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祀りと古文書


京都御所のほど近くに、冷泉家の時雨亭文庫が

あります。

表門には亀像の瓦が、狛犬のように阿吽

(あうん)の一対になっています。

京都御所の北方に位置しているため、

玄武神で守護されているのです。

阿吽は梵字の「ア ‐フーム」の音写です。

阿は最初の音声で、すべての字音は阿を

本源とし、吽は字音の終末として

阿吽で万物の始源の意味です。


冷泉家は藤原俊成、定家を始めとする

和歌の宗家です。藤原定家は新古今和歌集の

撰者として知られています。

歌会が行われる座敷の襖には牡丹唐草の唐紙が

貼られています。庭には東に紅梅、西に橘が

植えられていますが、東に桜ではなく梅なのは

国風化する前の中国の古制に則るものです。


台所棟は禅院に似た建築となっています。

土間の正面には「しゃぐま」と称する藁束が

ありますが、祇園祭の長刀鉾に使われたものを

例年、祭礼後にいただいて魔除けとして

飾られています。

土間には飾りの竈(かまど)があり、榊が供え

られています。竈の神さまを祀っているのでし

ょう。


冷泉家には御文庫というしっくいの土蔵に

典籍や古文書を収めています。

この御文庫は京都の天明の大火の折りも

免れたものです。

京都の大火を描いた襖絵には、火がもくもくと

渦巻きのような炎で描かれています。

神が天明の大火から御文庫を免れさせたの

でしょう。

御文庫は神殿のように神格化されており、

容易に御文庫に近づくことは、禁忌とされる

そうです。







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