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マンションに住みたくなくなる韓国ならではのディザスター・パニック映画『奈落のマイホーム』

【個人的な満足度】

2022年日本公開映画で面白かった順位:68/168
  ストーリー:★★★★☆
 キャラクター:★★★★☆
     映像:★★★★☆
     音楽:★★★★☆
映画館で観たい:★★★★☆

【作品情報】

   原題:Sinkhole
  製作年:2021年
  製作国:韓国
   配給:ギャガ
 上映時間:114分
 ジャンル:ディザスター、パニック、コメディ
元ネタなど:なし

【あらすじ】

平凡なサラリーマンのドンウォン(キム・ソギュン)は、11年間の節約生活を経て、ソウルにマンションを購入した。

念願のマイホームにご満悦の様子だったが、息子がビー玉を床に転がす様子を見て、ドンウォンはある疑問を抱く。

「もしかして、建物が傾いている?」

疑心暗鬼になるドンウォンだが、入居してから2週間後、マイホームに同僚を招き、引っ越しパーティーを開く。しかし、飲みすぎて翌朝も二日酔いに苛まれている中、突然巨大な地響きが起こり、地面は割れ、巨大没穴《シンクホール》が発生。マンション全体をわずか1分で地下500mへと飲み込んでしまう。

反りの合わない隣人や同僚たちと共に地下深くへと落下したドンウォンは脱出を試みるものの、追い打ちをかけるように大雨が降り始め、穴はどんどん水で満たされていく!

嗚呼、夢のマイホーム、彼らの運命はいかに…!?

【感想】

さすが韓国と言うべきか、よくこんな身近な題材でここまでのディザスター・パニック映画が作れるなと感心しました。正直、ツッコミどころはちょいちょいあるんですが、ありそうでなかった設定が秀逸でしたし、シリアスとコメディのメリハリがついているのが面白かったです。

<これまでなかったディザスター設定>

ディザスター映画、つまり自然災害系の映画って、今まではハリケーンや隕石などが定番でした。特にハリウッド映画に多いですよね。それが、今回はシンクホールとなっています。シンクホールっていうと聞きなれないかもしれませんが、表層が何らかの原因で崩壊し、地面にできた凹みや穴のことを言います。日本でも市街地ではあまりないかもしれませんが、けっこうあるみたいですよ。公式サイトによると、韓国では年間平均900件以上、1日あたり2.6件の陥没穴が発生し、その78%がソウル市内で起こっていて社会問題になっているそうです。だから、この映画はまさに韓国だからこそ作る意味のある作品ともいえそうですね。

<マンションが沈んでからが面白い>

実際に映画を観るとわかりますが、もうね、絶望しかないんですよ。いきなり大きな地響きと共にマンションが地下に沈んでいくんですから。11年かけてようやく手に入れたマイホームですよ。人生で最大の買い物。それが一瞬にして瓦礫になるだけでなく、自分もマンションといっしょに落下。その深さなんと500m。劇中に出てくるマンションはそこまで高くないですが、500mといったらどんなタワマンでも全部埋まっちゃいますね。

で、そこからのサバイバルがこの映画の見どころです。始めの方は主人公の引っ越しやら近隣住民とのやり取りやらで、ストーリー的な動きがほとんどないんですが、マンションが沈んでからが本領発揮です。スマホは繋がらず、自力で登ることも不可能。幸いマンションだから食べるものはそれなりに残ってはいるんですが、時間経過と共にどんどん沈んでいくだけでなく、上からも瓦礫が落ちてきます。不用意に建物の外に出ると当たって死んじゃいますよ。さらに雨まで降ってきて、穴の中は水で満たされていくという無理ゲー感でいっぱい。この状況をどうやって切り抜けていくかが、本作の醍醐味です。

<脱出劇はツッコミどころ満載>

肝心の脱出劇なんですが、、、これがけっこう都合よすぎるんですよね。「タイミングよくそんなこと起こらないだろ」っていうシーンが多くて。知恵と勇気を振り絞ってどうこうっていうよりも、完全に運なんですよ。ここを微妙だと感じる人はいるかもしれませんね。テンポがいいと言えばそうなんですが、命の危機を回避できても、あまりありがたみを感じませんでした(笑)

<題材の割にはポップな映画>

マンションと共に落ちてから常に絶体絶命な状況ではありますが、緊張感や緊迫感は意外と薄いんですよね。それは、この映画が全体的にコメディ調だからです。ちょいちょい笑えるシーンを入れ込んでくるのは、状況としてやや不謹慎な気もするものの、映画として面白くはあったと個人的には思います。もちろん、心が痛むシーンもあって、シリアスとコメディのバランスを考えて作られているなあとは感じました。まあ、それをどっちつかずで中途半端と言う人もいるとは思いますけどね。どうせなら、極限状態に置かれた人々が本性を表して、人間関係が変わっていく様子なんかもあったら、もっと面白くなったかも?と思ったりします。

ちなみに、ディザスター映画らしく、過去の名作を彷彿とさせるシーンがあるのは、映画好きな人にはピンとくるかもしれません。大雨で穴が水で満たされていくところは『タイタニック』(1997)っぽかったし、終盤では『アルマゲドン』(1998)を彷彿とさせるシーンもありました。

<そんなわけで>

地震の多い日本でも近しい状況は起こりそうなので、そういう意味ではなかなかにリアルな設定だと思います。内容の割には暗く重い雰囲気はあまりなく、どちらかといえばポップで明るい印象も受けるので、今までとちょっと違うディザスター映画を観たいならぜひ。

それにしても、日本でもタワマン含め、大小様々なマンションが建ちまくっているので、こういう映画あってもいいと思うんですけどね。大体がマンション内で起こる殺人事件だのなんだのでサスペンス寄りになり、こういうエンタメ感のあるディザスター・パニック映画にはなりませんよね。まあ、作ったら作ったで、「タワマンに住んでいる人を不当に不安にさせている」とかって炎上しそうですが(笑)



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