成功するにあたっても重要であることを理論的に支える役割も果たします。次に、ポジティブ感情を抱きやすい楽観的な人の特徴と、楽観的になる方法について述べます。最後に、ポジティブ感情を引き起こす有名なものとして、フローについても取り上げます。

感覚と感情

感情と似た言葉として、感覚という言葉があります。両者は人によって使い方やニュアンスが異なるものの、ポジティブ心理学の分野では区別して使われることが多いです。
「感覚」は通常、一時的なものとして認識されます。ポジティブな「感覚」の具体例としては、チョコレートを食べたり、ビールを飲んだり、ドラッグを使用したり、マッサージを受けたりした時に感じるものです。
一方で「感情」とは、感覚より長続きします。また、特に「ポジティブな感情」は永続的な個人的資質の育成に結びつくものが関連づけられることが多いです。ポジティブ感情の例としては、喜び、楽しみ、希望、誇り、興味、愛、思いやりといったものが挙げられます。

拡張・形成理論

「人間は進化の過程でなぜポジティブ感情を持つようになったか」という疑問は、感情を研究する心理学者にとって大きな謎の一つでした。それに比べて、ネガティブ感情の効用は明確で、恐怖や怒りなどは特定の行動を誘発することが知られています。私たちは恐怖により「逃げたい」と思い、怒りにより「攻撃したい」と思い、嫌悪により「嘔吐したい」と思うように、ネガティブ感情は行動と紐づいています。それとは対照的に、ポジティブな感情、例えば喜びなどは人を活動的にするかもしれませんが、ネガティブ感情に比べるとより漠然とした行動にしか紐づきません。

この長年疑問であったポジティブ感情の効用について研究を行った代表的な人物が心理学者バーバラ・フレドリクソンです。
フレドリクソンは実験により、ポジティブ感情を経験している人は、より幅広い注意力や、より優れた作業記憶、強化された言語運用能力や、情報に対してより柔軟性を示す、といった認知的変化を示すことを明らかにしました。ネガティブ感情が人間の行動を引き起こし、選択肢を狭めるのに対して、ポジティブ感情は選択肢を広げ、より長期的な未来のための洞察を可能とするのです。このフレドリクソンの理論は拡張・形成理論という名前で、ポジティブ心理学の内外で注目を集めています。

特にこの理論は、特に幸せと愚かさを結びつけて考えている人には衝撃的なものです。人にはよるものの私たちの中には、どことなくハッピーな人はバカで、悲しみに満ちた人の方が賢いのではないか、という観念を持っている人がいます。しかし、拡張・形成理論から考えると、ポジティブ感情を持ちやすい人はより柔軟で、創造的で、知能面でも有利となります。
実際に別の研究では、幸せな人と不幸せの人のそれぞれの特徴について、本人たちからの自己報告に加えて、他者によるより客観的な報告から解明された特徴と比較したところ、幸せな人の方が学校でも職場でも成功していることが分かっています。この研究は拡張・形成理論による有能さの促進を支持していると言えることでしょう。

楽観性

私たちの中には、同じ出来事を経験してもポジティブ感情を抱きやすい楽観的な人と、ネガティブ感情を抱きやすい悲観的な人がいます。前節のようにポジティブ感情を持つ人が社会において有利であるなら、私たちはどのように楽観的になることができるのでしょうか。

楽観的になるための方法の一つとして、自分の説明スタイルを観察し、変更する方法があります。説明スタイルとは、過去に起きたポジティブ、ネガティブな出来事の原因や影響を説明するスタイルのことです。楽観的な人は良い出来事に対し、内的で、永続的・普遍的な説明を与えることが多く、逆に悪い出来事に対しては外的で、一時的・限定的な説明を与えることが多い傾向があります。悲観的な人は説明スタイルがちょうどこの反対となります。
例えば、試験に合格したときのことを考えると、楽観的な人は自分の能力を褒め称え(内的)、他の試験も合格できるだろう(永続的・普遍的)と考えますが、悲観的な人は、試験が合格できたのもたまたま運が良く、問題が簡単だったとして(外的)、今回は合格しても次の試験では落ちるかもしれない(一時的・限定的)と考えます。
普段の考え方や態度を観察し、悲観的な説明スタイルが出てきたら、それに反論することにより、楽観性を獲得できることが可能だとされています。この方法は反論法と呼ばれています。

