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7.反抗期



高校2年生、いわば青春、思春期の最中。うっすらと反抗期が来ている。


例えば、信号待ちの時、毎回信号にイラついてる。「信号、ぶっ飛ばしたい。」と常々。

ついでに小さいことで言うと、お母さんの小言だ。全部、うるさく聞こえてしまう。


自分には反抗期がないと思ってるが、多分コレがそうだ。

そして、暇さえあればコンビニや古本屋に行って、やらしめの本の表紙をチラ見しに行く。決してその本を手に取り開く勇気は持ち合わせていない。

イライラする気持ちと、いやらしい気持ちは表裏一体である。


それは、ちょっとした裏のストーリー。表のストーリーは、こうだ。


夏休み突入。高校に入って2回目のデッカな思い出期間だ。色恋をしたい時期ではあるが、今は部活のサッカーと隠れてやっているスーパーのアルバイトで今はいっぱいいあっぱいである。だがそれが辛うじて辛くはない。


初日から、体力作りの走りこみ練習。マックス練習だ。その日は、野球部がよく使っている、学校から15分離れたところにある、神社の通称「地獄坂」と言う所に行って走り込み。

神社にある地獄坂。誰が言い始めたんだろう。


1セット目が始まると、そんな気持ち微塵も頭から消えていた。


地獄。地獄よりはるかに地獄。何セットやるかは、教えてくれない。なんて意地悪な先生だろう。

ちらっとフミのほうを見てみると、自分の人生で今まで見た中で一番なくらい、「ハァハァ」していた。体の中の空気を一回一回、入れ替えてるのか?と言うくらい。

ハァハァしすぎて、笑ってるようにも見える。ふざけてるようにもみえる。表情豊かにふざけているようにみえる。


3年の先輩の会話が聞こえる、


「野球部のエースは、部活の練習がない日も、自主練でここに来てるらしいぞ。」


野球部のエースと言えば、同じクラスの井上だ。


一年の頃、密かに思いを寄せていた吉田さんを、すかさずモノにした男だ。しっかり自分のものにした男だ。井上に言いたい。吉田さんはものではないのだ。


エースになるやつの勝手なイメージだが、幼い頃からの周りの環境が良かったのではないか?とか、必要なものは全て揃っていたんじゃないか?とかという考えが、極々たまに頭に過ぎる。そんなんことないだろう努力の賜物だろうと思いつつ、そっちの考えがよぎってしまうのだ。僕は少し性格が悪い。


先輩たちの会話を聞くまでは、「ふーん、エースね。」と、ざっくりとしかエースへのイメージがなかったんだが、影の努力が、しっかりあるんだなと知った。


とても悔しいが、認めたくないが、凄いと思ったし、見直した。別に尊敬はしない。そこまでではない絶対に。


が、その会話を聞いてから、少しやる気になっている自分がそこにはいる。やる気というか、ムキになっているというか。何セットでもやってやろうと思った。それに、「体力がつきそうな坂だ。良い坂だな、この坂。」とポジティブに変換できた。


決して、吉田さんのことや、井上への対抗心とかではなくなった。本当だ。ベタではあるがピンチはチャンスだ。全部、自分の為。


坂を目の前にしたときに「うわ、、」とか「だるそう、嫌だな、、」と思ってしまっていた、その瞬間を、今の自分で取り戻す。でもその時に、そう思ったのも自分で、間違いというわけではない。よりよくしていく、と言う感じだ。


もう一度言って、クドイようだが、対抗心ではない。



心なしか少し、笑顔を浮かべて、走り込みに取り組んだ。先輩たちを追い抜くくらいの勢いで。


ただ、僕意外にも一人、ビッグスマイル浮かべて走り込んでいるやつがいたのは、言うまでもない。


練習が終わり、部員全員で固まって、学校まで

「もう、歩けない。」

「俺も。」

と言いながら、歩いて帰った。


家に着くと、お母さんが、

「汚れたものはすぐに、洗濯機にいれてねぇ〜〜!」

と言ってきた。それに対して、

「おわあああああーーーーん!!!!」


と返した。僕なりの、イラついた時の汚い言葉遣いをしない反抗の仕方。


その日の夕方からはバイトのシフトが入っていた。


今日の担当は、飲料水と冷凍食品の品出しだ。もう、バイトを始めて1年経つし、自分では勝手に「即戦力だな。」と思っている。


当たり前だが、冷凍食品の品出しは、めちゃくちゃ手が冷たい。軍手をしながらやっているが、無意味だ。


我慢しながら品出しをしていると、後ろの方から、


「おっす〜。」


振り返ってみると、大島由実がニコッとえ笑顔を浮かべて立っていた。


つづく





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