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別府の思い出

3泊4日の湯治生活を終え、関西に戻ります。
8月は奈良滞在わずか3日間の旅人生活を送っていました。
鉄輪温泉のお湯と朝晩の冷たい空気が心も身体も整えてくれました。
次は冬に会おうね。
昨晩、普段予約が取れない宿がその日に限って、貸し切り状態で満開の月下美人を独占できたことは忘れられない贅沢な思い出です。

月下美人
香りも真夜中に人を魅了させます。


それともう一つ、忘れ得ぬ女の子との出会いがありました。旅の最後に、今まであえて選択肢から外していた某有名温泉へ行ったのですが、一緒にお風呂に入って話した女の子のこと。


いつも観光客で混み合うという竹瓦温泉ですが、その日は偶然その子と私だけでした。
先に入浴していた、美人なその女の子が、初対面の私に人懐っこく話しかけてくれて、

何となくですが、雰囲気が自分に似た所があるな、と直感で感じてしまいました。
その子の方が遥かに美人という点を除いては…。

その子は自分のことを一杯話してくれました。

温泉が大好きな事とか、道後温泉に行った事とか、
温泉ソムリエの資格の事とか。

職場でパワハラを受けて失業中で今も仕事が決まらない事とか、
お局さんや上司に嫌がらせを受けたこととか
変わってると言われることとか、
陰キャで、女の子の集団が苦手ということとか、

学生時代進学校でいじめに遭って、高校辞めた話とか。休み時間、一人で本読んで過ごしてたこととか。

ふと見るとその子の腕には沢山のリストカットの跡がありました。最初は、ただの人見知りしない可愛い女の子と思っていたら、話すうちに、色々心に身体に傷を負って今まで生きてきた事が感じられるその女の子。

私なんか、と自信なさげで、自己肯定感が低くて、社会の不条理さにもがき苦しみ、でも何とか頑張って生きようとしている感じでした。

「何の仕事やってるんですか?」って聞かれたから、
「学校で働いてるよ。」と言ったら、
「学校のお掃除ですか?」と言われたのが心に残ってます。
さっきした話で、その子は高校辞めてから、お掃除の仕事をして来て、職場でいじめに遭ったって話してたな…。
ずっと掃除の仕事をしてるのかな…..。

私も学校で昔いじめられててボコボコにされてた話とかして、いじめられないように、自分を守る術で勉強頑張った話とかしました。
高校の卒アルでは一度も笑ってないことも、
高校が嫌いだったことも。

脱衣所で、「今年29歳になるんです。」
そう言った彼女に
「30代は20代より楽しいよ。私はそうだったから。」
と答えました。
…少しは励ませたのかな?

「色んな場所に行って綺麗な景色一杯見てね。」
そう言った私に何て返事していいのか分からず、「さようなら」とはにかむように答えたあの子は、
気がつくともう温泉を後にしていました。

その温泉が好きで毎日入りに来ているというあの子が、
どうかいい30代を送れますようにー。
別府のお湯があの子の心と身体を整えてくれて、
願わくば、今いる過酷な世界から別の世界に踏み出せるいい出会いが、彼女のこれからの人生で沢山ありますように…。
職場の理不尽なおっさんやお局ババア言われた事なんか気にしなくてええんやで。

そして、彼女のような10代で挫折を背負った子が、
もう一度自分らしく歩み出せる機会に恵まれた社会でありますように。

もう一度、気兼ねなく学び直せたり、好きなことを探すチャンスがあれば、
きっとやり直せるはずだから。人生何とかなるもんだから、多分ね。

8月の旅の終わりの忘れられない別府での思い出ー。
また会えるかな?
それまで、辛いことあってもいいお湯が支えてくれるから、頑張って生きてね。

名前も知らないあの子に思いを馳せながら関西に帰ります。


さんふらわあからの朝焼け

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