楽観的になることは有益ではあるものの、注意点もあります。それは、過度に楽観的になりすぎると、悪い状況について最小限に評価をすることで、その重要性を否定するまでになってしまうことです。極端な例を挙げれば、パイロットが氷混じりの暴風雨の中で飛行機を離陸させるか判断させる時に、楽観性が望ましいとは言えないことでしょう。いくら楽観的になろうとしても、世の中には本当に悪いこともあるのです。では、私たちはいつ楽観的でない考え方をするべきなのでしょうか。
心理学者のサンドラ・シュナイダーは、現実的な楽観主義と非現実的な楽観主義を比べて詳細に述べ、「あいまいな知識」と「あいまいな意味合い」の違いを説明し、現実把握の重要性を強調しています。
「あいまいな知識」とは事実を知らないということで、「あいまいな意味合い」とは解釈に幅があるということです。楽観性はあいまいな知識を扱うには向いていません。例えば、自分のコレステロール値を正確には知らないのに、自分には心臓疾患の心配を決めつけるのは理にかなっていないでしょう。一方、人生で起こるたくさんの状況は、実際のところ自由に解釈することができます。そしてその解釈にこそ、楽観性が効果を発揮するのです。

フロー

フローは心理学者ミハイ・チクセントミハイにより提唱された概念であり、エンゲージメントと呼ばれることもあります。またスポーツにあたってはゾーンともいう名で有名です。このフローとは、高度に没頭する活動を伴う精神的な状態であり、完全な集中力をもって人と行動とが融合した状態であるとも言えます。フローに至る行動は多様であり、仕事、勉強、読書、スポーツ、ダンス、芸術の創作活動などの趣味、人との交流といった活動がフローを引き起こす代表的なものです。
フローが起きている最中は、多くの場合自己意識がなくなり、感情を超越した状態になりますが、フローが起きた後ではポジティブ感情が増加することが知られています。そのため、フローは幸福に至るための重要な要素としてポジティブ心理学において盛んに研究が行われています。
フローに至るためには、課題とスキルの両方が高いレベルで、限界まで力を出す状況が必要です。課題がスキルを上回っているとストレスを感じてしまい、逆にスキルが課題を上回っていると退屈さを感じてしまいます。フローを経験するためには、スキルと課題が最適な均衡状態になければならないのです。

人間関係

人間関係についての研究は心理学の中でも重要視される分野であり、ポジティブ心理学もまた同様に人のつながりや愛に重きを置いています。
今回の記事では、そのような研究の中でも「人間関係の構成要素とは何か」という点に注目したものを3つほど紹介したいと思います。

愛のトライアングル理論

心理学者ロバート・スタンバーグは愛を構成する要素についてまとめた、愛のトライアングル理論を唱えました。この理論では、愛とは以下の3要素が合わさったものであるとしています:

  • 親密さ:自己開示や、相手との感情や思考の共有

  • 情熱:性的興味や欲望

  • コミットメント:特定のパートナーと一緒にいようという決断

そしてこれらの各要素は、あらゆる人間関係においてどれかが強かったり弱かったりして、8タイプの愛情(非愛、友情、心酔、虚愛、友愛、愚愛、情愛、完全愛)に分かれます。
愛のトライアングル理論では、1つだけの要素を基礎とした関係は、2つ以上に根差した関係よりも長続きしないと主張されています。3つの要素がすべて合わさった完全愛は理想の関係ですが、わずかな人しか獲得できず、それを維持できる人はさらに少ないといいます。

マインディングモデル

ハーベイらによる研究では、よいパートナーシップに必要な5つの構成要素を明らかにし、マインディングモデルという名でまとめました。以下がそれぞれの構成要素です:

  • 知ること、知ってもらうこと:
    お互いをよく理解し合うための行動で、考えや気持ち、態度、過去の歴史について質問したり、打ち明けたり、分かり合ったりすること。

