見出し画像

【情緒】箸置きとお通し

箸置きとお通し。
たったのそれだけで好きになってしまう店がある。

今日はそんなお話である。
久しぶりのお酒で楽しい気分なのでそのままの気分を筆に乗せて自由に書こうと思う。

大衆居酒屋に行くと大抵、食事を注文するとお通しと箸、箸置きがおかれることがある。日本でよく見られる光景である。
海外で注文もしていないのに料理が出てくることや、こだわった箸置きがおかれることはない。

この箸置きとお通し、ここのこだわりがどれだけ感じられるかだけでそのお店がどれだけ良いか感じられる。今日はそんなお話である。

今日訪れたお店はまさにそうした箸置きとお通しの時点でこのお店は間違いなく良いと感じさせてくれるお店であった。ちなみに、妻は暖簾をくぐった瞬間のお店の匂いの良さにこのお店は間違いないと思ったらしい。みずみずしい感性をもった妻、やはりかなわないなと思った。

では、始めよう。
いただいた料理の紹介も交えつつ、箸置きとお通しについて歴史からひも解いてみたい。

お通しについて

まず、お通しについて。
その歴史は昭和10年ごろにさかのぼるらしい。
そもそもお通しが出る居酒屋の期限であるが、平安時代ごろから始まった日本の風習らしい。酒屋に「居座って酒を飲む」というところから居酒屋という名前が産まれたらしい。
平安時代はまだまだお酒の値段も高く庶民の手が届くようなものではなかったが江戸時代にだんだん酒の価格も下がり庶民にもなじみのある今の居酒屋という風習が広がった。

この居酒屋で出されるお通し。日本独自に風習であるがその習慣が始まった理由は複数あるらしい。

1つは、食事を注文されたお客さんに対して厨房に料理をお通ししたことを表すために生まれたというお店を回すための理由。確かに江戸時代に伝票を書いて何卓さんの料理はこれですーみたいな紙をバイトが書いて厨房に連携しているのは想像しがたいのでどの卓が注文通ったかを伝えるために軽い料理を出しておくのは理にかなっている。おそらく当時識字率もそんなに高くなかったのではないかと想像する。

もう一つはとても日本らしいなと思う理由であるが、おなかをすかせたお客さんがお酒をいきなり飲んでしまうよりもある程度おなかにご飯を入れることによってアルコールの毒素を和らげるというため。
日本にはチップ文化がない。欧州では普通であるチップ、店員さんのサービスに対してそれを評価するために金銭を渡す文化。
日本ではそうしたチップ文化はないが、このお通しはチップに似ている。が、考えてみると目的は違う。
チップはお客さんがいい値を決めることができる空気を読まなければ一銭も払う必要はないし、気に入ればいくらでも払うことができる。
ただ、お通しとなるとそういうことではない。
お店側が値段を決め気遣いとして提供する。
お客さんがいるいらないにかかわらず、お店の気持ちとして提供する。お金としてはお気持ち程度に一律同じ値段でもらう。

このサービスとしてのお通し、もともとはお金を取ることなんてしていなかったが、昭和時代ぐらいから200円程度をとるようになった。それでも当初のお店としてのサービス、お客さんをお待たせする間の料理として出す心意気を残しているお店はある。

箸置きについて

次に、箸置きについてである。
箸置きも考えてみるとあまり海外で見かけることはない。洋食でもフォーク、ナイフの下に置くのはナプキンだ。箸を机につけないだけであれば和紙やナプキンでよかったはずなのに、陶器で作られた箸置きをわざわざ編み出している。とても不思議だ。

調べてみると、箸はもともと神事の際に使われていたらしい。そうした神へのお供え物をするために使う箸を直接机や地面に置くのは失礼。そういうことで箸置きが産まれたらしい。
日本はいかに信仰深い国であろう。

こうした箸置きにしても、神様に捧げる食べ物やお客様に召し上がっていただく食べ物に触れる箸を地面につけないための日本の心遣いだと思う。

これもとても美しいと思わざるを得ない。

日本の美しさを体現するお店

こうした箸置きやお通しにどれだけこだわるか、それは背景も知っていないとできないことだと思う。
採算度外視でお客さんに美味しいお通しを食べてもらいたいとおいしいお通しを出してくれるお店、箸置きの大切さを理解しながら、そこに可愛さも持ち合わせて好きな箸置きをご利用くださいとチョイスをくれるお店。
そうした心遣いができるお店のごはんがうまくないわけがない。

箸置きやお通し。採算を考えれば以下にコストを下げるか考えるところにまで思いを巡らせることができるお店。そこにはお店の愛を感じられる。
そうしたお店にはまた行きたいと思わせる魅力がある。

お通しいらないって、目の前のコストを削減するためにいう人もいるが、お店との一つのコミュニケーションの形態を失っていると考えると悲しくなる。お店がお客さんのことを考えて出してくれているお通しなら断ることもできないしますますお店が好きになると思う。そうしたおもてなしの精神は日本人の持つ美しさの一つであると思う。

そうした美しさに気づけるような経験をこれからもしていきたい。

以上。読んでくださりありがとうございました。


控えめだけど相手のことを考えて考え抜いて動けることは日本の美徳であると思う。自分も半分日本の血が入った人間としてこの日本の文化に触れられていることをとてもうれしく思う。こうした文化的美しさに触れた際にはまたこうして書かせていただこうと思います。

p.s.
ちなみに飲んだお酒は以下。どれもとてもおいしかった。
いずれも辛口。これからもお酒をのんで楽しい気持ちで投稿するというライフスタイルを送っていくのも悪くないなと思った。Life is beautiful
・群馬泉
・こまぐら
・春鹿

この記事が参加している募集

日本史がすき

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?