25.花田さん、作!



「大島はさ、好きな人みたいな人いるの?」



咄嗟に出た一言が支離滅裂だ。


少し間が空いて、大島が答える。


「うん!」


「へぇ、、、。」


あ、いるんだと、勝手に少し落ち込んだが、そのそぶりを悟られないようにした。


「なんで?どうしたの?」


という大島。それに対してそれ以上は深堀したくないと思った、


「いや、なんでもない!忘れて!」


この「恋愛」という会話の内容をなかったかのように、少し大きめの声でシャットアウトするように返した。


もう、今は「大島には好きな人がいる。」という、その事実だけで、脳のキャパを持て余す。それ以上は落ち込みたくないと思った。


隣の大島にはバレないそうに、鼻から深く空気を吸い込み、バレないようにゆっくりとため息をついた。すると、



ドンッ!


ドンッ!ドンッ!


大きな音とともに花火が打ち上がる。


バーン!ババババッ!


みんなで陣取った場所が良かったのか、とても良く見えた。


フミは人目もはばからず大きい声で


「たーーまやーーーー!!!」と叫ぶ。周りのお客さんたちも、色んな声をあげたり、写真を撮ったりそれぞれで盛り上がっている。


すると、おじさんのアナウンスの声が響く。


「次に打ち上がるのが、今年一番の特大の花部です。花田さん作!」


ズドンッ!!


バーーン!!ババババッ!!


この花火大会で一番大きい花火だ。さすがにその大きさと、円を描いて綺麗に弾ける花火に見惚れた。


「おお〜〜!!!」


「きれい!!」


大きな歓声が上がる。その時、大島が僕に向かって何か言った。


周りの声にかき消されて、何を言っているのか聞き取れなかった。


大島の口がただ僕に向かって何かをかたどった。


周りの声が少し収まったので、


「えっ?何??」


と聞き返した。でも大島は、


「ううん、何でもない!花火が綺麗だな〜って!」


と答えた。「そうだね!」と明るく返した。



全部の花火が打ち上がって不意に思った。

もう高校2年の夏か、と。なんて速いんだ、と。毎日、自分なりに無我夢中でスピード感のある日々を過ごしている。


が、まだ自分に自信がはっきりとは生まれない。うだつが上がらないのだ。自分でも分かるくらい。


勉強や部活、あんまり言いたくないが恋愛もだ。卒業するまでには、何かあるだろうか。何かがあれば良いと思う。もちろん、受け身ではいられないとこの一年で学んだ。自分の中では大きい学びだ。



たまに親や親戚は学生時代の思い出を大人になった今でも、鮮明に楽しそうに話す。




大人になった自分もそんな風に話したい。節々でそんなことを考えることもある。







でも今は必死で毎日にしがみつく。



第2章、完!


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