  • 適切な原因分析:
    パートナーの行動について適切に原因分析すること。

  • 需要と尊敬:
    敬意を持ってお互いの話を聞き、相手の反応を受け入れ、妥協点を見出そうとすること。

  • 互恵性:
    お互いの存在がお互いにとって利益となっていること。

  • 継続性:
    お互いの関係性を、新たな情報や性格の変化、ライフサイクルと共に調整していくこと。

ヨハネの黙示録の四銃士

上記の二つの研究は「良い人間関係」に関する研究でしたが、それとは反対に人間関係を崩壊させる要素についても研究がなされています。心理学者のジョン・ゴットマンジュリー・ゴットマンの二人は、離婚を90%の正確性で予測することのできる4つの要素を特定し、ヨハネの黙示録の四銃士と名付けました。この名前は、それぞれが地上の4分の1を支配する権力や、地上の人間を殺す権力を与えられているヨハネの黙示録の四銃士からとっています。以下がその四要素です:

  • 批判:相手の悪いところを取り上げ、「いつも」や「まったく」といった言葉で文句を言う。

  • 軽蔑:敵意や冷笑、嫌悪感に加えて、批判をさらに一段階上げる。

  • 防衛:「自分は悪くない」と身を守り、責任を取ることを避け、言い逃れをする。

  • 無視:聞く耳を持たず、会話にも加わらない。

ストレス・困難への対処

人生は良いことだけではありません。ストレスや制約、困難、喪失、老いや死といった人生の大きな変化は、避けることができない逆境も数多く存在します。この章では、このような逆境に関する研究として、コーピング、防衛機制、レジリエンスをそれぞれ紹介したいと思います。

コーピング

私たちはストレスを感じると様々な方法を使って、困難な状況に対応します。この対処法は大きく、以下の3つのグループに分類することができます。

  • 問題焦点型コーピング:
    ストレスの元凶に働きかけ、解決のために行動すること。

  • 感情焦点型コーピング:
    問題が私たちに抱かせる感情に注目し、対処することで、自分の感情を上手に消化しようとすること。

  • 回避型コーピング:
    問題の存在を否定し、頭の中から追い出そうとすること。

どの対処方法が最適かは状況によって異なるため、最適なコーピングの選択を意識することがストレスの対処にとって重要となります。

防衛機制

コーピングが意識的に行われるものであるとすれば、人生のストレスから回復させるための無意識の機能も私たちは備えていると唱える心理学者もいます。このような機能は、精神分析学者によって見出され、防衛機制と呼ばれています。
防衛機制の例としては、予期、連帯、ユーモア、自己主張、自己観察、昇華、抑制などがあります。これらの防衛機制は、年齢を重ねるにつれて発展し、より効果的になる傾向があるとされています。

レジリエンス

レジリエンスとは、心理学者マイケル・ラターにより提唱された概念で、ラターによると「深刻な危険性にも関わらず、適応的な機能を維持しようとする現象」と定義されます。つまり、レジリエンスが高い人間は、ストレスフルな状況にあってもそれを耐え、適応的に生きることを可能とする耐久力・抵抗力・柔軟性をもっています。反対に、レジリエンスの低い人間は、ストレスフルな状況に対して耐えることが困難で脆弱であり、PTSD(PostTraumaticStressDisorder; 心的外傷後ストレス障害)などの精神疾患にもなりやすいとされています。

レジリエンスを構成する要素は非常に多いですが、代表的なものとして、の開発したレジリエンス尺度の4因子が挙げられます。この説明によると、レジリエンスは以下の4つの要素で構成されているとされています。

  • 「I AM」:自身の良い所も悪い所も受け入れていく力

  • 「I HAVE」:他者との信頼関係を気付き、ネットワークを広げる力

  • 「I CAN」:さまざまな困難・問題を解決していく力

  • 「I WILL」:目標を自身で設定し、そこに向かって進んでゆく力

レジリエンスを高める方法として有名なのが、心理学イローナ・ボニウェルが認知行動療法をベースに開発したSPARK(スパーク)レジリエンス・プログラムです。このプログラムでは、困難や強いストレスを感じる経験に遭遇した際、その出来事を以下の5つの要素に分離して認知する習慣を身につけることを目的とします。

  • Situation:何が起きたか事実に目を向けて状況確認すること。

  • Perception:怒った出来事を感情を入れずに受け止めて、解釈すること。

  • Auto Pilot:解釈によって自分の中でどのような感情が自動的に生まれてくるかを把握すること。

  • Reaction:上記を踏まえて自分の捉え方のパターンを認識し、そのパターンがどのように行動に影響するのかを理解すること。

  • Knowledge:その状況から何を学んだかを理解すること。

以上のサイクルを繰り返すことで、自分の考え方に柔軟性を持たせたり、レジリエンスを鍛えることがSPARKレジリエンス・プログラムの目指すところです。

なお、上記の説明の途中で「自分の捉え方のパターン」という言葉が出てきました。ボニウェルはこのパターンについて、7種類の捉え方に関する思い込みを紹介しています:

