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クセが強すぎるけど、おとぎ話の教訓のような友情物語は感動的だった『フィッシャー・キング』

【個人的な満足度】

「午前十時の映画祭12」で面白かった順位:21/27
  ストーリー:★★★☆☆
 キャラクター:★★★★☆
     映像:★★★☆☆
     音楽:★★★☆☆
映画館で観たい:★★★☆☆

【作品情報】

   原題:The Fisher King
  製作年:1991年
  製作国:アメリカ
   配給:コロンビア、トライスター映画
 上映時間:138分
 ジャンル:コメディ、ヒューマンドラマ
元ネタなど:なし

【あらすじ】

人気DJのジャック(ジェフ・ブリッジス)は過激なトークが売り物だったが、不用意な発言がもとで銃乱射事件が起きてしまう。

それから3年、失意の日々を送っていたジャックは、ある晩、埠頭で泥酔していたところを浮浪者狩りの若者たちに襲われる。その危機を救ったのはホームレスのパリー(ロビン・ウィリアムズ)と仲間たちだった。

パリーは、自分は神から「聖杯」を探す使命を与えられていると熱く語り、ジャックに探索の手助けを求めるが、彼には知られざる過去があった―。

【感想】

「午前十時の映画祭12」にて。1991年のアメリカ映画。監督がテリー・ギリアムっていうこともあってか、クセの強い映画でした(笑)

<名優ロビン・ウィリアムズの演技に感動>

とにもかくにも、この映画で注目したいのはロビン・ウィリアムズ演じるパリーですよ。一見ただのホームレスしか見えないんですけど、実は3年前の銃乱射事件において、目の前で妻を亡くした人物なんですよね。もともとは大学教授だったんですが、その事件がきっかけで精神崩壊。今では人の言うことは聞かず、話す内容も支離滅裂という何とも絡みづらい人間になってしまったのです。かといって悪い人ってわけではありません。性格は陽気で優しいです。心に大きな悲しみを抱いているのに、今では気丈に振る舞い、新しい恋に邁進するという、すごく複雑な役どころだと思うんですが、それを見事に演じ切るロビン・ウィリアムズの演技は素晴らしかったですね。本当に「いい人」の役が多くて、彼を見ているだけで心がほっこりします。

<パリーといっしょにいることで起こるジャックの変化>

そんなパリーに救われたジャック。いくら助けてもらったとはいえ、明らかに言動がおかしいパリーを見たら、普通は関わらないようにしますよね。僕だったらお礼はするものの、その後はきれいさっぱり会わないと思います(笑)ただ、そうもいかないのがこの映画の面白いところです。パリーは銃乱射事件で奥さんを亡くしていますが、その事件の引き金を引いたのは、間接的とはいえジャックです。ラジオで彼が煽るような発言をしたことがきっかけで事件が起きましたから。だから、ジャックはパリーに対して責任を感じていましたし、何か手助けをしたいと思っているんですよ。正直、そこまで義理堅いタイプには見えなかったんですけど、そこだけ律儀でしたね。そこで、パリーが密かに想いを寄せるリディア(アマンダ・プラマー)との関係を陰ながらサポートします。相手の女性もなかなかクセが強くて友達がいないタイプだったんですが、それがまたパリーと相性バッチリだってんだから微笑ましいことこの上ないですよ。

そんな経緯もあって、物語も終盤になる頃には、パリーとジャックはすっかりいい友人同士になっています。絶対に相性が合わなそうな2人なのに、いやそんな2人だからこそ、ジャックに変化が訪れるんですよね。パリーが暴漢に襲われたとき、ジャックはとんでもない行動で入院中の彼を励ますんですが、ちょっと前の彼だったらそこまでしなかったと思います。そして、ジャックは身近にある愛に気づくんですよ。長年連れ添った女性にひどいことを言ってしまいますが、その彼女といることこそが幸せだということが後からわかりますから。パリーとの付き合いがあったからこその心境の変化ですよ。

<気になる点>

こうして最後まで観ると、総じていい話だなとは思うんですが、気になる点はけっこうありました。

まず、パリーのキャラクターはかなりクセがあるので、これは好き嫌い出るだろうなということ。あまりにも意味不明すぎて、序盤は彼のキャラクターについていくのにけっこう体力がいりました。

次に、彼は亡くなった奥さんのことをどう思っているのかということです。記憶喪失ではないのでもちろん覚えてはいるんですけど、どうやら心の奥底に事件の日のことを閉まっている様子なんですよね。だからそのことについて問われるとちょっとパニックを起こすっていう。なので、リディアに恋するのはいいんですが、その奥さんのことを乗り越えてのことなのか、過去の事件の悲しみは見て見ぬフリをしているのかは、ちょっとわからなかったですね。

また、ジャックはパリーとの付き合いを通じて身近にある愛に気づいたという流れなんですが、具体的にパリーのどういう点が影響を与えたのかがよくわかりませんでした。「行間を読め」ということなのかもしれませんが、もう少しわかりやすい描写があってもよかったのかなあと。あと、そもそもですけど、ジャックはいくらパリーに責任を感じているとはいえ、彼の恋路を手助けする義理があるのかなとは思うんですよね。いい大人なんだから、そこはもう自分で何とかしてくれってならないのかなと(笑)

<そんなわけで>

だいぶ個性的な雰囲気の映画なので、正直好みは分かれるかなと思いますね。個人的には、陽気と見せかけて、実はとても悲しい過去を持つロビン・ウィリアムズの役どころがとても刺さりました。彼は2014年に63歳の若さで亡くなってしまったので、その寂しさを改めて痛感します。。。


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