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箱庭療法の歴史 ~「普通」の人のための箱庭療法の説明書②~

箱庭療法とは、砂が敷き詰められた内法57cm×72cm×7cmの箱の中にミニチュアを並べて自分の内的世界を表現するという心理療法である。

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私は箱庭療法が好きである。
箱庭療法をもっと世の中に広めたい。
特に、専門家や医療の対象となるような「特別」な人に向けてではなく、いわゆる「普通」の人に、箱庭療法を届けたい。
そのような思いから、箱庭療法という言葉を初めて聞く人に向けて、箱庭療法に興味を持ってもらえるような『箱庭療法の説明書』を書いてみることにした。

「普通」の人のための箱庭療法の説明書

今日は第2回。もし時間が許すようなら、第1回の記事から目を通していただけると嬉しい。


箱庭療法の歴史

今回は、箱庭療法の歴史について簡単に触れてみたい。

箱庭療法は、もともとイギリスで誕生したものを、心理学者の河合隼雄が日本に紹介したと言われている。

ただ、「箱庭」自体は、もともと江戸時代に庶民の楽しみとして存在していたものである。人々は、小さな箱の中に様々な人形やミニチュアの道具などを使って独自の風景や世界を楽しんでいた。

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さらにさかのぼると室町時代の「盆石」や平安時代の「州浜遊び」(ネットで画像検索してみると、たくさんの素敵な作品が紹介されている)にも箱庭遊びの源流を見ることができる。
そのようしてみると、箱庭療法は、日本人が古くから慣れ親しんできた『遊び』の歴史や文化が活かされる心理療法とも言えるだろう。

そうした歴史や文化の影響もあってか、日本の箱庭療法は独自の発展を遂げながら瞬く間に伝わり、世界各国と比較しても類を見ないほどの広がりを見せた。

その広がり方は、箱庭療法が日本の文化や考え方にフィットする心理療法であることを示していると言える。

何か新しい考え方や道具、食べ物などが海外から導入されたとき、日本にそれが広がる時と広がらない時がある。広がるか広がらないかは、日本の文化とフィットするかどうかが分かれ道となっている。

たとえば、タピオカは広がったけど、台湾カステラは広がらなかった。タピオカのモチモチした餅を思わせる触感は日本人になじみ深く、日本の文化にフィットするものだったためにタピオカは全国的に広がった。逆に台湾カステラは日本の文化とフィットするものではなかったために広がらなかった。

たとえば、民主主義は日本に広がったけど、独裁や共産主義は広がらなかった。寄合など、古くは室町時代から集団で色々なことを決定してきた日本の文化があったからこそ、民主主義の考え方がフィットし、特に大きな反対もなく広がっていった。
表面的には民主主義を掲げていても、実際には独裁のようなかたちになっている国家はいまでも数多く見受けられる。細かく見るなら日本の民主主義にも様々な問題はあるかもしれないが、他国のことを考えると、日本の民主主義はうまく広がっていった方ではないかと思う。

少し話が横道に逸れたが、総じて何が言いたかったのかというと、箱庭療法は日本人にとってフィットする心理療法だということである。

そんな、日本人の感覚にフィットする箱庭療法を皆さんによく知ってもらうために、次回からは箱庭療法の特徴について、少し掘り下げて見ていきたいと思う。

心理学にこれまで特に触れてこなかった「普通」の人に向けて。
「普通」の人が、「箱庭療法ってこんなもの」となんとなく理解できるところまで。
そして、「箱庭療法をやってみたい」という気持ちを引き出すことを目的として、ワクワクするような文章を書いてみたい。

なんとなく軽い気持ちで、お付き合いいただければと思う。

次回へ続く

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