  • 批判:他人を非難しがちで、あいまいな状況を嫌う。ものごとを極端に考える。白黒をはっきりさせたいタイプで、周囲に不満を持ちやすい。

  • 正義:何が公平で正しいかを気にしがち。自分の意見を曲げず、「⚪︎⚪︎すべきだ」という思想を持っている。

  • 負け:自分と他人を比較し、落ち込むことが多い。比べられること自体を恐れ、人前に出ることにも臆する。

  • あきらめ:自分で状況を変えられると思っておらず、何をするにも「自分にはできない」と決めつける。

  • 心配:将来に対して悲観的で、何かうまくいかないとことがあると、すべてがうまくいかないのではないかと心配する。

  • 謝り:問題が起きると、自己関連づけをしてしまいがち。自らを責めた結果、自己評価や自尊心を下げる。

  • 無関心:何事にも関心を示さない立場をとる。面倒なことを避けようとするため、自分と周囲の意欲を喪失させる。

SPARKのサイクルを回すときには、自分の捉え方のパターンが上記の7種類の思い込みに捕らわれていないかを気にかけながら行うと効果的です。

ポジティブ心理学の実践

前章までは幸せに関する理論的側面について主に述べきました。この章では日常生活で幸せに至る実践方法を紹介したいと思います。
通常、心理学において、特に悩みや病気、障害などを抱えた人を理解し、支援することを目的とした臨床心理学においては、心理学的な知見を用いて患者と関わることを「心療」や「カウンセリング」と呼びますが、ポジティブ心理学において、人々を幸せにし、精神をより健康的に導く方法はエクササイズと呼ばれることが多いです。
世の中には幸せになるための数多くの情報が出回っていますが、その科学的妥当性について検証された例は多くありません。以下では、ポジティブ心理学において統計学的に有効であると証明されており、かつ比較的取り組みやすいエクササイズをいくつか紹介したいと思います。

3つの良いこと

毎晩寝る前にその日を振り返り、自分にとって良かったこと3つをノートやスマホに書き出した上で、「その良かったことが生じるために自分が果たした役割」を考えるというエクササイズです。良かったことについては些細なことでかまいません。「晩御飯が美味しかった」ということや「空が青くて綺麗だった」といったことでも大丈夫です。空が美しいことに自分が果たした役割などないと思うかもしれませんが、「自分が空の美しさに気づくことができた」というような内容でも充分でしょう。
このエクササイズを行うと、少なくとも6ヶ月以上は幸福感が増し、落ち込みが軽減されることがセリグマンらの研究によって判明されています。

積極的・建設的反応

会話において、相手の言葉に対する反応の仕方は、それが積極的か消極的か、また建設的か破壊的かにより、以下の4パターンに分かれると言われています。

  • 消極的・建設的反応:
    もっとも起こりやすい反応。相手の成功は認めるものの、積極的な会話の発展や感情表現はほとんどない。例えばパートナーが昇進したことを聞いて「よかったね!おめでとう!」と言って、終わるようなケース。

  • 積極的・破壊的反応:
    嫉妬や妬み、怒り、不安といった要素から、相手に対し積極的にネガティブな感情を見せること。例えばパートナーが昇進したことを聞いて「仕事に取られる時間が増えるけど、今以上に家族と過ごせる時間が少なくなるの?」と言うケース。

  • 消極的・破壊的反応:
    相手の会話を無視し、相手の成功の価値を損なうようにすること。例えばパートナーが昇進したことを聞いて「そんなことより、夕食はまだ?」と言うケース。

  • 積極的・建設的反応:
    相手の話によく意識を向け、耳を傾け、質問をし、興味を持つような反応。例えばパートナーが昇進したことを聞いて、共に大いに喜び、盛大に成功を祝うようなケース。

相手との関係性を良くするのは、もちろん積極的・建設的反応です。自分が大切に思う相手の身に起きた良い出来事に対して、相手が自分に話してくれるたびに、その話に注意深く傾けることは、ポジティブ心理学において効果が実証されているエクササイズの一つとなっています。

