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無理に我慢せず、たくさん笑って、たくさん肉を食ってればいいことあるんじゃないかと思った『瀬戸内寂聴 99年生きて思うこと』

【個人的な満足度】

2022年日本公開映画で面白かった順位:59/100
  ストーリー:★★★☆☆
 キャラクター:★★★★☆
     映像:★★★☆☆
     音楽:★★★☆☆
映画館で観たい:★★★☆☆

【作品情報】

  製作年:2022年
  製作国:日本
 上映時間:95分
   配給:KADOKAWA
 ジャンル:ドキュメンタリー
元ネタなど:瀬戸内寂聴(1922-2021)

【あらすじ】

瀬戸内寂聴は、死の直前まで月刊誌、新聞の連載をこなす“現役“作家であり、2020年1月まで行っていた、月一の法話には全国から人が押し寄せる「最長寿の国民的アイドル」。駆け落ち、不倫、三角関係など、自らの体験を私小説の形で次々に発表し、世間のバッシングに晒されるも、女流作家として不動の地位を確立。51歳のとき出家し、以来、僧侶、作家の2つの顔を持つ。

いつまでも恋心を持って生きる。女性であるということを忘れず人生を楽しむ。彼女の“生き様”は、不寛容な空気が充満しつつある現代社会で、人間の生命力とは何かを強く感じさせてくれ、〈いかに生き、老いていけばいいのか〉というヒントともなるはずだ。

【感想】

なかなか興味深い内容でした。日本において長寿で有名な女性と言えば、きんさんぎんさんを除けばこの方ぐらいじゃないでしょうか。これまで数多くメディアで取り上げられたので、今さら目新しいことはがあるわけではなかったものの、改めて彼女の生き方に学ぶことはありました。結論、ストレスを溜めないことが大事なのかなと(笑)

<恋愛に関してはどうしようもない人(笑)>

すでにご存知の方も多いと思いますが、瀬戸内寂聴さんは道ならぬ恋を行く人でした。20歳で見合い相手と結婚するも、その人の教え子と不倫。夫と娘を捨てて駆け落ちするも、結局不倫相手から捨てられてしまうという失敗。その後、小田仁二郎という作家と付き合うも、これもまた不倫。さらに、先の駆け落ちに失敗した人とも縁が戻ったりで三角関係に。。。この両者と別れた後に付き合った人もまた妻子ある人で、、、という、故人にこんなことをいうのは失礼であることは承知ですが、けっこうどうしようもない人でした(笑)

そんな人だから、「生きるということは愛するということ」、「恋愛とは落雷のようなもの」という言葉が説得力に溢れています。「人を成長させるのは学問ではなく恋愛」と豪語するほどであり、この人本当にお坊さんなのかなと思ったほど(笑)「恋愛なんて雷といっしょだから、もう打たれるしかないですよ」というのは、本能に付き従ったがゆえの思想なんだろうなと。人の亭主と何かすることを悪いと思わなかったぐらいなので。いや本当にぶっ飛んでますよね。だからこそ物書きになれたっていうのもあると思いますが。

<我慢しない潔さ>

とはいえ、これじゃまずいってんで51歳で出家します。映像の中でも語っていましたが、これが人生で一番辛かったらしいですね。それ以降、あらゆる戒律は破っても、セックスだけはしなかったそうで。これは我慢してそうなってるんじゃなくて、仏がそうさせてくれてるんだっておっしゃってました。おそらく、自分の中で「やり切った」っていう自覚があるから、無意識のうちに「もういいや」と遠ざけてるんじゃないかって気がしますけどね(笑)人って自分の中でやり切ったっていう想いがあれば、割と離れられた李するもんなんで。逆に離れられないときっていうのは、まだやり切れていない部分があるんじゃなかと。

こうやって変に我慢しないのがこの方の魅力なんだなって感じました。それは恋愛に限ったことではないんですよ。90歳を過ぎてもとにかくメチャクチャ肉を食べるし、メチャクチャ笑います。映像に出てきた食事シーン、ほとんど肉。焼肉やらすき焼きやら揚げ物やら。肉を食べると頭がよくなるとか言って。そして、いつもニコニコ、話せばゲラゲラ。基本笑ってばっかりでした。肉と笑顔、人間にとって一番大事なことなのかもしれません。

そんな調子だからか、ずっと元気なイメージがあったけど、97歳の頃ぐらいから、いろいろしんどくなってきたみたいです。気力も精神力もあるんだけど、体力がついていかないと。横になっているのが楽だと。その感覚、まだ自分にはありませんが、あと50年もしたらわかりみが出て来るんだろうなあ。

<彼女の人生を鵜呑みにする必要はない>

人生に何を求めるかによりますけど、元気に長生きすることを考えたときに大事なことは、「我慢しない」ってことかもしれいないなと、この方を見て思いました。だって、不倫してまで自分の愛を貫いたし、90代になっても肉も酒も食らうし。変に我慢してストレスを溜めないことって、精神衛生上いいんですよね、きっと。

っていうと、じゃあ不倫しようとか肉食べようとかってなる人もいるでしょううけど、こういうのって全部結果論ですよ。たまたまこの生き方が彼女に合って、結果長生きしたっていうだけで。同じことやってもすぐ死ぬときは死ぬし、何もしなくても長く生きる人は生きる。人生そんなもんなのかなと。

僕も若い頃は先人たちを見て、ああしなきゃこうしなきゃって考えることもありましたが、それが続けられるかって言うと、自分に合わないことは続けられないんですよ。一瞬できても継続が難しい。そこは意志の強さも関係してくるとは思いますが、自然体で無理なく続けられることが、その人にとってのベストなことで、そこに貴賤も優劣もないのかなって。だから、いくら感銘を受けたからと言って、何でもかんでも瀬戸内寂聴さんの話すことに傾倒しすぎなくてもいいと思います。

<情熱は大事>

あとは、情熱が大事だともおっしゃってましたね。仕事も恋愛も情熱がないところには来ない。「生きた」って感じで死にたいならば、岐路に立ったときに険しい道を選ぶべきという言葉は身に沁みます。まあ、これもどういう人生を歩みたいかによりますからね。達成感を得たいならば、苦労する道を進んだ方がいいってことですね。

<そんなわけで>

やりたいことをやって人より長く生きた瀬戸内寂聴さんの人生の先輩としての言葉は、いろいろ響くことがあるかもしれません。特に今何かに悩んでいる人は。ただ、こういう先人たちの教えと言うか生き様というのは、話半分に聞いておいた方がいいというのが持論です。結局、人は人、自分は自分なので。でも、僕の目から見たら、総じて寂聴さんはとても自由で楽しそうな人生を歩んでおられるように見えました。


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