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好きな先輩。


恋心とは違う。

けれど、何て言うか……

大好きなお兄ちゃん!という感覚の
好きな先輩が居ました。


同じ部活の先輩で、私の兄とは同級生。

いつも笑顔で、前向きで、
冗談が好きで、図々しくて、

何だか憎めないズルい人。


中学時代の部活の仲間とは
今も集まって呑んだりする。 

先輩とは学年が二つ違うから
なかなか会う事もないけれど、

いくつになっても
私の中では変わらない存在で……


私からしたら先輩は、
部活の先輩であり、兄の友人でもあり、 
程好く甘える事が出来て、

そんな適度な距離感が心地好かった。


コロナ禍となり、
なかなか皆で集まる事も出来ず、

先輩とはSNSで繋がってはいるものの、
特に記事を投稿する訳でもなければ
反応を送り合う訳でもなく……


ただ、先日SNSの通知で
先輩が誕生日だという事に気付いたから
何と無くお祝いのメッセージを送ってみた。 


すると、先輩から、


「最近の俺の事、何か聞いてる?」

そんな意味深な返信が来た。


その文面は明らかに
先輩に何かが起きた事を意味していた。

胸騒ぎがした。 


先輩に個人的に連絡をする事なんて
殆んど無かったけれど……

どうしても気になったから
勇気を出して連絡をしてみた。

心配する私とは裏腹に
先輩は今までと変わらぬ様子だった。


そして、相変わらずの軽い口調で
サラリと私にこう告げた。


「下半身の神経が死にました」


その報告が余りにも衝撃的で……

こういう時、
何て口にすれば良いか解らなくなる。

ただ、やけに哀しくて……

ボロボロと涙を流しながら
ひたすら泣く事しか出来なかった。


私が泣く事なんて筋違いだと自覚しても
出てくる涙は止まらない。


先輩と、もう走れないんだ。


そんな事を思ったら、

中学時代に一緒に走った想い出が
走馬灯のように頭の中を駆け巡った。


先輩には、家族が居る。

ご両親も健在で、
とても仲の良いご家族だと聞いている。

先輩のご両親や奥さん、お子さん達は、
どんな想いで居るのだろうと思ったら……

どうしようもなく切なくなった。


先輩は今 必死でリハビリに励んでいるけれど、
歩けるようになる確率は低いとの事で
車椅子を使って生活しているそうだ。

だから、家も車椅子で生活しやすいように
リフォームをしていると聞いた。


私がしてあげられる事は何一つ無くて、
立場的に第三者である事は間違いなくて、

だから……  

次 先輩に会えた時には、
先輩が心から楽しいと思って貰えるように
自分には何が出来るかを考えよう。

今日 先輩と交わした食事の約束を
口約束で終わらせたくないよ。

また皆で笑いながら過ごしたいよ。


そういえば、
全くもって状況も立場も違うけれど……


『パーフェクトワールド』の登場人物の心境を
不意に思い出してしまった。

今読んだら、違う感情が湧き出そうだ。


他人事の筈なのに、
哀しくて今夜は眠れそうにないや。

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