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日本の生徒が、ウクライナの子どもと交流してみた

9月のある日、「ウクライナの人と交流できるかも」という一言から始まった。友人のウクライナ人の協力の元の話だった。

アリ窓では、時事ネタをよく扱う。2月からのロシアによるウクライナ侵攻もその一つだった。そんな折、僕はウクライナ人のターニャさんと出会った。ダメもとで提案してみたところ、非常に快く引き受けてくれた。アリ窓お家芸のご縁企画となった。

驚きは探求の第一歩!

僕は、子どもたちの「そんなまさか!」という表情がたまらなく好きだ。今回も非常に忘れ難い表情を見せてくれた。まさか自分たちがテレビの向こうの世界の人と話ができるなんて!

こういう表情の時は、チャレンジを出すチャンスだ。「みんなでウクライナについて調べてみようよ」そう言うと翌週から、みんなが各自思い思いの調査結果を報告してくれた。料理人を目指す一年生は、紙いっぱいにウクライナ料理を書いて紹介してくれたし、論理的思考の強い三年生はウクライナ語についてスライドを作ってくれた。六年生はウクライナの有名な飛行機が、戦争でどうなったのかを、アニメーションを駆使しながら上手に説明してくれた。

自分で調べて、伝えることで、その知識はどんどん自分のものになる。それが探求であるし、自分ごと化の第一歩である。

現地の同世代と何を話すか

「交流会」と言っても、何をするかが重要な問題だった。そこで僕たち大人はその企画を高学年に任せることにした。いどん(スタッフ)が用意した企画書のフォーマットをベースに、各高学年クラスが思い思いの企画書を作り、他クラスのものを取り込みながら段々と一つのものに仕上げていった。

目的は「日本人との交流を楽しんでもらいたい。少しでも癒しになりたい」というものになり、そのためには何ができるのか。ブレストを重ねて、話し合いを繰り返した。

最終的に、「両国の日常がわかるよう」に、身の回りのものをあるお題に合わせて持ってくると言うゲームや、両国のイメージや質問をする時間を設けることとなった。

子供たち自身で企画をしてもらうことで、企画自体が自分のものとなった。誰かに提供されたものを享受するだけでなく、作り上げるという経験ができた。結果、子供たちによる、子供たちのための企画となった。


ネットで検索しても出てこない「圧倒的リアル」

11月5日、ドキドキの中で企画が始まった。第一部はターニャさんによるウクライナ講座だ。高学年対象でありながら、一年生を含むみんなが参加してくれた。これまでもウクライナについてたくさん調べたし、たくさん話した。でも、それでも得られなかったリアルがターニャさんのお話にはあった。故郷が重要拠点の街で、戦闘が激しかったこともあり、友人が亡くなった話や、ご両親が地下の物置で空襲をやり過ごした話など、一つ一つがとても生々しかった。

当事者の言葉には、圧倒的リアルがある。いかにネットで情報を得られるようになっても、当事者のリアルには決して敵わない。zoomの画面の向こうでは、保護者と生徒が話し合っている姿も多く、いろいろと話しているのが伺えた。


ウクライナについて話してくれたターニャさん。


交流して初めて知る「違う世界」

そして第二部はいよいよ交流会。通訳として、ターニャさんのご友人のウャチェスラブさんが駆けつけてくれた。そして続々と入室してくるウクライナの生徒たち!全く聞き取れないウクライナ語。さっきまで日本語を話していたターニャさんの流暢なウクライナ語でのコミュニケーションを見て「ウクライナ語すげぇ」と言う声が聞こえてきた。総勢40名強の、小さなウクライナと小さな日本が同じ場に会した瞬間だった。

練りに練った企画は、無事に進み、それぞれの国の様子や個人の好きなもの、ハマっているものなどの話が出た。アニメが好き、機械が好き、絵が好き、アクセサリーが好き。「こんな料理があるんだ」と言われれば、「それ僕調べた!!見て!」と調べた資料を見せる。「それそれ!すごいなあ」と返される。そこにあったのはまさに同世代同士の姿だった。

戦争が終わったら来て

最後、感想を共有する時間では、それぞれがそれぞれの国に行ってみたい!という話になった。そのとき、7歳の女の子が「ウクライナはいい国だよ。でも今は戦争だから、よくないの。だから戦争が終わったら来てね。」と話してくれた。純粋で真っ直ぐな言葉だった。

この子たちの国は間違いなく戦場なのだと、改めて思い出し、悔しいような悲しいような気持ちになった。一部の大人の身勝手さがこんなにも多くの人を不幸にしている。この感覚はネットでは絶対にわからない。

ターニャさんの実家にて。平和の願いを込めて植えた桜の木。

自分ごと化の兆し

交流会が終わったあと、高学年の授業があり、そこで感想を話し合った。みんなそれぞれが感じることが多かったようだった。その流れで「何かできないかな」と言う声があり、「何ができるんだろう?」と言う話になった。ある子が「募金とかさ、どうかな」と言うので「じゃあ、クラファンやってみる?」と提案してみた。

「え、何それ!!」と、また大好きな顔が見られた。


さて、ここまでが今回の話だ。大人の僕らはというと、実はここからプロジェクトにつながらないかとワクワクしている。さあ、彼らはどうするか。今週の対話が楽しみでしょうがない!!

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