自分の強みを特定する

先に述べた「価値観・強み・興味から見た幸せ」の章において、強みを特定する診断方法としてVIAを紹介しました。以下にURLを再掲します。

このVIA診断は無料で行うことができ、この診断を受けると自分の上位の強みがわかります。これを書き留めておき、その後、1週間、それらの強みを活かす機会を増やすようにし、どんな気持ちになるかを確かめてみましょう。このエクササイズは持続性は長くないものの、短期的には劇的に気分を向上させてくれることが知られています。

ちなみにこの診断、今回の記事を作成するにあたり自分でも実施してみました。自分の場合はなぜか日本語版がうまく表示されなかったため、英語版の診断をGoogle翻訳を使いながら実施しました。それでも所要時間は20~30分ほどです。
自分の上位の強みは「好学心」「好奇心」「用心深さ」「見通せる力」「創造力」でした。好学心や好奇心はなんとなく自分でも分かっていたのですが、「用心深さ」や「見通せる力」はグループを率いるときの長所ともなるとの解説があり、あまりリーダーシップを発揮するのが得意ではないと思っていた自分にとっては意外な結果でした。
みなさんもこの診断を行ってみると、自分の意外な強みが見つかるかもしれません。

新しい方法で強みを活用する

このエクササイズは、一つ前のものをさらに一歩進めたもので、難しくはあるものの効果ははるかに持続することが知られています。まずVIAにより自分の強みを特定した後、7日間毎日、上位5つの強みを今まで試したことがない方法で活用する、というのがこのエクササイズです。新しい状況や、新しい人に活用するのでもかまいません。例えば強みが「好学心」であれば、今まで興味を持っていたトピックについて2時間ほど調べてみる、といった具合です。

セイバリング

日常生活の中のポジティブな出来事を見つけ、意図的にその行動に焦点を当てて「味わう」ことをセイバリングと言います。例えば毎朝コーヒーを飲む時、今日やることを考えながらコーヒーを飲むのではなく、最初の一口を味わう前に香りを楽しみ、体の中から温めてくれる熱い液体を感じながら、時間をかけて味わう、というように、その体験に完全に没頭するのがセイバリングです。このことまた幸福に効果があることが統計学的にすでに検証されています。

運動

運動は不安やストレスを減少させたり、高血圧、糖尿病、心臓病、不眠症、肥満、認知症のリスクを低下させます。また心理学の研究においては、幸福感を高める要因として、運動がすべての活動の中でも最も有力であろうとも言われています。
過去に「スタンフォード式人生を変える運動の科学」という本から、運動の効果やどのように運動を行うのがよりメリットがあるか、といったことをまとめた記事を出しています。興味のある方は以下も参考にしてみてください。

最高の自分をイメージする

このエクササイズでは、自分が理想とする、将来の自分のイメージを考えてください。何もかもが自分の望み通りに進み、目標といていたものが達成され、一番の潜在能力が発揮された状態を思い描きます。その未来の自分を書き出し、鮮明にイメージしてみましょう。このエクササイズを4週間にわたって続けると、楽観性が高まり、優先順位と目標との統合を助けてくれるため、幸福感の上昇につながります。

ポジティブな記憶を思い出す

このエクササイズは非常にシンプルで、やることは過去のポジティブだった経験を思い返す、というだけです。とはいえ、このことも幸福感をあげるのに有効であることが分かっています。
より効果的にエクササイズを行うには、良かった経験がなぜ起こったかの原因分析は行わずに、ただ記憶が蘇るままに回想する方が良いことが分かっています。ソニア・リュボミアスキーによる研究では、過去の経験を分析することでは幸福感はほとんど高まらず、一方で動画を巻き戻すようにして人生のポジティブな出来事をもう一度頭の中で体験すると、喜びが増進する、ということが実証されています。原因を分析するなど、細かいところに注目を向けると、かえってエクササイズの効果を損なうようです。

おわりに

以上、今回の記事ではポジティブ心理学の研究をまとめ、入門記事として紹介を行いました。
もしこの記事を気に入ってくださった方は、是非いいねを押してもらえると嬉しいです。それでは、最後までお付き合いくださりありがとうございました。

参考文献


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