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賀茂の競べ馬

賀茂の競べ馬は、立夏の日。
菖蒲の根で頓宮を葺き、白装束に菖蒲の根を纏います。
競べ馬たちは古式ゆかしい馬装で整えられます。
競べ馬では舞楽の装束で乗るのです。
天下泰平、五穀豊穣の祈願のための
平安時代の宮中行事が伝承されています。
賀茂の競べ馬を催すのに、荘園を寄進されたそうです。
競べ馬は競馬のサラブレッドの中でも清い馬が選定されますが、馬にも以心伝心で言葉が伝わるのです。駿馬が語りかけ、通り過ぎる瞬間にまなざしを定めています。

柏餅には太陽の記号が記されていました。
和菓子に記号…符号を記し、 包を解いてから記号が判明するという宮中行事があっても良いのではないかと考えられます。
賀茂の競べ馬は徒然草にも記されています。


五月五日、賀茂の競べ馬を見侍りしに、
車の前に雑人立ち隔てて見えざりしかば、
おのおの下りて、埒(らち)のきはに寄りたれば
殊に人多く立ち込みて、分け入りぬべきようもなし。かかる折に、向かいなるあふちの木に、
法師の、登りて、木の股についゑて、もの見るあり。取りつきながら、いたう睡りて、落ちぬべき時に目を醒すこと、度々なり。

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五月五日に賀茂神社の競べ馬を見に行ったの
だが、牛車の前に人が立ちふさがっていて、
競べ馬を見ることができないので
向いにあるセンダンの木に、法師が登って木の枝に座って見物するが、たいそう眠たい様子で落ちそうになり、目を覚ますことが何度もあった。

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今でも、競べ馬の広場の向いには、センダンの木があります。こんもりと茂っており、木の枝からは見物が難しそうです。
競べ馬を芝生席で観ていると、徒然草の法師の
ように午睡の境地に至りそうでした。
テント席から観る空間と比べると、
芝生席からは限りない宇宙空間のような空間に
感じられました。


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